『まんがタイムきららMAX』2022年1月号、一昨日の続きです。
『妖こそ怪異戸籍課へ』
帝華、バイトデビューですよ。ハンバーガーショップ、制服を着てちょっとかしこまって、普段の自分とはまるで違う。知りあいには知られたくないな、と思ったら速攻で睦子にバレてるのな! 見にくるのはいい。お客として利用するのもいい。でも保護者めいた行動はご勘弁! 菓子折り持ってあいさつ、さらには帝華の成長を実感して涙。いやいや、店頭ではやめよう? 親切心、世話焼き、それはわかるけど、あまりにぐいぐいいきすぎてて、ほんとまずは睦子が落ち着こう。
バイトをはじめたら友達がやってくる。これもあるあるですよね。自分のバイト先に知りあいが押し掛けてきたことはなかったけど、部活の先輩のバイト先に押し掛けたことはあった! いやもう、迷惑なんだけどさ、なんか面白いんだよね。今回の帝華の友人たちもね、ちょっと悪ノリ悪ふざけまじりではあるんだけど、それでも帝華のこと好きで、かまいたくて、みたいな気持ちがほんとよく出てる。こういう悪ふざけもきっと許容してくれるだろう、そういう思いがあるんでしょうね。ええ、きっと許容してくれるのだと思います。
そして我らが饗子ですよ! 飲食のお店となれば彼女がこないわけがない! というか、女帝って呼ばれてるの!? でもってあいかわらずの無銭で飲食。おお、まさしく女帝、特別扱い。思いもしない存在感に帝華もびっくり? と思ったら、むしろ逆か! 饗子の振りを見て自身を振り返っていたんですね!
『こみっくがーるず』
泣けるお話。かつて高校生の頃、漫画を持ち込みして掲載を勝ち取って、それからしばらく活躍していた寮母のりりか。だけど、なにか気持ちが状況と掛け違ってしまったみたい。環境に気持ちが追いつかない。その思いから、漫画家を廃業してしまうというのだけど、そこから今にいたるまでの歩み、かおすたち寮生たちの頑張りや苦悶を見守るうちに湧き上がってきた気持ち。その移りゆく流れの描き出される様、細やかで胸に迫る心情の物語りに、読み進めるこちらの胸もうずくように感じられて、ああ、本当に素晴しかったと思います。
今しかない、その思いに突き動かされる若い子たちを見ているうちに、自身を省みるようになった。若い日の、その時しかないのではない。人生のどんなポイントであっても、その自分の生きている今、この今こそがその時なんだという思いに目が開かれた。これは寮母さんにしてもそう、そしてその思いは私にも伝播して、ああ、なりゆきで生きてきた、そう人生を振り返る自分にしてもこの今をこそ生きねばならないのではないだろうか。そう思わせるような揺り動かす力のあるエピソードだったと思います。
こんなに静かで穏やかなのにね。でも、訴えてくる。その筆致、たまりませんでした。
そして、寮母さんの漫画家復帰に気がついたかおすちゃん。おお、これ、次回、それでなにかしら動きがありそう! かおすちゃんの反応もろもろ、これは面白そう。ええ、見せます、引っ張ります、わくわくさせられます。
『お嬢様のVな事情』
動画配信者は儲かる。そう耳にしたマリナ。大量の視聴者を抱えるミユキ、さぞや稼いでいるのだろう! そう思って期待にテンションおかしくなりながらミユキのもとを訪れてみれば、あれー、全部スッてるんだ! FXで全額溶かした。って、そんな笑顔でいう話なのですか? でもって残ったお金も躊躇なく競馬につぎ込む。
そういやいってましたよね、なんでもたいていできちゃうミユキさん。その人生の物足りなさゆえに手を出したのがギャンブル。思い通りにいかないからこそ得られる生の実感! その境地! というか、極北だよ! ヤバい。しかもあえてアブない橋、不確実性高めの鉄火場にあえて飛び込んでいくことを例えて、紐のついたバンジーに何の意味があるのかな? って、それあかん、ただの投身や。あまりのことにマリナがついていけてませんが、うん、自分もついていけん。ここまで思い切れれば人生は違うのかなあ? いや、普通に考えて破滅の道。続く競馬も、それから競艇も、マネしてはいけない、そんな世界が思いっきり広がってて、いやはやヤバいヤバい。ところどころに差し挟まれる名言っぽい言葉も、いやいや、それ名言やない、むしろ開き直りに近いよ!
あまりのヤバさにどういう感想抱いたらいいのか混乱しましたよ。
でもガチで当たらないという競艇にて、レースを見守るミユキの横顔。その切実な表情にマリアなにか思うところあったよう? さいわい勝てたからよかったけど、いやもう、一か八か伸るか反るかが過ぎるよね! いくら思いの滲むいい表情だからといっても、これ、いい話でしたとはまとめられないよ! いや、でも、それでもこうして生の実感を得ようとしているミユキ。これはこれで生き方なのかも知れませんね。マネしたらあかんけど、マネしたら大火傷ではすまない系だけど、でもこうして生きていることを確かめようとする気持ち、人には多かれ少なかれあるのかも知れませんね。
『瑠東さんには敵いません!』
おお、海デートだ。まだ海に繰り出すにははやい時期。教室にて男子連中が、梅雨明けたら海にいこうなんていってるもんだから、瑠東さん、海にいきたくなっちゃった。って、まだまだ梅雨時、水は冷たいよ! っていうんだけど、いいだしたらとまらないのが瑠東さん。巻き込まれる千紘。いやもう、寒いと震えながらも一緒に楽しみたい、そういう瑠東にほだされて、海に入ったらコケそうになる瑠東の身代わりになって水浸しになっちゃった!
いやもう和村ちゃん、災難だな。そう思ったら、まさか瑠東がお金を出すから服を買いにいこうって! もう、ここからの展開、最高だったな。着せ替え和村ちゃんのファッションショーじゃん! オーバーオール可愛い! タイトめのスカートも可愛い! くるりとまわるとふわりと広がるロングスカートも可愛い! いやもう最高だったのでは?
この展開、和村は楽しくなかった? 瑠東さんと読者だけが楽しかったのかな? と思ったら、言葉とは裏腹に実は楽しかったという和村が可愛いですよね。でももっと素直に思ったこと話せるようにならないといけないよ。仮に瑠東が漫画でツンデレとか学んだとしても、人になにかを伝えたい、わかってほしいという時に察してもらおうというのはやっぱり迂遠で難しい。
だから最後にね、こう、がっと涙目の瑠東の顔を両手でつかんで、楽しかったって明言するところね、おおおお、よかった、本当によかった。瑠東さんもよかったなあ! いやもう、最後の最後にばっちり気持ちの通じて、やっぱりこうであってくれないと困ります。ふたりともに楽しい、その気持ちが円かに調和する。これ美しいことだと思います。
そして夏休みを心待ちにする瑠東に注がれる和村の視線、その表情の凛々しいこと! ああ、あなた、素敵よ、とっても素敵! かくも魅力的なものがあろうか、そう思わずにはおられないふたりの姿でした。
- 『まんがタイムきららMAX』第19巻第1号(2022年1月号)
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