2023年10月7日土曜日

『まんがタイムきらら』2023年11月号

 『まんがタイムきらら』2023年11月号、発売されました。表紙は『星屑テレパス』。宇宙人と邂逅する夢を描いたノートを手にした海果です。背にはまばゆい星空。海果もまた輝くような笑顔を見せて、ええ、素敵な表紙。引っ込み思案だった海果がここまでの表情を見せられるようになった。その笑顔を向けているのはいったい誰なのか。画面のこちらがわにユウがいるだろうと思わせる、そんな海果が本当に魅力的なのであります。

今月は新規ゲストが6本です。

『古書ヨルトコロ』

おお、ちょっと不思議なおはなし! 人に忘れられた本が集まってくる古書店、ヨルトコロ。時には人も迷い込んでくるのか、記憶をなくした少女がこの店で働いている。名前もわからない、というのでさくらなと名づけられた。そう思っていたのですが、実はそうではなかった。

さくらなと出会った店主が驚いて、ごめんなさいといったその理由とか、さくらなという名で呼ばれることとなった理由とか、それがだんだんに明かされていく。そもそもこの不思議な世界はなんなのか。古書店の体裁をとってはいるけれど、本はくれどもお客はこない。そんな場所で店番をする店主夜見と、夜見のもとで働くさくらな、その存在の理由。それが明かされたその時に、なるほどここはそういう場所だったのか。彼女らはそうした役割を担っているのか。なんだか得心がいったのでした。

短いはなし。コンパクトにまとめながらも、情報開示のタイミングをうまくコントロールして、それゆえにでしょう、なるほどと納得し、なんかちょっと切なくてそして面白かったな、そう感じさせられる掌編となっていました。

『ショコラ・スウィート』

パティシエを夢見て洋菓子店への就職を果たした主人公。しかし店は経営のピンチ!? 店を切り盛りするのは、祖父から店を任されて2年の若い女性ふたり。店長の菓子づくりの腕はどうもアレっぽいんですが、ともに働く菓子職人は確かな腕を持っている模様。

そんなふたりと新人が、3人でああでもないこうでもない、店を守り立てるためのアイデア出しあって、新たなケーキを開発していこうというお話なのですね。いや、店長は極力戦力外にされてましたけれども。

今回は、小さなカップに入るプチケーキを作ります。その過程で工房とともにケーキの材料の説明がなされて、ケーキについてはまったくといっていいほど知らない主人公に、それぞれの材料の特性もろもろ説明していくのは、読者にとっても多くを学べてよい感じ。これからもこうしてケーキづくりについて、いろいろと知ることができるようになる、そんな漫画なのかも知れませんね。

漫画で学んで知っていく、そうした学習まんが好きだった自分には、こうした構成、なかなかに訴えるものありますよ。

『キミにしてあげたいコト』

夜の学校に現れる幽霊。けれど主人公は幽霊に出会ってもまるで驚くところがなく、無表情、むしろ無感情だというのですね。その理由はペットロス。ずっと一緒に暮らしてきた愛犬を亡くしてしまった。それがために、楽しいとか嬉しいとか、怒りも悲しみも、感情というものが失われてしまって……、と、こうした話を聞かされた幽霊が同情して、その子のためになろうとするんですね。

私が生前にしたかったことを叶えてくれたら、過去に置いてきた感情を思い出させてあげる。

幽霊の望むこと、それは本当にささやかなことばかりで、もしかしたらこのふたりのやりとりに、幽霊の来し方、その秘密があるのではないかと思ったり、そしてこれからはじまる主人公と幽霊の関係。どのように深まるか、そして取り戻される感情、それがどうふたりに働きかけるか。まだ見えぬ謎やこれからのこと、そこに魅力がある、そう思わされるタイトルでした。

『ひよわなとら』

タイトルのとおり弱い虎の子が主人公。母に先立たれて天涯孤独。獲物も獲れず、タンポポばかり食べている、そんな虎の子が神様の気まぐれで、新たな境地に辿り着こうとしているのです。

十二支を決める。翌年元旦の朝、新年の挨拶に訪れた順に12人、干支として仕事と衣食住を与えるときた。

それを見て、俄然やる気を出した虎の子。けれどどうすればお天道様までいけるかわからない。と、そこでつい先達て手に入れた小さな小袋の力で、天界ならぬ上界、月の世界へとやってきた。気を失っていたところを、兎人、うさぎに助けられた虎。ここでも弱い虎は、うさぎをとって食うなんて芸当ができるはずもなく、宿ばかりか食事までお世話になってしまった。

この、気弱な虎と勝気なうさぎ、ふたりのコンビネーション。気弱な男の子と勝気な少女といってもいいかも知れない、そんなふたりの関係が刺さる! という人にはうってつけの漫画となるな、これ! そんな感触。ということで、うさぎと虎、ふたりの十二支決定までの暮らしがはじまります。

『ハルノバーチャル』

VR世界に設立された学校に通う子たち。これいいなあ。実際、オンラインで通える学校もあったりする時代。VRならまた対面ともリモートとも違う新しい体験ができそう。

なにかしら理由があって、オフラインではなくVRの学校を選んだ子たち。主人公も普通の高校に進んだものの馴染めなくて、それは主に人づきあいの問題。その問題を、VRで知りあった子たちとの関係を通じて克服していくのですね。

いつもVRでばかり会っているのもつまらない。だったらオフラインで、リアルで会ってみない!? その一言からはじまった週末のひととき。出会った子たちはVRでの姿とまったく同じ。変わらず一緒に過ごして、楽しんで、より関係を深めて、そのもっと知っていく、ささやかなことでも楽しい、そんな描写がよいなと思えた漫画でした。

『クロミちゃんがやってきた!』

まともな友達が欲しい、その一心で人間界にいくことを決めた魔王の娘、クロミ。降り立った東京にて出会ったのは、ツノのある女の子!? 人間界に住む魔族なのか? そう思って声をかけたら、コンセプトカフェの店員。店の名は異次元空間。母ひとり娘ひとりで営業しとるの? 娘は中二病的装いだけど、お母さんは普通の格好、普通の接客だな。

コンカフェ店員、カナデを魔族と思い込んでるクロミ。自分は魔王と人間の混血で云々、なにひとつ嘘はついていないのですが、お母さん、娘と話のあってる友達が! って喜んでる! 友達ができてよかったね、そういったら、そうか、カナデにも友達がいなかったのか! あまりのことにキャパオーバーしてしまって、それで一次退場するんですね。

この店、異次元空間の店主は、クロミの母と知りあいだったのですね。というか、元カノ!? かくしてクロミはこの家にお世話になることとなり、コスプレを解くと気弱な人見知りに戻ってしまうカナデとの仲を深めながら人間界を知っていくことになりそう。

これ、人間の社会を知らないクロミ視点からは異世界探訪的な面白さが期待でき、人づきあいの苦手なカナデからは突然さずかった魔法の力での自己変革の面白さが期待できる。キャラクターのまるで違うふたりの出会ったことで生じる可能性、それが持ち味になりそうと感じました。

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