2010年11月15日月曜日

Demon's Souls

 Demon's Souls』、ようやくクリアしました。11月の9日にクリアですね。購入が9月の17日だから、2ヶ月弱でクリアってところですね。けれど、ここからが本当のデモンズソウルだ、っていうのは、まだまだ遊べる、2周目からが面白い、などなど、本当に遊びがいのあるゲームでして、初回クリアした時点でタイプの違うキャラクターが他に2体作られていたということからも、いろいろ試してみたいと思わせるような要素があるってことが伺えるんじゃないかな、などと思います。

クリアしてみての感想は、意外にボリュームは抑えられている、というものでした。開始してしばらくは、異様に長い道のりと感じていたものですが、いえね、ボスに辿りつくまでが異様に長く険しく、ボスがまた強くて倒せないときた。もう、これ、いつかクリアできるのか? なんて思ったものでしたが、人間というのは成長するもんなんですね。ちょっとは苦労することあっても、なんとか進めるようになった。レベルを上げてゴリ押しに近かった状態から、わざわざレベルあげなんてしなくとも進めるようにまでなってくる。こうなると、配置されている敵はそれほどの脅威ではなくなり、まあ一部は今でも怖いんだけどさ、またマップにも慣れてくるわけで、こうなってくると楽しみは対人に向かっていくんですね。

このゲームはオンラインに対応していて、協力プレイや対戦プレイも可能なんですね。生身といわれる状況でプレイしている場合は、協力者として他のプレイヤーの助けをかりることができる。最大ふたりの協力を要請できて、こうなると攻略も、それからボス戦もかなり楽になります。けれど生身にはリスクもあって、それは他プレイヤーの介入をうける可能性もあるのです。敵として他プレイヤーが侵入してくる。負けたら生身を失う、勝ったらソウルを得られる。まあ、ソウルはどうでもいいとして、コンピュータの操作する敵とは一味も二味も違う対人の楽しみというのが出てくるわけですね。負けると悔しいから、よりよい武器や魔法を入手し、またそれらの扱いを工夫しようという気にもなる。勝てると当然嬉しい。こうした要素が、このゲームになにか特別な楽しみを与えています。

協力プレイヤーは青いファントムと呼ばれ、敵対プレイヤーは黒いファントムと呼ばれます。もちろん自分も青ファントム、黒ファントムとして他のプレイヤーに協力、敵対することが可能で、青ファントムとして攻略の手助けをしながら、侵入してくる黒ファントムを待つというのもいい。黒ファントムとして、青ファントム率いる他プレイヤーに挑戦するのもスリリング。こうした対人プレイの面白さへの目覚め、これが本当のデモンズソウルの開始だ、なんて思うんですね。

というわけで、よりよく戦い、またよりよく助けられるよう、プレイヤースキルを磨きつつ、装備や魔法などを整えようと思うと、1周程度では足りないなって感じなんですね。だから何周もする。そうなると、抑えめのボリュームがすごくありがたい。また、クリアしたのは魔法使い型キャラクター。他に戦士型なども作っているのですが、すべての武器が使えるわけではない。どうせならいろいろ試してみたいと、もう少ししたら4人目のキャラクターを作るだろうことが予想されて、やっぱり抑えめのボリュームがありがたいのでした。一度遊んで満腹させるタイプのゲームではなく、何度でも繰り返し遊べる、遊びたくなる、そうしたゲームであるのです。

書籍

2010年11月14日日曜日

『まんがタイムラブリー』2010年12月号

『まんがタイムラブリー』2010年12月号、昨日の続きです。

『ハルの見えない望遠鏡』、次号最終回を前にしての山場、これはぐっときました。これまでは、割と冷静に読んできた、そう思っていたのですが、ナツのことがあって、そして今回にその話が繋がってきて、びっくりした、こんなに心が動かされるとは、自分のことながら驚いた。ハルに真実を告げるアキの、前へ前へと進んでいくその姿に押し込まれました。そして、ハルの思いがけない繋り。ああ、これはやられました。予想していなかっただけに、やられました。

『少女カフェ』、クリスマスを前にして張り切るお嬢さんふたり。妙にしっかりしてるふたりの、クリスマスプレゼントに関する条件が、売上前年比120%。これ、条件だけ見たら、サンタクロースとは誰なのか、わかってるとしか思えない。けど続いて明らかにされるふたりのサンタクロースについての認識。面白いですね。妻との約束。というか、妻、過激すぎ。みおとつくし、ふたりの信じてるのか信じてないのか、それもなんだかはっきりしなくて、お父さんのみならず読者もわからない、このあいまいに置かれる感触はなかなかによいものがあります。

そして、マチコさんのこと。お父さんの中には妻としての、葉月さんの中には友人としての、そしてみお、つくしには母としてのマチコさんがそれぞれ存在している。今も。そうしたことが楽しげな日常の暮らしの合間に顔を出す。欠けた存在の大きさ、皆がそれぞれに抱えている空白というものが感じられて、思わずうっと胸がつまるのですが、けれどそれが必要以上に重くならず、湿っぽくもならず、むしろ愛おしさがあとに残る。そうしたみなの気持ちにじんとしますね。思うこと、思われること、その価値、意味、いろいろ思って、ぐっときますね。

『まじめの一歩』、いつもなんだかゆるい主任がちゃんとして、ああ、もしかしてこれでできる人になったり! とか思ったら、いやそうではなかったようだ。いつもどおりでない雰囲気に戸惑ったり、けれど中身はいつもどおり、安心してみたり、そうした石田の様子に人見知りを感じたり、また髪型を変えてみたところなど、ちょっと自信がないっていうのがわかったり、この人の普段弱気を強気で隠しているっていうのが実にいいなと思うのですね。

『結城ほうれんそう』、こちらもイメチェン、びっくりした! それにしても変わりすぎだろう。私なら、違う人と思ってしまうレベル。いつもは掲示板で交流している後輩と会う。後輩はこちらのことを気付いていない。いや、よいですよ。後輩ゆうきは妹を先行させて、そして結果的に追い払ってしまう。この出会えなかったってこと、ちょっと昔のドラマなんぞを思い出してしまって、ああ、すれ違い! ゆうきは、掲示板での山口と、そして職場の山口と、どちらにも気持ち揺らしていて、それがばっちり重なる、その時が楽しみで、ああ、このあたりは少女漫画みたいですね。その時を心待ちにしています。

『あつあつステップアップ』、ゲストです。関西から転校してきた女の子がヒロイン。好みの男子から手紙? と思ったらたこ焼だった。たこ焼屋の息子、本場の味を教えてほしいって、なかなかに唐突な申し出で、しかし売れない原因、ああー。おじさん、商売に向いてないよ! しかしヒロインのがんばってみせるところ、いいね、看板娘っぽい。商売には貪欲で、けれど恋愛には慣れてなくって、そうしたギャップの見えるところなどよい感じです。

  • 『まんがタイムラブリー』第17巻第12号(2010年12月号)

2010年11月13日土曜日

『まんがタイムラブリー』2010年12月号

『まんがタイムラブリー』2010年12月号、発売されました。表紙は、冬の装いがテーマでしょうか。いや、これは人形か。『Welcome! つぼみ園」ことみ先生は園の皆の、『天使な小悪魔』はまるの兄、幹ですね。他に『放課後のピアニスト』、『サクラ街さいず』、『うさぎのーと』ときて、自分の人形を持ってる持ってないなど、ちょっとした違いで見える関係性の表現など、面白い表紙でありますね。

『この街のハテ』、おじいちゃんの退院。孫娘から見た像、義理の息子から見た像、そして犬のハテから見た姿、それぞれに違いがあって、ただただ喜ぶ孫娘があれば、心配も隠せない子の立場もあって、こうした多面的な組み立ては面白い。そして、そうした心配が融ける、おじいちゃんの思いがけない喜びよう、そして対話、思い出語り、じんとさせられますね。この漫画は、ちょっとしたところに人の情の機微を伝えてくれる。そうした情に読んでいる私の心も動く。いい漫画です。

『ただいま独身中』、ついに結婚式、っていうんだけど、ヒロインはなんだかいろいろやらかしちゃってて、このどうにもこうにも駄目なところ、どうしようもなく面白い。なんといいましょう、ある程度年月を経て、夢や希望だけじゃ生きていけないってこと知ってる女性たちの、どこかシビアで、どこか開き直ってて、けれど期待もなんかあったりして、そうした気持ちのいりまじった様子がすごくいい。思わず口にしてしまった嫌味、いや、嫌味のつもりはなかったのかも知らん。仕合せに嫉妬? 単純に嫉妬? 主人公の楓もそうなんだけどさ、友人たちもたいがいで、そのたいがいなやりとり、すごくよいなって思うわけです。経験上、こうした人とは変に気があう。一緒にくだを巻いたりしてさ、そういう近しさみたいなの、あんまりきれいじゃないですけどさ、感じちゃってるみたいなんですね。

だんつま』、あいかわらずの克ちゃんだけれど、その相変らずという状況を面白く描くのが本当にうまいですね。クリスマスパーティ、張り切って料理作りまくる夫。誉められて嬉しい。けど、せっかく教えようとしてくれてるレシピを断わる英理子、その理由が最高で、やっぱりこの相変わらずのやりとり、ものすごくうまいと思うのです。しかし、今回の面白かったのは、隣の旦那の手柄を自分のものにしようとしている英理子に怒ってみたり、あるいは折角の労作を煮込まれてしまったことに驚く、そんなひなよさんが面白い。全然動じない克ちゃんもさすがですが、克ちゃんのために心砕いている、そういう様子はほのかに情やら愛やらを感じさせて、すごくよかったのでした。

『放課後のピアニスト』、こちらもクリスマス。しかし最初の冷え性の話、これは本当に切実で、ずっと自宅にいるならいいんですよ。ストーブなりなんなりであぶっておける。けれど、レッスンや試験となると話は別で、手袋は絶対、カイロも装備、ほんと切実だった。まあ、試験は待ち時間にストーブであぶれるようになってるんだけど、定期試験ならともかく受験の時にはそんな横着な真似できなかったわけで、いやほんと切実でした。さて、高校生のクリスマス前。定期試験があったりパーティに持っていくケーキ作る話があったりして、いやしかしソラくんは器用貧乏の相が出ておるな。ほんと、なんか他人事とは思えない(私は、伴奏のお礼にお菓子を焼いていた)。彼の将来が心配です。そしてレミの体力の話、いやあこれも切実。その切実な願いをサンタクロースに託す。サンタクロースを信じる理由っていうのがふるっていました。もう、最高。レミさん、最高です。

『ぐだぐだしている女子高生の放課後 略して ぐだじょ』、つくづくはねる先輩は可愛いな。扉が可愛い、やってることが可愛い、しかしこの人、友達いないのか? いや、友達と撮るのがはじめてなだけか。ちょっと安心した。けれど、ちょっとしたことに楽しみやら面白さを見出して、そういうはねる先輩はすごくいいと思う。ちょっと子供っぽくも見える、けどそれだけじゃないと思う。なんだかね、満たされないなにかを埋めようと頑張ってるのかな? 考えすぎかな? でも、この人の日々を楽しもうとしている姿勢には素直に憧れちゃうなあ。そんなこと思います。そして最後の泣いちゃうところとか、ああ、本当に可愛いな。可愛さだけで好きだのいいだのいってるつもりはないんだけど、なのに結局はこの人の魅力に集約されてしまう、そんなところがあって、いやもう、やられっぱなしですよ。

ところでさ、近所のとんかつ屋さんのマスコットキャラ、思わずこやつを思い出してしまったんだけど、確認してみたら全然違った。自分の記憶のまずさに驚いた。

  • 『まんがタイムラブリー』第17巻第12号(2010年12月号)

2010年11月12日金曜日

少女素数

 『少女素数』も冬の装い。3月発売の第1巻表紙におけるふたりは、真っ白なワンピースがしめやかに美しく、そして11月発売の第2巻はファーのついた真っ白なコート。あんずにすみれ、寄り添うふたりはほのかに和らぐ暖かみ。見るものの気持ちも自然とほころぶ、そんな絵柄であります。いや、ほんと、背景の白、コート、ブーツの白、そこにあんず、すみれのふたりが浮き上がってくるかのようで、静かで、遠くて、そしてやはり美しいのでありました。

『少女素数』2巻は、その前半分と後半分でちょっと印象が違ってくるな、そんな感想を持っています。前半にはあんずとすみれ、ふたりの姉妹としての姿が目立ち、そして中盤あたりから学校でのすみれの姿が際立ってくる。すみれの少し引っ込み事案で、センシティブな側面、それはこれまでにも描かれていましたけれど、ここでぐっと前面に押し出された感じ。ああ、すみれという子はこういう子なんだ、こうやって思い悩み、こうやって前へ進んでいく人なんだ。傷付きやすく、時に重荷に苦しい息をつくこともあるけれど、こうと信じたことは曲げない。そんな芯の強さを持っている娘で、あるいはそうした曲げられない気持ちがしっかりとあるから、いったん対立の生じれば疲れ果ててしまうのかも知れない — 。私は、描かれるすみれの像に、そうした人物の姿を思っています。

だからこそ、堀切さんはよかったな。すみれとはまた違った、自分のらしさを持った人。すこし大人に見える、けれど多分そうじゃなくて、自分の領域というものを意識してる人なのだと思う。この人に気にいられて、そこでまた人間関係のいろいろあったりもしたけれど、それを乗り越えていく様子、それはすみれのうちにある確かな気持ちの変化を思わせて、ああ、14歳という変わりゆく季節は、こうしたところにもその色を反映させて、ほのか、鮮やか、瑞々しくあったのでした。

さて、前半分の話、あのパジャマパーティーの話はべらぼうに面白かったな。あらためて思いましたよ。ページワンにおける凶悪双子コンボ、こうした策略の冴え、こうした味は『HR — ほーむ・るーむ』にもあったっけ。クレバーでスマートで容赦なし。こういうのが本当に好き。そして、すみれの人気発覚にぽつねんとあんず。これもすごく好き。最後の落ちのフリであるぱっクンも、少年の輝きがあって素敵だな。そう思って、そして落ち。この一晩にあったことが、ここにきれいに落ちてきている、そう思わせるものがありました。

各話の終わりに添えられたカット、それも面白く、本編の展開、その後の様子が垣間見える。ちょっとしたところに、人物が深まる。とてもいいなと思ってて、いや、それにしてもシュルツ泣きする有美ちゃん。これはすごくいい。もともとあの叫んでる表現が好きだってこともあるんですけど、いや、ほんと、すごくいい。ちょっとした必殺技だと思います。

前半に感じること、後半に思うこと、それらは少し違いながらも、けれどその両側面はひとつの状況を描くものに他ならず、それはつまりは、楽しくきらめく光もあらば、時にはメランコリーに沈む、そんな憂いもある。単純でなどありえない、そんな人の生きるということ、ある時期だけを見ても、こんなにも多面であるということなのだろうと思わされます。そして、多面であるからこそ美しい。強くもあり儚くもある、そうした相反する価値を内包する、人の魅力というものがひしひしと伝わってきます。

ちょっと余談。2巻を読んで、連載時には拾えていなかったもの、気付けたこと。それもよかったと思っています。誕生日の回にて、回想に語られた虫めがねの授業のこと。これは、後に関係してくる、そうしたものであるのだろうと気付いて、こうして読み返して気付くものがある。こうしたこともまた、単行本の楽しみ、よさでありますね。

  • 長月みそか『少女素数』第1巻 (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ) 東京:芳文社,2010年。
  • 長月みそか『少女素数』第2巻 (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ) 東京:芳文社,2010年。
  • 以下続刊

2010年11月11日木曜日

学園カラーズ

 カワハラ恋の『東京!』が単行本になると聞いた時は、特に驚きもなく、やっぱり人気あるんだろうなと素直に受け止められたのでした。しかし、それが『学園カラーズ』と同時単行本化と知った時には、そこまでなのか! とここでようやく驚きました。しかし、『学園カラーズ』ってどんな漫画なんだろう。どんな媒体に掲載されているかも知らず、だから買うかどうかは『東京!』にて判断されるカワハラ恋のバリュー次第。買う、見逃す、どちら!? ええ、買いました。ええい、買ってしまおう、思い切って購入リストにいれたのですね。

その『学園カラーズ』、単行本発売に先駆けて、『まんがホーム』2010年12月号に掲載、それで掲載媒体がlivedoorデイリー4コマであること、そしてどういう漫画であるかを知ったのでした。とはいえ、雑誌に載ったたかだか数ページでわかるかというと、それはちょっと無理。やはり単行本なら単行本でまとめて読んで知る、それが一番であろう。というわけで、単行本の発売を楽しみにしていました。

読んでみての感想は、いやもう本当に好き勝手に描いているのだなあ、といったものでした。冒頭に、漫画のはじまるまでのことが描かれていたのですが、そこに好き勝手にやっていいならという台詞があって、で、この約束は見事にはたされたみたいです。タイトルカットも自由、各回タイトルも自由、タイトルの表記さえも自由。もちろん、内容も自由。そのときのノリみたいので描いてるように見えて、それが実に面白いんですね。なんというのでしょう、ずいぶん以前に先輩に押し付けられるようにして借りることになったマイナー系アニメ誌の読者コーナー、常連の面々が描く漫画があたかも連載のように毎号掲載されていたのですが、『学園カラーズ』からはまさにそうしたノリを感じたのです。

そうしたノリってなんだろう。それは、まずは自分が楽しんでいるってところなんじゃないかと思うのです。漫画に描かれていること、あるいは描くことを、作者自身がまず楽しんでいる。その楽しんでるっていう感じ、なによりも私が面白い! って感覚が伝わってくるから、読んでいるこちらも楽しく、面白くなってくる。ええ、そのこちらも楽しいっていうのが重要なんでしょうね。ひとりよがりではない。作者だけが楽しんでるんじゃなくて、作者も楽しんでいて、それが読者にも面白いっていう、共感的といえばよいか、気の置けない友人とおしゃべりしてるかのような感覚、そういったものがあるのですね。実際、漫画の中においても、そうした状況が描かれているわけですが、それを読んでいる私からして、そうした感覚を味わっている。それがすごく楽しくて、巻き込んでくれる、引き込んでくれる。本当に魅力的な漫画であるのでした。

  • カワハラ恋『学園カラーズ』(まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2010年。
  • カワハラ恋『東京!』(まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2010年。

2010年11月10日水曜日

『まんがタイムきらら』2010年12月号

『まんがタイムきらら』2010年12月号、昨日の続きです。

『モテブ!』、ゲストです。もてない男ふたりの、望み薄のもてたい漫画、といった感触。その絵柄に、最近の『きらら』誌は既存のイメージから脱そうとしてるのかな、なんて思っているのですが、確かにこういった毛色が違うタッチがあるのも面白いと思います。内容は、もてない男たちの勘違い恋愛期待ものとしてのスタンダード、そんな感じで、もういっそう強烈ななにかがあってもよかったかもと思っています。駄目な男ふたりに、主人公の幼なじみの女の子がつっこみ役として機能している。こうした前提があって、最後にモテ部発足。このモテ部がメインなら、今回はいまだ導入でありましょう。次回掲載でどういった展開が見られるか、それに期待したいです。

『ヤマトナデシコ』、男なのに双子の姉として学校に通うことになったやまと。いや、オタヒッキーなのに、といった方がいいのかな。おもてが苦手、対人苦手、女の子苦手。なのに女の子に取り巻かれて、右往左往、どぎまぎ、狼狽しているやまとの様子にやられてしまっています。加えて、本当は意気地がないくせに強がってる、やまとの妹さくらをライバル視してるちづる。なんのかんのいって、やまとはちづるに好意的で、やまとにつっかかっていくちづるも、いずれはなんか仲良くなっていきそうで、こういう不器用もの同士の関係、嫌いじゃないなあ。

『たべる部』、これいいですね。あのほっぺた引っ張られてる部長がかわいくって、もう大好きです。お餅みたい。今回、新たにひとり人物加えて、国府台灯子。一人暮らしで自炊してるっていうんだけれど、なんだかあんまり期待できない感じ。てきぱきと皮だけクレープを作り、タコなしタコ焼きを作り、キャベツなしお好み焼きを作る。なんて優秀なの! って、全部小麦粉といて焼いただけじゃねえか! そうした料理っぽいけど一味も二味も足りないもの、材料がなかったからじゃないっていうのがいい感じ。また、そうした一見優秀な新入部員に焦りを見せるヒロイン、江戸川橋円もよい感じ。読んでいて楽しい漫画です。

境界線上のリンボ』、しびれました。人の社会に受け入れられなかったフゥがたどりついたリンボ。人の世界と異形の世界、どちらでもありどちらでもないリンボはフゥを暖かく受け入れて、ああこれはひとつのユートピアであるかと思ってきたというのに、そのまさにすぐそばにあったディストピア。これはひとつの私たちの暮らす世界、社会、状況のうつしではないのか。しびれました。突き付けられる決定、残酷とも思える廃棄の決定に戸惑うフゥたちの姿は、常に単純ではない選択を迫られる、そうした現実の有り様に似て、これはこの先を期待しないではおられない。きっとハッピーエンドであろう、そう思っているけれど、あっさりと好転でも、あがいてあがいて好転でも、いや、どんな努力も報われないのだとしても、その先に描かれるであろうもの、それを見届けたいと思わされるものがありました。

『田舎の子』、ゲストです。まったく都会というものを知らない純朴な女の子、芹沢瀬波、この子のカルチャーギャップを描いて、なかなかに面白いです。地図を見て駅を探すのに見付からない。うん、地下鉄だから。同じ制服を見つけて、ついていったらファーストフード店。こうして出会った、妙にのりのいいふたりに冗談いわれて騙されて、時にはからかわれたりしながらの学校生活になるのかな? 気さくなふたり、素直なヒロイン。あまりにものを知らず、疑うことを知らない、そんな風にも思うけれど、面白かったです。

My Private D☆V、『アクアリウム』の博です。「乙女と帽子」、おお、これは魅力的。実際、帽子をかぶっている女の子、ちょっとボーイッシュだったり、あるいはフェミニンであったり、そうしたイメージを際立たせたり、あるいはちょっと変化させてアクセントにしてみたり、面白いアイテムであると思います。そして添えられたイラストも、ああ、とてもいいですよ。ところでこれは作者も想定されてないことかも知れないけれど、私はこの人の描く人物の、ちょっと憂いを感じさせるところ、たとえ笑顔であって、ほのかに憂いを帯びている? そんなところにひかれます。ああ、一面的ではない表情の、とても魅力的であることよ!

  • 『まんがタイムきらら』第8巻第12号(2010年12月号)

2010年11月9日火曜日

『まんがタイムきらら』2010年12月号

『まんがタイムきらら』2010年12月号、発売されました。表紙は『ゆゆ式』、ヒロイン三人であります。くつろいでる、そんな雰囲気も感じられるイラスト。ノートに自由に手書きしましたというような背景も、なかなかに味わいありまして、こういうのすごくいいと思います。ただ、なんというか、あまりにイラストと調和してしまっていて、そう、かつての『きらら』の持っていた押し出し、D☆V語と揶揄されたりしてましたけど、そういうインパクトは弱い感じ。いや、これは洗練なのだと思います。実際、おちついていい表紙ですよ。あの、2010/12/DECEMBERのマークも手書きになってて、細かいとこまで凝ってる、面白く可愛い表紙と思います。

ゆゆ式』はドロップキックの話題から。いやね、昨日映画に出てくるドロップキックなどというのを読んでたところだったから、個人的にえらいタイムリーで笑ってしまいました。だいたいにして私にドロップキックっていうのは鉄板のネタで、それは間違いなくギタリスト打田十紀夫氏のドロップキック話のせい。だって、ライブでこういう話が必ず出るんですよ。しかも面白いんだ。もう、血尿が出る話とか最高で、だから私は今回のドロップキックネタで、縁の腎臓を第一に心配したのでした。

しかし『ゆゆ式』ってのは、私でいえばドロップキックみたいな、ほかの人にはわからないだろうけど、本人たちにはやたらと面白い、そういうはまってる状況っていうのが描かれてるんだろうなっていうのを痛感させられます。もちろん、彼女らの面白がっていることを、同じように面白がれると一番いいのでしょうけれど、常にそういうわけにもいかない。けれど、彼女らの面白がっていたりする様子、あるいは主にゆずこの調子にのってぐいぐいと押している様子、そういうのを見ていると、面白さではなく、面白がっているというそのことがじわじわ沁みてくるようでおかしくなってくるんですね。なかなかに今回もじわじわとくる、いい回でありましたよ。

『チェリーブロッサム!』、気にいっています。今回もとてもよかった。主人公日吉と幼なじみつばきがメイン? そのために、いつもとはちょっと違った雰囲気があって、しかも、これ、今後に繋っていきそうな展開ですよね。つばきが機嫌をそこねたのは、日吉が約束をまもってくれなかったから、しかもその理由に代官山とかいう先輩が出てくるっていうこともあったのかな。で、その大倉山先輩当人と知らず知り合ってというね、これは実に期待したい。そして最後に約束がはたされて、日吉、つばき、ふたりの気持ちが、互いにごめんそれはちょっと分からないのだとしても、なにか通じあっている、わからないながらも受け止められてるのかなって感じに思える、とてもいいシーンが。余韻のある本当にいいシーンでありました。

『少女公団アパートメント』、とてもいい感じ。今回は服を買いにいくのですけれど、服を選ぶ、服を買う時のハイテンション、それがひとりひとりで違ってて、とりわけ張り切ってるさくら、引っ張り回されて嫌になっちゃってるなつみ、面白いんですね。服を選ぶときにも個性が見えてくる。移り気なろか、落ち着きのある、あるいは思い切りに欠けるちさ、違う個性が違う個性にひっぱられるっていうのが見える、その様子がよかったです。そしてなつみのマフラー。欲しいと思ってそうなのに、買うのを躊躇してる。それを思い切らせるろかとちさ、でもって最後のなつみの表情、これはもう本当によかった。いい話でした。

『ねこたま。』、ゲストです。最近の『きらら』には異色と思える、そんな雰囲気の絵柄、色合い。ちょっと水彩っぽい? けれど読んでいけば、いずれおそらくはそう遠くなく馴染んでくるのだろうな、そんな風に思うところもある絵柄です。さて、通学時間を短縮するため、亡くなった祖父のうちに一人暮らしすることになった女の子田中あつ子が、おじいちゃんの家で出会ったネコマタの女の子、タマと同居することになる。最初は同居を拒んだタマを、あの手この手で説得して、そしてだんだんに仲良くなっていく、そんな様子が見える序盤、悪くないなって思いました。内容といえば、若干薄めではあるのですが、この先がどうなるかはちょっとわからない。続く掲載を楽しみにしたいと思います。

『ふたり。』、ちょっと気にいっています。ゲスト2回目ですね。変わりものカップル石井、赤坂のふたりのやりとりは面白いし、それに寺島に好意を持ってる佐々木が可愛いし。佐々木に対する先生と赤坂の攻勢、これがことさらに佐々木のよさを引き出しているなと思うわけですよ。そして、最後に素直さ見せる赤坂。これはキュート。そりゃ石井くんも照れてしまうわ、と思ってしまう。普段冗談めかしたやりとりばかりしてるせいか、素直さっていうのが強烈に作用するのでしょうね。ふたりのこうした初々しさ、見ているとなにか穏やかな気持ちになりまして、見守る、そんな思いになってしまうのですね。

  • 『まんがタイムきらら』第8巻第12号(2010年12月号)

引用

  • 茶菓山しん太「チェリーブロッサム!」,『まんがタイムきらら』第8巻第12号(2010年12月号),58頁。

2010年11月8日月曜日

虹色占い師

 『虹色占い師』の単行本化は、まさか有り得ないと思っていたものだから、こうしてまとめて読めるようになったこと、無上の喜びであります。ずいぶん前、奥付を見れば2004年から2005年にかけて『まんがタイムジャンボ』に掲載されていた漫画で、タイトルにあるように占い師のお嬢さんが主人公。占いの店QUESTに勤めているのだけれど、本業の占いではふるわず、もっぱら事務やら雑用やらやっている、そうした様に一種のドジっこ的な味わいもある、そんな漫画でありました。しかし、この漫画、後書きにもあるように、当時アンケートの結果がふるわず、打ち切りの憂き目を見たのだそうで、ええ、だからこそきっと単行本化はあるまいと私も思っていたのでした。しかし、とにかく辻灯子という作家は、復活連載があったり、奇跡的単行本化があったり、驚かされることがしばしばです。

さて、『虹色占い師』。連載されていたころの評判思い返せば、わかりにくいとの声がとにかく多かったように思います。ええ、それをさして考え落ちだなんていっている人もあって、実際ぱっと見てわからず、読み返してわからず、しばらくしてから、あ、そうか、なるほど! と理解される。ちょっと誇張してますけど。けれどわからないことも珍しくはなく、とにかく難解といわれていた。アンケートがふるわなかった理由は、その読み解きにくさにあったのだろうと思っています。

そうした記憶があったものですから、単行本での読み直し、ものすごく楽しみにしていたんですね。どんだけわかりにくいだろう、単行本で読めばどれだけ理解できるだろう。結論からいうと、わかりにくいと思うこと、まずありませんでした。あれー、普通に読み進めていけるじゃん、あの考え落ちとかいわれていたの、なんだったのだろう。そう思ったら、後書きに読み直したら自分でもイミわかんない所が多くて直せる所は直しましたとの記載がありました。ああ、やっぱり記憶は正しかったのか。

しかし、こうして修正はいったおかげか、すらすら読み進めて楽しむことができるようになって、面白かったですよ。個性的な占い師たち。ヒロインの水月はどうにも運が向いてないというか、押しが弱い? 対してものすごく押しの強い火那さん、ものすごくマイペースな風耶子さん、あまりに対照的で、その自由すぎるふたりのやらかすことが面白くて仕方ありませんでした。水月が、なんだかうまくいかないなあと思ってるところに、火那さんが追い討ちをかけるといった感じでしょうか。で、そうした影で好きなことやってるのが風耶子さん? とにかく癖のある人たち、時には厳しく当たることもある、決して仲良しさんばかりではないといった感触があって、けれど新人で立場の弱い水月も芯が強いといいますか、負けっぱなしでない。いいバランスですよね。それに、ひとり繊細で親切な乾さん、とにかく皆個性的でキャラクターが立っていて、そうした人たちが引き合って、関わり合って、面白みも出てくる。辻灯子的といってもいいと思うのですが、ちょっと気のきいたやりとりににやりとさせられる、小気味のよさが魅力的です。

そして、今ちょっと私が期待してるのは、もしかしてこの単行本がですよ、売れたりなんかしちゃったら、復活連載なんかもあったりする? いや、資料の大半が整理されちゃったらしいので、それはないかなって気もして、けれど少しでも続きが読めれば嬉しいな、などと思っています。そして願わくば、単行本に収録されなかったページを含めて第2巻を出して欲しい。欲張りですね。けれど、わずかでもそうした可能性に期待したくなる、そうした作家であるのです。

  • 辻灯子『虹色占い師』(まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2010年。

引用

  • 辻灯子『虹色占い師』(東京:芳文社,2010年),113頁。

2010年11月7日日曜日

『まんがタイムジャンボ』2010年12月号

『まんがタイムジャンボ』2010年12月号、先日の続きです。

『36!』、ゲストです。ミイとムウ。ふたりの子供の話。お父さんなのかな? 秀臣のふたりにいった台詞、本当君ら人の話聞かないよね、これがのっけから笑わせてくれて、ええ、この漫画、なかなかにいいですよ。かくれんぼにしても、痛い痛くないにしても、ちっこいところに気がきいて、面白いなと思ったのです。しかしこのふたり、男の子なのか女の子なのか、いまいちよくわからないんですが、いや、女の子かな? どちらにしても、可愛いなあと思うのです。見た目とかがではなく、行動がとてもいい。ええ、なんだか気に入ったようですよ。

『アニモー』、変な動物園の漫画。今回は裏の畑にいくっていうんだけど、どう見てもジャングル。兎耳山もいうように、ジャングル。超危険地帯、普通の人が畑まで辿りつけるとは思えない、そんなところで、案の定兎耳山が先輩とはぐれる、というか遭難する。この無茶といっていいくらいに大風呂敷広げてみせる、その思いっきりが面白くってよかったです。次回に続くのでしょう、無茶さがより以上のものとなればよいなと思いますよ。

『嫁猫』。最初のころは、妻が猫という、ある種出オチ的な面白さと感じたのですが、回を重ねるごとにまた違う面白さが出てきたように思います。人間の女性に起こることが、猫の奥さんにおこったら。そうしたネタが面白く、また奥さんの猫であるということ、そこから発する事々も面白いと思うのですよ。またネタのあちこちに、積み上げられて生きるものがある。猫好き上司とかがそうですが、こういうのもとてもいいと思います。俺の嫁ってやつですか、もよかったです。

『あゆみさんは心配性』、ゲストです。心配性、っていうか、考え過ぎ、気にしすぎ、そしてやりすぎのお姉さん。なかなかに悪くないと思いますよ。あの、居眠りの誤魔化し。どう考えても居眠りがばれた方がましだろうっていうの。この、いわば近視眼的に問題を解消しようとして、よっぽど酷いことにしてしまうっていうの。なかなかね、不器用でちょっと不憫なお嬢さんなんですけれど、面白いなって思ったのです。

  • 『まんがタイムジャンボ』第16巻第12号(2010年12月号)

引用

  • つぐ「36!」,『まんがタイムジャンボ』第16巻第12号(2010年12月号),113頁。

2010年11月6日土曜日

『まんがタイム』2010年12月号

『まんがタイム』2010年12月号、発売されました。表紙は古典的名作? 名探偵、ありていにいえばホームズに扮する『おとぼけ課長』を中心に、三銃士『みそララ』、ロミオとジュリエット『だって愛してる』、アラビアンナイト『タマさん』。結構バラエティに富んでいて面白いです。

『タンスの国のヨッちゃん』、創刊30年目のスペシャルゲストだそうですよ。ちょっとがさつな女の子、ヨッちゃんが主人公。いなくなってしまった猫、エディーを探して、なんだか不思議な世界に迷い込んでしまう。猫エディーが人のように振る舞う世界。そこでの語りに、ヨッちゃん、お父さんのこと嫌いなの? っていう誤解がとける。なかなか悪くないなって。なんだか心配していたお父さんも、最後にはしあわせそう。なんだかいいな。味わいのあるいい漫画でした。

『愛は時給を救う』、会社が倒産してフリーターになってしまった青年の生活描いて、ああ世知辛いというか、まさに不況下日本の状況反映させている設定であるなと、なんか読んでいて切ない漫画です。けど、やたらと鈍臭い主人公、トモナリですが、鈍臭かろうが要領悪かろうが、一生懸命でいつも明るいっていうのが救いになってるのかなって思います。いや、身近にいたらどう思うかはわからないんですけどね。お互い様って思えたらいいなあ。それと、トモナリの芹ちゃんに向けるひたむきな愛情、それもいいのだろうなって思います。芹ちゃん、図書館で司書として働いてる。その芹ちゃんにトモナリが偶然再会できたってことから、勤め先は公共の図書館だろうとわかる。トモナリひとりでは心配だけど、ある種かたい職業についている芹ちゃんがいるっていうことで安心できるってところもあるのかもなあ。そんな気もしています。

『Fever!! — 貧乏レイジの同居人』、幽霊やおばけと同居している青年の漫画ですが、この幽霊おばけの面々がみんないいやつだもんだから、読んでてすごく楽しくて、けれどだんだんに彼らが幽霊おばけというよりも、変わり者たちっていう雰囲気になってきている、そんな感じがしています。でも、常識の欠落、カレーの味見とか、こういうのはすごく面白い。相手が人でないから、人であればよほどありえない状況も普通に展開できるのかもな、そう思わせてくれて、カレンダーもそんな感じ。こういうシンプルかつナンセンス、わかりやすく面白い、そういう漫画があるのはよいことだと思います。

『スクミッション!』、最終回にきっちり恩返しを成就させるとは、なかなかに律儀。不思議というか奇妙なタニシの恩返しもので、最後の最後までその奇妙さを貫いて、そしてその奇妙さを事件の原因にしていくっていうの、まあ沼男は原因になっただけで、彼の恩返しが成就したわけではないっていうのが不憫であるのですが、ええ、思えばこの漫画はいろいろと不憫な沼男を愛でる、そうした漫画と理解して読んだ方が面白かったのかもって思えたのでした。しかし沼男こそが奇妙さの集中するところで、ほんとヘンテコなやつだったと思います、最後まで。

  • 『まんがタイム』第30巻第12号(2010年12月号)

2010年11月5日金曜日

『まんがタウン』2010年12月号

『まんがタウン』2010年12月号、本日発売でした。なんかね、紐がかかってまして、あれ? 立ち読み防止? と思ったのですが、なんか付録の小冊子がついてくるんですね。『クレヨンしんちゃん特集号ミニ』。しんちゃんが5人組で戦隊ヒーローっぽく活躍? なんかいろいろ試されていますね。

『偽装男子』、すごくよい。この人の面白さがよく発揮されてると思われて、特にあの女装男子群、彼らが最高。ただでさえアレなのに、ポージングといい、行動、そのアグレッシブさよ! 最高です。しかしスレンダー、ショート女子に見えるみずき、実に素敵で、道を誤ってしまいそうです。

光の大社員』、輝戸と伊達の性格の違い。ああ、私は伊達タイプだと思います。とまあ、気にいった話はこれじゃなくて、ちはるさんですよ。ちはるさんの倫理観。これ、非常にいい。社長の無邪気を理解しつつ、駄目なことは駄目と釘を刺す。その駄目という理由、非常に的確に突き付ける。素敵です。ページかわって「クエスト石原副部長」、あの終わりのつけかた、落ちといえるものは3コマ目で提示されている、それを最後に駄目押しする、その見せ方。大変によかったです。あの表情、妙に場違いなかっこよさ。見事でした。

『うらまじ』、ゲストです。占い、まじないでものごとを決める神野みことさん。この人が主人公。その占い、どうも当たってる様子はなく、けれどダウジングではなにかを見出してるっぽい。基本的にナンセンスな話。けれど占いを口実に自宅を突き止める、そうした手管など、面白かったです。ちょっとした人の悪さ、ちょっとしたひねり。それがよかったです。

そんな2人のMyホーム』、亡き妻、唯を思い出している輝くんの話。ふたりの出会った大学でのこと。四コマ漫画で、というよりも、むしろただただ語られていく、そんな印象の方が強くて、しかしそうして語られること、ぐっと胸もとに突き付けられるようで、うっとつまって、苦しくさえありました。輝の唯に出会って得たもの、そして失ったもの。これはたまらない。最後のページ、輝の独白にはこらえられず涙ぐんでしまった。思いがけぬ強い表現に、すっかり引き込まれて、押し流されるがように輝の感情に飲まれてしまった。そうした思いがしています。いや、本当に、よい流れでした。このできごとが、他ならぬ輝自身を救うのだろう。そうしたところもよかったと思っています。

  • 『まんがタウン』第11巻第13号(2010年12月号)

2010年11月4日木曜日

『まんがタイムジャンボ』2010年12月号

『まんがタイムジャンボ』2010年12月号、発売されました。いや、まいりましたよ。先月、コンビニの雑誌コーナーが変わってしまって大変なんていってましたが、もう大丈夫と思ってたのに、なんと今月も入手困難っぽくなってしまうとは思いもしないことでした。『まんがタイムジャンボ』が置いてない! なんで!? 朝からコンビニのはしごでしたよ。運よく3店舗目で見付けたのですが、残り一冊という状況。しかも傷んでるのね。悩んで悩んで、もしここを逃したら次どこで出会えるかわからない。思い切って買いました。

さて、表紙は音楽がテーマなのか、みな楽器を手にしています。『じょしもん』美々はトランペット、ネコ太くんはタンバリン。朝倉さんもトランペット。『パドラーズハイ』ゆーゆはホルン。そして『レーカン!』天海さんは — 、ええと、なんだろう。よくわかりません。

『レーカン!』は、天海さんの携帯電話の話で前後編。前編が友人たちとの交流、後編が幽霊たちとの交流って感じ、うまくわけられて、それぞれの面白さが際立っていました。前編においては、天海さんの浮世ばなれした様や心霊写真ネタ。あの小川さんの怖れきってるところとか、実にいいですね。しかし、死に掛け人形ならぬゾンビストラップは平気なのに、心霊写真は駄目なんですね。そして後半の、あの通り魔殺人現場の地縛霊の人、あの人との交流、あるいはあの猫との攻防、実によいですね。また井上とのコミュニケーション、これもよかったです。なんのかんのいって、井上はいい人だなって思いますよ。

『天文むすめ』は、ヒロインすばるが運動部助っ人で大活躍って話。ちょっと天文ネタは少なめなんですが、冒頭の精密機器だと慌てるすばるやら、赤道儀のこと、これくらいですかね。けど、こうして天文についてのこと、押さえられてるから、ちょっとくらい脱線しても大丈夫って思うのでしょうね。今回の話のメインは運動でしたが、昆虫地球外生物説とか、そういうマインドがあるのもいい感じです。ちょいトンデモあり。そして部員思い、なのかな? そんなすばるもいい味出していました。

『はなな大増刷』、面白いです。デジタル導入の話からはじまって、昔描いた漫画の話に飛ぶ。黒歴史とでもいったらいいのか、封印したい過去であるのだけれど、それでもちょっと見てほしい、読んだら感想も聞きたい。人情っていってもいいんでしょうか。相反する感情のせめぎあい、すごくいい。そして思い出語りもすごくいい。Gペンの話ね、まる描く練習とか、ノートとったりはしなかったけど、似たようなことやったものでした。まあ、私はそれ以上漫画の方には向かわなかったんですけれど。しかし、学生のころに好きで打ち込んでたものがあるっていうこと、振り返るのは恥ずかしい、身悶えすることもあるけれど、でも同じ時期を共に過ごした人とは懐かしく思い出し語りできる。そうした様子、すごくよかった。私にも伝わってくるものがおおいにありました。

『でり研』、これはいいですね。学園祭の風景。南先輩が開いているバー。ああ、これは魅力的。思えば私の通ってた大学では、教員主催のぼったくりバーが毎年出店していて、あれは本当に楽しかった。こういう、ちょっとした趣味性の強い店、いいですね。私が学生なら、絶対にいくだろうと思います。さて、ぼったくりバー南にて、大仏くんの過去話。アニメの話はちょっと笑ってしまいました。一応ひととおりはわかるのですが、浦飯屋の最後のがわからない。大仏俺をののしってくれ、じゃないだろうっていうのはわかるんですが。しかし、この罰ゲームっていうの、こたえるでしょうね。浦飯屋の共感もなかなかのものですが、期待して裏切られる。この期待というのが、自分が勝手にしたっていうんじゃなくて、期待させられた、っていうのがなおさら状況をきついものとしています。しかし、こういう話をできるっていうの、皆、いい関係を築いているじゃないかって思えて、すごくよいです。ちょっと前には、なんか困った人だなとしか思えなかった浦飯屋も、なんだ、いい人じゃん、ちょっとアレなだけで。そんな感じ。登場人物それぞれに、ちょっとあれで、けどなんかいいやつじゃん、そう思わせるものがあって、大仏や浦飯屋、男性陣も憎めない。いいと思います。とてもよいと思います。

  • 『まんがタイムジャンボ』第16巻第12号(2010年12月号)

2010年11月3日水曜日

『まんがホーム』2010年12月号

『まんがホーム』2010年12月号、昨日の続きです。

『ももかアンコール♪』、このところ大変よいですよ。庶民的女の子? ももかが新人アイドルとして頑張ってる。その状況はおそらくはリアルのそれとはかけはなれているだろうけれど、いや、かけはなれているだろうからっていった方がらしいかな? ももかの素朴な頑張りが面白いって感じられます。今回はブログ、サイン会で答えても答えても同じ質問もらったりするところ、こういうシンプルで素直なのが好きです。で、最後の弟海くんのコンピュータのいろいろ、これは実にいい。秘密フォルダには触れないからっ。ああ、なんていいお姉さんだろう。ほんと、仲のいい家族。見て面白く、けど面白いだけじゃないなにかがある。よいです。

『横浜物語』、ついにお隣さんの正体が判明。いやあ、思ってたよりも普通。というか、もっと猟奇的だったりするのかななんて思ってたのに、うわ、別になんてこともない、本当に普通の人だったのか。驚きました。主人公、南のことを知ってるみたいだった。だから、ここに入居を決めたのも、彼をこっそり追ってだったりするのかとか、いろいろ思ってたんですが、いやあ、彼女がもとから住んでたところに南が引っ越してきた、偶然の話だったんですね。驚きました。けど、こうして彼女が自分のことを南に話したことで、なんだか話が動きそうじゃありませんか。南さんは固まってますけど。そのラストのコマの、ありゃりゃっていう感想、これがちょっと面白みあってよかったです。

『もうすぐクリスマス!!』、ゲストです。クリスマスを目前としたサンタクロースの話。新人こゆきは日本の人。クリスマスを冬至というんだけど、いや、この認識は実に正しいですよね。クリスマスはもともと冬至のお祭りだったんだから。というわけで、冬も底を打ち、これから太陽が再び力を取り戻すクリスマスには、太陽をイメージさせるオレンジ色のカボチャや黄色の柚で祝いましょう。しかし、この日本的冬至を強引にクリスマスにからめようとするヒロインの言動、これ、なかなかに面白かったです。プレゼントのクマ、あの絵面のインパクト、これは実によかったです。一発攻撃して逃げる、一種ヒット&アウェイ的な芸風だなって思います。

天子様が来る!』。冒頭に森ガール。その定義に続いて、森で生きていけるかは無関係とくる、そのセンスが大好きです。ちょっと小粒のコメントの連続になっちゃうけれど、「キャッチコピー」、これ相手に自分の得意がばれちゃいますよね。だから玉虫色でむしろ正解……、いや数合わせだから強くはないのか。切ないなあ。「見てみたい」ですが、女王様を前に男にビシリバシリとやられるプレイは正直ありだと思います。いや、実際こうして楽しんでらっしゃる方は多いんじゃないかと思うんですよ。知りませんけど。でもってユキジ。最後にネタがフォローされる。この引っ張り具合が実によいです。ほんと、配分も含め、実にうまいって思わされます。

  • 『まんがホーム』第24巻第12号(2010年12月号)

引用

  • 分茶「ももかアンコール♪」,『まんがホーム』第24巻第12号(2010年12月号),116頁。
  • 安堂友子「天子様が来る!」,同前,151頁。

2010年11月2日火曜日

『まんがホーム』2010年12月号

『まんがホーム』2010年12月号は今日発売です。表紙は、焼き芋がテーマみたいですね。『らいか・デイズ』、『東京!』&『学園カラーズ』、『夫婦な生活』、そして『椿さん』、みな焼き芋を食べているんですね。よく見れば雑誌の左肩にも焼き芋の意匠があって、なるほどそうした季節であるのか。まさに風物詩、とりわけ漫画に見られる風物詩ってやつだと思います。

『センセイあのね?』、実にいい感じです。ドキドキゲスト第3回。いやほんと、石沢先生に胸きゅんのつぐみさん、見ているこちらがドキドキ。これは実によいですよ。先生を意識しながら、これまでそれを恋愛的感情と意識していなかった。そんなつぐみが、自分の胸の痛みを思い、そして先生のことにむきになり、ついには気付いてしまうっていうんですね。その、気付くまでのつぐみの表情のいろいろ、面白く、可愛く、つぐみの友人真理さんじゃありませんが、これは非常によいものでありました。いや実際、すごい威力でした。

『ミライカナイ』もいい感じ。この漫画、すごく安定してきたなと思うのは、私が馴染んだから? いや、漫画自体がよくなってるっていうのもあるのだと思うのです。フェイを意識してしまうヒロシ。薄着はドキドキしちゃうから、もっと服を着せよう、無理に理由つけて、そして買い物いってという、この展開は面白い。買い物においては、定番の展開ありまして、男と女の買い物観の違い。長い買い物に付き合いきれないという、ヒロシの気持ちはよくわかる。でも、それじゃ駄目なんだろうな、きっと。ご近所さんに溶け込んでいるムー、このへんもすごくいい。で、着せ替えムー、私は1番目がよいかなって思います。

『学園カラーズ』ってlivedoorデイリー4コマに掲載されてたんですね。ノリ、感触としては『東京!』に似てますね。女の子たちの日常情景。ちょっと変わってる? そしてつっこみ。ひとつテーマを決めて、それを巡る言説、なかなかに面白かったと思うのは『東京!』のノリに慣れてるから? いや、それだけではなかったと思います。『東京!』は、今回なんかは特にそんな感じでしたが、たまこが心配性というか内気でちょっとネガティブだったりすることもあってか、しんみりとしたり、またそこからの復帰、なんだかしっとりとした心情描いたりすることもありますけれど、『学園カラーズ』はもっとドライって感じがしました。それは、メグミやちよの性格、残るふたりもそうなのかな? それが関係してたりするのかなって感想です。

『あなたなんか大嫌い』、非常によいです。女として女子高に通っているちきり。その秘密を知っているのは、もも、ひとりだけ。ちきりに振り回されるもも、ちょっと困って、いろいろな表情を見せてくれる、そうした様子を楽しむのがきっとよい漫画です。いえね、ちきりはちょっと意地悪、その意地悪っていうのが、好きな女の子の気を引きたいっていうようなのではなくって、もっとこう、手玉にとってるっていうような感じなんですね。実際なぜこの学校にくることとなったのか。性別まで偽って? どこまで本当のことなのか。それがわからない。ちきり優位の状況を前に、ももと一緒にサスペンドされる感覚。それがたまりません。

  • 『まんがホーム』第24巻第12号(2010年12月号)

2010年11月1日月曜日

太陽系亞種音

P-MODEL: Ashu-on (Sound Subspecies) in the solar system私は、ファンというにはおこがましいほど、この人についてよくわかっていないのだけど、それでもなぜかファンクラブ、Green Nerveには所属していて、ええ、この人というのは平沢進です。CDやらDVDやら買っている、その程度に好きで、それは著作権についての提言をはじめとする思想的なものにあてられていたから、なのかも知れません。でも、妙に病み付きにさせる音楽、一種宗教的なカリスマのある人だと思うのだけど、それもやはり大きかったのだろうなと、『太陽系亞種音』を順に聴きながら思っています。

『太陽系亞種音』っていうのは、P-MODEL時代の音源をまとめてみました、っていう、ちょっと豪華なCDセットです。16枚組、ファンクラブ会員には17枚目もついてくるよ。そう、私がGreen Nerveに入会したのは、こういう特典に期待したからっていう側面もあったのですね。

P-MODEL: Ashu-on (Sound Subspecies) in the solar system

こういうバインダーに入ってくる。

P-MODEL: Ashu-on (Sound Subspecies) in the solar system

開いて見ると、なんだか妙に凝ってて面白い。

私が平沢進を知ったのは21世紀に入ってからのこと、ブックマークを見れば、2006年12月13日に件の著作権がらみの記事をブックマークしている。これが氏との出会いであったわけで、つまり本当にごく最近に知ったのですね。だからもちろんP-MODEL時代は知らない。ヒカシューは知ってたんだけどなあ。なんだろう、この偏った知識。『ファミコン必勝本』のせいです、ってこれは余談でした。

その、知らないP-MODEL時代の音源まで遡るべきかといわれると、いや別にいいんじゃないか。この人の今の音楽を楽しんでればいいのであって、網羅的に聴こうだなんていう考えは、少々いきすぎて不健全に陥る一歩だよ。そんな気もしていて、だからせっかくファンクラブにも入っているというのに、なかなか『太陽系亞種音』の注文には踏み切れずにいたのでした。なんせ、高いしさ。けれど、この膠着状態がついに打ち破られる日がきた! というのはバインダー版の受注が締切られることとなったという報をうけて、ああもう生産完了しちゃうのか。だったら、ちょいと思い切ろうかな。そんな気持ちから注文してみたら、通っちゃったんですね。

到着したのは昨日。17枚のCDはiTunesに取り込むだけでも一仕事で、それを終えて今、少しずつ聴いているところです。初期のころ、といっても今聴いてるのも初期だと思うのですけど、ピコピコという電子音が目立つなと思っていたのは本当に最初のうちだけで、癖のある、けれどどこか病み付きにさせるメロディ、フレーズ、その連呼にどんどん引き込まれていって、今、普段聴いている平沢進の音楽とはやっぱり違うのですが、しかし間違いなく平沢進の音楽である、そう感じさせる核、個性を見付けだしてしまうのでした。そして、『Heaven』にまで至れば、もうそれは慣れた平沢進にほかならないなと思う、って、それ3枚目の1曲目じゃないか。いやまあともあれ、まだ半分も聴けていない。その全部を聴き終えるのはいつくらいになろうかな。先は長そうだけれど、楽しみな時間であるのは確かです。