『まんがタイムきららMAX』2022年9月号、昨日の続きです。
『こみっくがーるず』
かおすちゃんには考える暇を与えちゃいかんのだな。寮のみんな、仲間のその後を見ては自らを振り返ってしまうかおす。進学したり仕事したり、皆それぞれに頑張っている。なのに自分はなにもできていない。学業なし、連載も勝ち得ていない。と、こうして自信をなくしては原稿のクオリティを落としてしまう……。
ほんと、この子、なんとかならんのだろうか。誰かうまいことこの子をちやほやしてさしあげて!? そう思っていたら、くりすと美姫がかおすを訪ねてくれました。
うまく流行の波をつかんで乗っていくくりすと、かおす同様にアンケートにいい思い出のないという美姫。ふたりのこの違った個性と思い悩んできたこと、それらがかおすにうまく作用していくところが実によかったです。というか、ふたりの意見、その悩みに触れて自分のやるべきことに気づいた! みたいな展開じゃなくってさ、意見の食い違いの果てにわかりあって抱きあう、まではいってないか、でもふたりの心の通った状況に興奮してるかおすがね、いやもう、ほんと面白いというか、頼もしいといっていいものか、とりあえずよかったーっ! そうか、こうしてかおすのテンションがあがるイベント発生させれば、この子はきっとぐんぐん能力発揮して伸びるんだ!
でもただテンションアップで乗り切ったわけじゃない。くりすと美姫、連載を持ってる先輩としてではなく、負けてはいられないライバルとして認識するようになってるかおすの気概。ああ、この子も変わっていきますね、成長ですかね。ええ、編沢ならずとも、うっと感動覚える瞬間でありました。
『お姉様のVな事情』
カンナがVチューバー神酒シズクのファンであることを知ったミユキ。しかしこれでスランプに陥ってしまうというのが、らしいというか難儀というか、ほんと迷走してしまっています。
自分の配信を見てくれている人たちのこと、意識したことがなかったんですね。それまでは頭の中になかった視聴者、しかしそれが具体的な像を結んで、こうなればもうなにも考えずに好き勝手やるなんてできなくなってしまう。なにを求められているのか、どうアピールしていけばいいのか、すっかりわからなくなって、ただあいさつすることさえできなくなって、ええ、見事な迷走ですよ。
これ、自分を演じているミユキに戻ってしまってるんですね。誰かの求めるワタシを演じてしまう。そのくびきから解き放たれる場所、それこそがVチューバーの活動だったはずなのに、そこでも求められるシズクを演じようとしてしまっている。
そこに光明をもたらしたマリナがよかったと思います。Vチューバーとしての活動を手伝うことになって、憧れのミユキの裏面も知ることになってしまったマリナの、けれどたとえ想像していた憧れからはほど遠い現実のミユキを知っても変わらなかった気持ち。その思いがあるからこその言葉だったように思ったのでした。
けど、安心したのか大酒食らって、そして復活のやりたい放題神酒シズク。早速カンナが無茶な投げ銭してますが、この配信にまさかのマリナ映り込み!? シズク汚いオッサン説に激震走るのでは!?
ほんと、この動揺、その行方。どう決着させるのか、あるいはしないのか。ミユキ、マリナのみならず読者も予想外の境地に放り込まれそうな予感です。
『白魔導士はゾンビの夢を見るか?』
黒魔導士を自称する女の子、サタナキア。本名サキは兄フジオとともに車でこのゾンビはびこる世界を旅しているんですね。その子サキが見掛けた自転車に乗った女の子たち。我らがアヤ、そしてリルーなわけですが、温泉施設に入っていった彼女らから、しゃべる謎の杖を奪うだなんて画策しているんですよ。
うわー、ピンチなのでは? ジジ様、この子に連れ去られちゃうの!?
いや、可愛い庇護者、ペロにほだされて盗むのはやめてくれたようですよ。よかった、サキちゃん、悪い子じゃなかった。
このほのぼのとした人たちのやりとりが楽しい漫画。ですがその根底にはかなり厳しい状況があるということ、今回もまた意識させられることとなって、いやもうこれやっぱりちょっとつらい! サキが黒魔導士を自称する理由。あるいは魔法に憧れを持っている理由、その切実さに見事にやられてしまって、サキとフジオは父母を失っているのですね……。
思えばアヤもそうでした。明るくふるまってはいるものの、父との別れを経験している。そうした過酷な状況に生きる彼女たちにとって、リルーが見せたレサナの奇跡は、悲しみを払い状況を打破しうる、そんな希望にも感じられるのかも知れないと思わされて、その奇跡に望みを繋ごうとするサキの心情に痛く揺さぶられるものあったのでした。
すこぶる明るい、それゆえに時に垣間見える、苦難に立ち向かおうとする思いのいじらしさがぐっと心を掴んでくる。その塩梅、見事だと思います。
『ぬるめた』
最近のくるみは、ちあきの改造に頼るのではなく、自分自身の持ちあわせた能力発揮させていろいろやらかしてくれるみたいなこと増えてきましたね。今回がまさにそんな感じ。突如、早口言葉に開眼したくるみの引き起こすドタバタ。いつもの面々、ちあき、しゆきにさきなも最初の話題にこそ乗って一緒になって早口言葉に挑戦していたものの、終盤となれば当たり前に離脱して、くるみ残して帰ってしまう。
うわ、なんと、そうか、くるみさん、結構スタンドアロンだ! 自立なさってるんだ!
みたいな驚きというか感動ありましたよね。
クラスに早口言葉が得意な子らがいたんですね。かがり、それから照井。なんか早口言葉に四苦八苦取り組むさきなや、見事な才能披露するくるみの様子見て、面白そうと参加してきた、というかかがりと照井は仲間から背中押されてきただけか。ともあれ、この3人で競い合う早口言葉。まさかここでくるみが超絶早口領域に達するとかね! いやもう、くるみの可能性ってなんなんだ!
でも今回描かれた可能性は、くるみはちあきたちと一緒でなくても大丈夫なんだってことなんじゃないかと思います。放って帰られてしまったくるみ。この子が、教室に残ってた子たちと一緒に帰ろうとか、ファストフード店に寄ろうとか、そういう交流の幅を見せてくれたところ、自由な関係性が描かれたところ、それがなんかすごくよかったなと思ったのでした。キャラクターが自立している、自由に振る舞うことができる。硬直した人間関係の中に留まるのではない、そんな可能性を見たように思ったのでした。
そう考えれば、前回のさきなもそうでしたよね。そして今回も、帰る途中で少し交流してみせたちあきとれお。全然話題は広がりませんでしたけどね! でも、こうしたところにもまたちょっとした可能性が感じられて面白い。ええ、なにかしらの発展があったらきっと楽しいだろうな、みたいなこと思ってしまうのでした。
- 『まんがタイムきららMAX』第19巻第9号(2022年9月号)
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