『まんがタイムオリジナル』2019年3月号、発売されました。表紙は『ラディカル・ホスピタル』山下さんが、冬の装い、やけに元気で、いい笑顔、手には雪うさぎですよ。ええ、冬の遊び? 『小森さんは断れない!』は雪だるま作って、雪玉なんかも投げたいしてますね。『らいか・デイズ』らいかは、火鉢で餅焼いていますよ。そのかたわらには、お盆の上の雪うさぎ。そうだ、そうだよ、雪うさぎってお盆の上に作るよね。古式ゆかしいらいかです。
今回は新規ゲストが2本。1本はワイド4コマ、もう1本は従来のスタイル。このところ、ワイド4コマを増やしていく傾向にありますね。大きなコマでビジュアル重視、密度高めの内容で見せていく。こうした嗜好のトレンドに対応するという他に、従来スタイルよりはやく単行本化できるというメリットもあるのかな。より単行本を重視する、そんな試みのひとつなのかもなんて思っています。
『となりのフィギュア原型師』、ゲスト、ワイド4コマの方です。フィギュア原型師をやっている半藤隆太郎。頑張ってひとつ仕上げてそれをメーカーに納入したところ、おつかいを頼まれた。フィギュアの原型を原型師に届けてほしい。それを渋るところ、責任問題とかありますもんね、これ、大切な原型をおざなりにはしていませんよ、そういうメッセージを感じます。さて、この半藤という男、やけにクールというか、感情がおもてに出ないタイプ? 内面の饒舌さとの対比、それが彼の個性かなと思ったら、その原型を届けた先で出会った原型。なるほど凄腕、見事な出来栄えを目の当たりにした時のあの表出。コマに収まらない言葉の嵐。ああ、そうか、その原型の作者、見た目ちんまりの本名桐山、作家名滝館おこめの技能の高さ、それも同時に伝えようとするこの展開。いいじゃないですか。余裕ある横幅サイズをしっかり使って、密度高めの作画。基本静的な描写が、時に差し挟まれるキャラの動きの大きさでもって、ぐっと見映えする。テーマ、題材も面白かった。続きが楽しみです。
『とびだせT.O.Z』、ゲストです、従来スタイルの方。作者はさくまりょう、『ウチが古武道宗家』の人ですね。今回は兄妹もの。高校に入学した妹が、寮に入って以来音信不通となった兄を訪ねて陸上部を訪れる。そうしたら兄が怪しいガスマスクっぽいのつけていて、へー、こういうので高地トレーニングみたいな効果得るんだ。と思ったのはいいけれど、この兄が変。顧問の教師に徹底的にしごいてくれと依頼して、それからは縛られ罵られという、いや、それ、兄の趣味なのか? 被虐趣味を満足させつつトレーニングの効果も得る? 兄の活動に妹のツッコミとどまらずといった展開。ああ、この作者の持ち味だと思う。今回は兄の変態性、いやさストイックな性格にスポットがあたりましたが、妹も猪突猛進? この子にもなにか一癖あったりしそうですね。
『おしかけツインテール』。今回も面白かった。俊郎がカタログから選んだギフト、高性能体重計が引き起こす悲喜交々。いや、主に悲。というか、朝比奈母ひとりにゴリゴリ着弾する。以前の体重計は壊れて50kgまでしか量れなかった。それ聞いて冷汗ダラダラの母。もう、ここからが面白い。そうか、花梨にはやせちゃってっていっちゃってたんだ。それを受けて、カロリー高めのおやつを作ってくる花梨。ベイクドバターモチ! ナイスレシピ! 面白くてためになる! というけど、うち、餅があまらんのよ……。残念、試せないわあ……。娘にやせたといった手前、今さら違いましたといえない母のプライド? 泣くほどか! でもってアプリとの連携が引き起こした悲劇。ほんと、あの母の一喜一憂。すぐさま憂に落ちるんですけどね、それがわかってなお面白い。いやあ、ほんと、お母さん、MVPですわ。
『スズちゃんでしょ!』。婚活の話なの? のっけからテンション低い祭、いいですね。料理に不満あり。作るのにあんなに時間も手間もかかるのに、あっという間になくなっちゃう。うん、これ料理もそうだけど、パイとか生地から作ってみ? がっかりするよ? 今回、祭がメインなんだけど、この人のドライさ? 合理性? そういうのが見えて面白い。なんだけど、同じメニューが続くのは嫌なんだ。そこも合理性というか、ドライにいきましょうや。栄養とれたらなんでも一緒じゃないですか。違う? うーん、難しいもんやな。今回の祭の話、これは多くの人に共感される内容なんじゃないかなあ。祭にスズは「結婚した方がいいのに見通しつかず日々のルーティンに流されてる人たち」なのかも知れないけれど、多かれ少なかれ誰もが、もっと違った状況、今とは違う自分を夢見ながらも、日々のルーティンに流されてしまってる。私もそうです。おそらくは、結婚して、子育てしてと、一見ひとつのゴールにたどりついている人たちも、あくせくと日々を過去へと流していく、その毎日に疲弊している。なんなんだろうな、生きるっていうことは。時に虚しさ感じないかね。と、そんな具合に胸にポカリとあいている、そうした隙間にぴゅうと吹き込んで、しっくりとしみるのが、スズたちの煩悶なのかも。笑いながらも、きっと人ごとじゃないって、内心シリアスな顔を抱く人、多いんじゃないかって思うんですね。
- 『まんがタイムオリジナル』第38巻第3号(2019年3月号)
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