『まんがタイム』2021年12月号、発売されました。表紙は『おとぼけ部長代理』をメインに、お茶席の様子でありますね。着物姿で正座、茶碗を手にしてかしこまっているんですが、よく見ると足指がもぞもぞしてるの。しびれているんですね。『茨城ってどこにあるんですか?』多恵も盛大に足しびれさせています。いい着物着てかわいくしてるのに、足伸ばしてしびびびってなってるの、この子のらしさが出ててチャーミングです。『花丸町の花むすび』花子はお茶を点てていて、すっかり見違えちゃいましたね。いいお姉さんじゃん。『軍神ちゃんとよばないで』虎千代は笹団子食べてるんですが、この子の暮らした時代ではお茶は最先端の流行ですよね。時を飛び越えてこうして一堂に会している、その様子もまたおもしろしです。
『ローカル女子の遠吠え』
車社会静岡のお話。うっかり免許失効なんてしちゃうと大変なことになる。それだけ車が生活に根差しているんですね。
さて、静岡が交通事故発生率ワーストという話題も。まさかこの話題に続いて、りん子が事故に巻き込まれることになるだなんて驚かされました。信号待ちしていたら追突されたんですが、教習のとおりにテキパキ手順を進めていくところ、さすがのりん子だな。そう思っていたら、内心ドキドキバクバクしていたというの。ああ、だよなあ。で、そこに雲春がやってきて、おお、頼りになる! いつもはどこか抜けているけど、いざという時には的確に行動できる、これはポイント高いわ雲春さん。
とか思ってたら、なんとまあ、事故経験者だったんかい! いや、それでも今回の雲春はどうかしてる。あのりん子がトキメキ覚えちゃってるのかい!? すぐに通常運転に戻りますけど、いやもう驚きの展開見せるのかと身構えてしまいましたよ。
『この契約は恋まで届きますか?』
八千代さんに手芸を教えることになった野田。フェルトを刺してるんですね。その手元を見ようとぐっと近づいてくる八千代に緊張する野田。ドキドキしながら近いといえば、はっと気がつきめちゃくちゃ距離をとる八千代が面白い。しかもこれ、うまくできなかったフェルト人形、それを可愛いといわれて、やっぱり距離を置く。自分のことだと思っちゃったんですね。自分に興味を持たれると、可愛いといわれると引くタイプなんですね。
八千代、なんかいい感じです。見た目が可愛いとかじゃなく、ちょっと微妙で可愛い自作のフェルト猫、名づけて寝不足太郎というそのセンス、いいじゃないですか。なんかうまくできない、そう思っていた人形にも愛着が出たりするところ、それがよかったなあって。
いろいろ謎もある八千代。基本クールで感情を露にすることのないこの人の、けれど可愛い手芸品を前にした時にふいに見せる表情のギャップ! いやもう魅力のある人ですよ。
『軍神ちゃんとよばないで』
おお、タイトルを見事に回収してきた今回。それはまさに第4次川中島の戦いのハイライト、単騎大将信玄へと挑みかかる謙信を軍配にて退ける、その一連の戦いの中に交わされた言葉の中に現れてくるのですね。
互いに相手を武田の、上杉の頭領と知らず仲を深めていたふたりの、しかしここにきて明かされるそれぞれの立場。軍を率い、国の存亡をかけて命のやりとりをする、そうした立場にあることがこうして判明した今、かつての約束などははるか後方に追いやられることになってしまうのか。
あくまでも自分の本当を話してきた、今もなおわかりあえるはず、そういう虎千代と、戦いを避けることなどかなわない、決して同じ方向を向くことのない晴信の激突は、命のやりとりというよりもむしろ激論というべきもので、そしてその話しあいは決着を見ないままふたたび別れ別れとなるんですね。
晴信と虎千代の譲ることのできない思いの行く先、どうなるのでしょうね。このまま史実どおりに運ぶのか、あるいは史実とは異なる行く末があるのか。これ以降は目の離せない展開の連続になるのかも、ですね。
『テレパス皆葉と読めない彼女』
皆葉が病欠と知って心配した澄花が連絡をいれます。そしたら妹ちゃんたちがえらいことしようとしてるのな。氷水を作るまではいいけど、それでひたいを冷やすならまだしも、氷風呂にしちゃあいけないよ! 兄貴はこれまでほとんど病気とかなかったそうだけど、それだけに看病のしかたとか知らないのかもなあ。にしてもワイルドな妹たちです。でもこの明るさはチャーミング。兄貴も愛されてていい子たちですよね。
澄花の看病。冷やりと触れた手をとった皆葉の狼狽。もっと熱あがっちゃいましたか!? でもここからのやりとりですよ。澄花の緊張、そして皆葉のかけた言葉。皆葉はそんなに深く考えてないんだけど、すごく意味深に響いちゃって、わあ、少女漫画みたいだ!
朴訥系の皆葉と、その心情も気づかいも細やかな澄花の組みあわせ。たびたび差し挟まれる澄花のモノローグがすごくいいんですよね。人の心の読める皆葉なれど、澄花の思いだけは決して読むことのできないというこの仕掛け。けれどいずれはふたりわかりあえるだろう、テレパスの助けなどなくとも、理解しようとし、その思いに手を伸ばす。その繰り返しの果てに育まれていく感情。その過程こそに価値があると改めて思わされるのです。
- 『まんがタイム』第41巻第12号(2021年12月号)
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