2004年12月10日金曜日

Thinkin'Of You

 私はこの人のことを知らなかったんですが、いや、すごいですね。ものすごく素朴で、ものすごく純な感じに歌うその歌声が、しんみり心に透っていく。こんな感じはめったにあるもんじゃなくって、技巧もすごいんだけどそんな下位レベルのあれこれはまったく感じさせずに、音楽のどうこうというのもなんにも意識させることなく、気付いたら自分は有山じゅんじの世界にすっぽり包まれていて、言葉は胸の奥に静かに着地しているという、そんな感じ。ああ、わからんね。聴いたことのない人にはどうしても伝わらないものと思います。

実は、このアルバムも衝動買いだったんですよ。ある日本屋に行ったついでに楽器屋によったら、このアルバムを流していたんですね。あまりに印象的で、あまりにも離れがたかったもんだから、店員にこれは誰のアルバムですかって聞いたら、有山じゅんじの『Thinkin’Of You』。有名な人なんですかって聞いたら、実際有名なのは確かなようで、私は知りませんでした。知らなかったのがもったいないと思いました。けど、あの日ひょんなきっかけで出会って、本当によかった。知らないままだったら、私は人生を損していた。そんなアルバムです。

なにがいいかといえば、ギターで声で歌詞で歌で、その感じでしょう。基本的にはブルースだとかラグタイムだとか、そういう傾向の強い、だからちょっと懐かしいような響きであろうかと思います。ときにはやんちゃで、ときにはしんみりとさせる雰囲気の移り変わりが楽しくて、なにしろすごく暖かい感じがする。希有です、本当にめったにあるようなものではありません。

ちょっと私事ですが、私は日本語の言葉は音楽には、とりわけ西洋の流れを汲むメロディにはあわないと思っていたんです。ところがだ、この人の歌を聴いたら、そんな下らん考えは単なる言い訳じゃったと気付きました。そうなんですね。この人の歌は、歌が言葉そのもので、言葉もうちに歌を抱えているんです。だから強い。すごくマッチして、すごく自然で、だから心に透るんです。

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