2016年6月1日水曜日

決してマネしないでください。

 ずっとネットで気にしていた漫画だったんですよ。twitterとかでね、ちらほら紹介されたり話題になったり、それで、面白そうだなあ、ずっとそう思っていたんですね。『決してマネしないでください。』。科学の漫画。大学、理系の学生が、先生や同期? 先輩? と一緒に、なんやかんや実験、というか科学実験遊びをやって、楽しく日々を過ごしている? そんな印象感じさせる漫画で、そんな彼らの遊びに参加する一般人枠のお姉さん、この人がなんだか可愛くて魅力的で、ってそんな感じの漫画。いや、しかし、なにが魅力って、お姉さんもそうですが、その科学のもろもろ、説明、解説、それがなんかすごいなって思わされるもので、実際まとめて読んだらですよ、あれまあ、事前の印象以上! ほんと、これ、すごく力量感じさせる、そんな漫画であるのですよ。

なにがすごいといっても、主人公掛田氏、この人を中心とした理系男子たちの人間関係。有栖君とテレス君、それぞれに専門違いの彼らのやりとりのおかしさ、会話の軽妙さ、それがまず面白くって、そこに一般人代表の飯島さん、このすごく魅力的でチャーミングなお姉さんが加わってくる。掛田氏は飯島さんのことが好きなわけですよ。飯島さんも掛田氏のこと気になってるわけですよ。と、恋愛ものとしての面白さが加味されたところに、これらすべての要素が科学の事象、実験や科学史、科学の偉人の説明でもってエピソードとして高いレベルでまとめあげられる。

いや、ほんと、ものすごいですよ。コメディの要素だけで面白い。恋愛ものとしても面白い。そこに科学のもろもろ、めちゃくちゃわかりやすい! しかも面白い! なんだこれ、昨今科学の発見や手続きやもろもろ、いろいろ話題になること多いけど、そういうことになにかちょっとでも感じるところのあった人は、この漫画読むべきだと思う。いろいろごちゃごちゃ絡み合ってしまってること、それがすっきりとときほぐされる、そんな実感を得るんじゃないかな!? なんて思うわけですよ。

科学における発明とは、研究とはどういうことなのか。私もね、大学でいろいろ学ぶ過程でね、自然科学でも人文科学でも同じですよね、研究とは皆が少しずつ積み上げていく営為であって、人によっては小さな石かも知れない、けれど皆でこつこつと積み上げることでいつか大きな伽藍もできあがるんだ、みたいな話は聞いてたわけですよ。あるいは、よく自然科学の人はいいますよね、巨人の肩に乗って云々ってやつ。それがこの漫画では、液体の入ったコップに研究者がひとつひとつ小石を入れていく。少しずつ水面はあがっていって、いつしかあふれる、その最後の石を入れる行為が発明といえるのだけど、その達成はひとりの力でなされたわけじゃないんだって感じで説明がなされてまして、うわ、なにこれ、すごくわかりやすい! 徹頭徹尾こんな具合で、科学の考え、手続き、いろんな考え方やらなんやらかんやら、わかりやすく例示されて、なるほどなあ、そういう学問なのか、そういう論理なのか、すっと入りこんでくる。面白い! うん、これ、皆、読むといい。読まないと損だよ! そう思うくらい、この漫画、面白い。

この作者さん、ものすごいクレバーな人なのだと思います。こんなにすっきりと整理された説明。わかりやすい例示に図解。しかもそれが面白くてチャーミングであるときた。なにそれ、ほんと、過不足なく、理想的にしあがってるじゃん! 理系の物理の工学の、日頃そうそう身近でないという人も多かろう世界が、ものすごく近しく感じられて、ちょっと覗いて見てみたい! 見学、体験、してみたい! そう思わされること必至。うん、ものごとを説明することは難しいといいますけど、面白く、楽しく、魅力的に説明するのは、さらに輪をかけて難しいわけで、でも、その難しいことを、なんかあたかも簡単に普通に自然に当たり前みたいにやってくれている。これ、そんな漫画なんですね。

いや、絶対簡単じゃない。簡単みたいに、当たり前みたいに見える、感じるのは、相当な力量、相当な実力があるからですよ。ほんと、これ、稀有な漫画だわ。もう最高だと思う。

最高といえば、飯島さん。なんでしょうな。素晴しいですよね。穏やかで可愛らしくて、知的好奇心に溢れていて、科学の物理の実験のいろいろを、あんなに面白そうに聞いてくれて、楽しんでくれてって、もう、あんないい人いやしないもの! そう思って、絶望に空を仰いだよ! ああ! 現実が色褪せて見えて悲しいなあ!

みたいに馬鹿なこと思ったりもしますけど、読めば必ず面白い。ええ、これ、素晴しいです。ぜひ広く読まれるべき漫画です。

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