2008年2月13日水曜日

Parker 45

 昨年末に万年筆を買って以来、再び万年筆熱に浮かされているわけですが、なんか今万年筆ってブームになってるんですね。全然知りませんでした。道理で売り場がにぎわっていたわけですよ。年末の百貨店、文具売り場に向かう最中、はたして万年筆なんて今も扱っているのかなと心配していたら、ちゃんとスペースが確保されていたどころか、結構な人出があって、さすがは百貨店だなあ、感心してたらなんてことはない、ブームだったという落ち。うへえ、ということは図らずもブームに乗っちゃったわけですね。なんかやだなあ(私はブームとか嫌いです)。

かつて日本では、パーカーというとモンブランに並ぶ高級筆記具メーカーとして知られたものでして、贈答品などに使われることもしばしば、入学祝いとか就職祝いですね、でありました。けれど私の世代においても万年筆はさすがに昔の道具、一種アナクロな趣のある道具となっていて、だって身の回りに万年筆使っている人なんて皆無でしたからね。象徴的存在でしかなかったといったら言い過ぎかも知れませんが、けれど使い勝手でまさるものはいくらでもあったわけですから、ここであえて万年筆を選ぼうという人はよっぽどの趣味人か、時代からはずれている人でした。ということは、大学の入学祝いに万年筆を贈ってくれた伯父も、たいがいアナクロの人であったのでしょう。まあ実際の話、そうだったのだと思います。趣味人であることも確かだけれども、伯父は、そして私も、ある種古い時代をうちに抱えて生きている、そんな人種であるのでしょう。

私が万年筆を欲しくなったのは、使っている人を実際に見たからです。臨床心理のドクターでした。まあかなりお年召された方なんですが、その人が使っていたのがParkerのデュオフォールド。いやね、Parkerってある一定の時代を経てきたものにとっては絶大な価値を持ったブランドなんです。で、私が使っていたのもParker。ああ、万年筆を不断使いにできるというのはなんと素敵なことだろう、そう思って万年筆を欲しくなって、買ったのがSonnet。けど不断使いにしてるのはPelikano Junior、こういうところに肝っ玉の小ささが露呈します。

以前使っていたペンというのは、Parkerの45でした。父親が若い頃使っていたペンで、しまい込まれていたのを勝手に引っ張り出して、勝手に使っていました。一体いつごろのものであるかはわかりませんけど、カートリッジが問題なく使えたところからしても、そんなに旧くはない? あるいはカートリッジの形状は変わっていないのかな? ともあれ、これをシステム手帳にさして、メモからノート取りから書類の記入など、日常の用に使っていました。当時はシャープペンシル全盛期で(といっても、今もそうだと思うのですが)、万年筆どころかペンで鉛筆でノートを取る学生さえいない、まさしくアナクロの学生をやっておりまして、大学の先生あたりには懐かしいだなんて好評でしたが、学生うちでは、まあいうまでもなく変わり者扱いでしたね。

私が万年筆からボールペンに移ったのは、京セラの水性ボールペンの書き味がよかったからで、ボディの重さだけで書ける、力を加える必要がないという特性、書きよさのためでした。だいたい、この頃には大量にものを書くということがなくなっていて、大学を出たらノート取ることなんてなくなったし、手帳に書き入れなければならないほどの予定もないわけで、ああ手帳と万年筆の時代は終わったな、そう思って、お疲れさま、そっと片付けたら、見つからなくなってしまいました。いやあ困りました。探してるんですけどね、出てこないんですよ。Parker 45のボールペンは出てきたんですけど、手帳が出ない、一体どこにしまったんだ? タイムカプセルに入れたつもりはないんですが、とにかく大切に仕舞ったことは間違いない。大切に片付けると二度と見つからない法則発動で、もう洒落になりません。まいったなあ、ダウジングの出番?

かわりに見つかったのがParkerのカタログでした。1993-1994、1994-1995、1996-1997、1998の四冊で、つまりこれくらいの時期が私の万年筆全盛期。いつかデュオフォールド欲しいなあって眺めてたわけですよ。この頃は選べるペン先の種類が豊富で、デュオフォールドならXF、F、M、B、XXB、BO、XXBO、MI、ソネットならXF、F、M、B、XB、MO、MRO、MIと揃っていました。今はXF、F、M、Bからしか選べない、ずいぶんと整理されたものです。これはボールペン替え芯においても同様で、今はF、M、Bの三種類ですが、以前はXFもあって、今うちにあるParker 45にはこのXFが入っています。もちろん問題なく書けて、もう何年くらい使ってないんだろう、なのに普通に線が引けることに驚きました。しかしそれにしてもXFは細すぎます。当時私がどれほど細い線を好んでいたかということがわかろうというものですよ。今はMくらいが好みだから、本当に変わりました。ええ、様変わりといっていいでしょう。

私が昔使っていた45を探しているのは、もう一度使いたいからというよりも、昔の自分はどのようなペン使いをしていたのだろう、それを知りたいからなのですね。自分以外の誰にも線の引けなくなったペン、ハンク・ジョーンズ氏にサインをねだって渡したら書けない。ペンじゃなくて手帳の紙が悪いんだとおっしゃったジョーンズ氏、Parkerのブランドに信頼を置いていらっしゃったんですね。あの頃の私は本当に悪筆だったから、その癖がペンに染みついてしまったんでしょうね。ペンには申し訳ないことをしました。

毛筆体験を経てすっかり手を違えてしまった今の私にとって、あの頃のペンはどのような感触をもたらすのだろう。それを知りたいのです。だから探しているんですが、一向に見つからず、返す返す残念な話です。そろそろ逆行催眠の出番かと思っています。

0 件のコメント: