『まんがタイムきららフォワード』2025年4月号、発売されました。表紙は『純情エッチング』。スタイラスを手にしたまま、あおむきに寝転がる卯月ノノ。青みがかった光に照らされる彼女の姿は、窓から差し込む月明かりを受けてのものか。描いても描いてもモノにならない、もどかしい思いを抱えたまま、ごろりと背中向けに倒れ込んだのでしょう。髪がばさりと後ろに流れて、いつにない表情がよく見える印象的なワンシーンとなっているのです。
今月は新規ゲストが3本です。
『アイランド・アンドロイド』
人を助ける存在となることを願い作り上げられたアンドロイド、もこは実に自堕落で、その能力を持ち腐れさせている。自身もそう言及する超性能は、フィジカルの強さだけでなく、超能力や動物とのコミュニケーションといった超常の域にまで及ぶもの。しかしやる気がないのではしようがない。
ということで、更生のため宮古島に送られてしまったもこです。帰るためには日々課される各種ミッションをクリアしなければならない。最初のミッションは人から「ありがとう」といわれること。簡単だけど、なにもやる気のない、それどころか人を自分より劣るものと見下しているもこには難しい。はたして、もこは最初のミッションを達成することができるのか? というのがこのお話の肝でありました。
もこが住むことになったのは、3人の女性が暮らす家。しかし折悪いことに台風被害を受けてぼろっぼろ。予定していたもこの歓迎もままならない様子。けれど、できるかぎりのもてなしを受けて、さらには倒木から身をていして守ってくれる人までいて、人間への認識を改めていくもこ。
人からの施しに甘えてばかりじゃいられないと、超性能の片鱗を見せたもこと、そんなもこを受け入れ、ともに暮らすことに喜びをみせる皆との交流。それがもこに人間というものを知る機会を与え、その気持ちを変えていくことになるのだろうなと思わせる一編でした。
『真琴ちゃんが一番!』
なんでも一番でないと気がすまない真琴。クラス対抗の大縄跳びでももちろん勝ちにいくというのですが、双子の姉、美琴から不安だといわれてしまう。というのも、運動得意なはずの真琴なのに、縄跳びだけは大の苦手。そんな真琴のために、マッドサイエンティスト気質の姉がウサギになれるジュースとやらを作ってくれたのですね。
というか、騙し討ちで飲まされた。とんでもない跳躍力を身につけて、縄跳びだって楽々だ。といえど、家をも軽く飛び越える跳躍力はさすがに困る。元に戻すには24時間たつのを待つか一万回ジャンプするしかない! といわれ、一万回跳ぶことを選ぶのが真琴という子なのですね。
かくして一万回ジャンプした真琴。朝には戻れたってことは、24時間かけずにやりとげたってことか! そしてこの一万回のジャンプでコツを掴めたか、縄跳びを克服した真琴。見事に大縄跳びもやりとげて、有言実行! 優勝を勝ち取るのでありました。
さて、ラストの美琴にしかえしする真琴の図。こうしたじゃれあうようなやりとりに見えるふたりの関係性。こうしたところ、おもしろみあってよかったと思います。なんだかんだ一枚上手な美琴。真琴のこと、うまく手玉にとっているんですね。
『天球の影で月は舞う』
ターゲットを自分にのめりこませた果てに殺すことを無常の楽しみとしている殺し屋。彼女の次の仕事は、九条建設の令嬢。護衛として潜り込み、娘を殺せとのことだけど、この殺し屋のことだから、一年という期限いっぱい引っぱって、令嬢の信頼を勝ち取った上で殺そうというのでしょう。彼女の目論見は成功するのか否か。その成否につながる第一歩が描かれた短編でした。
何度も命を狙われている令嬢。つい先日も襲撃を受け、護衛を失ったばかり。そんな彼女の夕食時、ともに夕食をとる父が倒れた! 毒殺か!? 狼狽する令嬢に迫る刺客の刃。あわやというその時、身をていしその刃をとめたのが、件の殺し屋。迫りくる刺客を前に一歩も退くことなく撃退し、見事令嬢の信頼を勝ち取ることに成功したのでした。
まずは第一歩。そしてこれからの一年間。依存させるといっていいほどに深い信頼を得てから……、というのでしょう。その仕事の是非は、どうなるのでしょうね。
- 『まんがタイムきららフォワード』第19巻第4号(2025年4月号)
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