2004年12月11日土曜日

化学物質過敏症

 数年前から話題になっているので、今では随分認知されているんではないかと思います。化学物質過敏症という名前には覚えがなくとも、シックハウスとかシックスクールいう言葉は聞いたことがあるという方もいらっしゃることでしょう。新建材に含まれる化学物質や、あるいは防腐剤、防虫剤の類いに長時間さらされることで、強烈なアレルギーを発症してしまうというやつです。

こうした化学物質に発する過敏症の事例を多数紹介し、その要因や回避に向けてのいろいろを分かりやすく解説してくれるのが本書『化学物質過敏症』です。

暮らしの中で様々な化学物質に囲まれている私たちにとっては、まず知ることで防衛することが必要です。いったいどういうきっかけで化学物質過敏症と向き合う羽目になるのかわかりませんし、なにしろ一旦発症してしまえばもう後戻りはできない。過敏症(アレルギー)というのは、一旦発症すると治癒するという性質のものではありません。アレルゲン(アレルギーの原因物質)を気にし、アレルギーとの長いつきあいが始まります。ほぼそれは、一生つきまとうものだと考えて間違いないかと思います。

実は、私も現代人の例に漏れずアレルギー持ちでして、幸い化学物質のそれではないのですが、まあなんといいますか厄介なものです。子供の時分から自然食で育った背景は、実に私のアレルギーをなんとか押さえるためでありまして、そうした長年の労が実ってか、表向きにはアレルギーが見えるようなことはありません。けど、やっぱり難儀なもんなんですよ。医者に通ってアレルゲンを検査して、後は生活からアレルゲンを追放する戦いです。知り合いには、それを実践しているのが何人もいます。私なんかは無頓着なものですが、本当はちゃんとしたほうがいいんですけどね。

数年前働いていた場所がまさに新築のビルでして、そこで働くみんながみんな、なんかおかしいといっていたのを思い出します。なんというか、室内にいるとなんだか気力が萎えて、だるい感じが続くんです。明確に頭が痛くなるといった症状を訴えるのもいました。最初は仕事へのモチベーションの低さによるものかと思っていたのですが、別室で働く人も似たようなことをいっているんですね。で、みんながみんな、こっそりシックオフィスを疑っていた、ということがありました。

多分、これ、ある程度あたってると思います。壁紙を貼る接着剤からホルムアルデヒドとかが出てたんでしょうか。知らずに触れ、呼吸することで、体調に異変を呈するようになったのでしょうか。詳細まではわかりませんが、こういう風に、知らない間に化学物質被曝をするということがあるのです。

今は私は違う職場に移って、まあそこも褒められた環境とは思えないのですが、空気中の化学物質の量から見れば、前よりずっとましなんじゃないかと思います。けれど油断はできないんですね。なにしろ、本来ならきっちりと調査され、問題物質の使用に関する制限がなされてしかるはずなのに、そういうことをなおざりにしてきた国に私たちは住んでるんですから。

そんなわけで人任せになんてできないから、自分でいろいろ調べて、知っておく必要があるんですね。はあ、面倒な時代ですね。

  • 柳沢幸雄,石川哲,宮田幹夫『化学物質過敏症』(文春新書) 東京:文芸春秋,2002年。

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