2009年6月11日木曜日

ぎふと

 先日休刊した雑誌、『コミックエール!』に連載されていた漫画、『ぎふと』の単行本が出ていて、これは掲載誌を『ドラゴンエイジ』に移して続くとのこと。正直それはありがたいことだなあと思っていて、それはやっぱり、この『ぎふと』という漫画を気に入っていたから、なのです。ロボットの女の子、ぎふこが人の感情を学ぶ過程で、いろいろな人との関係を結んでいく。そうした様がなんだか微笑ましくて、そしてそのぎふこと知り合った人たちが見せる感情の揺れ動きがよくて、いい漫画だと思っていたんです。だから、この続きがあるということが、本当にありがたいと思います。

この漫画は、ぎふこの感情の成長というものをメインに置いた、SFというよりもファンタジー、そうした色合いを持っていたのですが、うまいなと思ったのは、ぎふこが人の感情を知る際に用いるギミック、キャンディーを通して感情を同調させるという、それですよ。この仕掛けがあるから、ぎふこには感情がダイレクトに伝わる。そして、読者はぎふこの反応を通して、彼ら彼女らの感情を知ることとなる。そうした感情を知る、追体験するような感覚がすごくいいと思ったのでした。

このあいだ、休刊する『エール』について書いたとき、この作者について、人の気持ちを丁寧に描いて、いい。そんな作家だと思います、というようなことをいっていました。そして、それは『ぎふと』にも当然いえることでありまして、ぎふこが傍観者となって、恋愛の、恋愛未満の感情に立ち会う、その気持ちの動きが力感たっぷりに描かれるところ、素晴しくて、時に凝った画面構成に読む順番を見失ったりもしたのだけれど、そんなことちっとも気にならない。これは、いいな、そう思って、そしてぎふこの知り合いたちがまた繋がっているというところも最高だなって思っていて、本当、いい漫画なのであります。

これまでぎふこは傍観者であると、そのようにいっていましたが、ぎふこにはぎふこの物語が描かれる日がくるのだろう、そう思っていたところに、あの衝撃の展開があって、私は本当に驚いてしまって、そして、それ以降は『ドラゴンエイジ』にて描かれます。これは過去編ということなのかな? こうした動きは、それっぽいほのめかしがあったように、最初からの規定路線なのか、それとも突然決まったらしい雑誌休刊を受けて、急遽路線変更したものなのか。そのあたりはわかりませんが、いや、あとがきを見るかぎり、既定路線みたいですね。一気に浮上してきたと感じられたぎふこの物語、それがいつか収束し、そしてその際にはなにかしあわせな感情が生まれるようであればよいなと、そんなことを願っています。

  • 山田J太『ぎふと』第1巻 (角川コミックス ドラゴンJr.) 東京:富士見書房,2009年。
  • 以下続刊

引用

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