2004年10月22日金曜日

ルーツ

 私はなんだかこのところずっと空虚で、空虚な胸にからっと乾いたジプシーキングスの音楽はよく響きます。フラメンコでというか、こうしたラテンの世界ではサウダーデなんていう形容があって、サウダーデというのは過ぎた昔を懐かしむ思いや哀愁切なさだなんていうんですが、けどそこにはセンチメンタルや女々しさはないんですね。はるか高くに抜ける青空の広さ、世界を渡っていく風の自由さを持って、そして少し苦くもあるような、そんな思いがサウダーデなのだと理解しています。

私にとって最もサウダーデを感じさせる音楽というのが、ジプシーキングスの音楽なのです。一般によく知られているジプシーキングスといえば、おそらくビールのCMに使われた「ボラーレ」あるいは鬼平犯科帳のエンディング曲に使われた「インスピレイション」でしょう。「ボラーレ」はひたすら陽気な曲ですが、「インスピレイション」にはサウダーデが感じられないでしょうか。シックに沈む静かな曲調が、一転弾ける火花の鮮やかさで彩られる一瞬の妙。私はまさにこの一曲でジプシーキングスに惚れたのですね。ええ、まさに惚れたのです。

『ルーツ』というアルバムは、なかでもよりサウダーデに溢れています。ジプシーキングスの原点回帰ともいわれて、肌に肉薄してくる切々とした歌声が心の奥底にたゆたうんです。フラメンコギター特有の乾いて歪んだ音色も、すごく素敵。三曲のファンダンゴを聴けばすぐに分かる渋く哀愁に満ちた深み、くすんだ色合いに艶をもって輝くギターの音色。もちろんすべての曲が素晴らしいのですよ。第一曲目のAven, Avenを聴いた瞬間にもう骨抜きで、Soledadなんてまるで胸に突き刺さるが如く!

ジプシーキングスのサイトで試聴もできるので、できれば一度聴いていただきたいと思うのです。いや、ほんと、すごく素敵。なんて素敵な男達なんだろうと思いますから。

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