2004年12月15日水曜日

ダンサー・イン・ザ・ダーク

 ストーリーはわかりやすぎるくらいわかりやすいんですが、ちょっと構造は掴みにくいかも知れません。親子の愛情や、友情を軸にしながら、苦境の現実に翻弄される女を描いている映画で、つらい話が苦手とか悲しいのを見ると後を引いて仕方がないタイプの人は、見る時期を選ぶべき映画です。

私はこの映画は劇場で見て、あまりに衝撃的だったからまた見に行って、加えてサントラとDVDを買ってしまったという、すっかりはまってしまってますね。実際私の友人知人間でも評価が高くて、映画における2000年のマイ・ベストは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』でした。胸を張っていえます、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』でした。

この映画はミュージカルを、ちょっと普通のミュージカルとは違う手法で扱っていて、その見せ方がまず面白いと思ったのですね。私の父なんかがいうにはミュージカルにはどうも馴染めないのだそうでして、なにが馴染めないといっても、突然街中で歌い出したりするそれが駄目だというのです。ですが、この映画のミュージカルシーンはそうしたものではないのです。ミュージカルシーンのすべてはヒロインであるセルマの胸中での出来事であり、ある意味つらい現実に目を背けた、理想的な夢の世界であるともいえるんですね。

皆さんもありませんか。自分に都合のいい空想(妄想といいかえてもいいかも)にふける瞬間というものが。私にはあります。あるから、セルマのミュージカルに逃げる気持ちがよくわかります。

私が、この映画を大変素晴らしいというのは、最後のミュージカルシーンです。これまではある意味自分のうちにこもるようにして展開されていたのが、ラストではセルマの胸中から現実にあふれ出てきて場を支配する。その力強さそして豊かさに私は胸を打たれたのです。

音楽や芸術はつらい現実を忘れさせる一時の娯楽でありますが、しかし音楽や芸術がつらい現実を受け止め乗り越えようとする力になることもあるのだと、その芸術が現実を超えて昇華する有り様を見たように思ったのです。

以上、構造についてお話しました。さて、じゃあ筋についてはどう思ったのかといいますと、神も仏も居らんのかと暗鬱な気分になった。おいおい、司法はなにをしている、正義はどこにいった、警察もちゃんと調べろよ、とむきになった。

そんなこんなで、はじめて見たときは結構後を引きましたね。帰りの電車の中でさえ泣きそうになりましたからね。

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