2018年8月12日日曜日

タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら

 Twitterで話題になっていたのでした。スプラッタムービーで、わりと血みどろな場面もあるのだけれど、基本はコメディ。殺人鬼なんていないのに、勝手に疑心暗鬼になって次々命を落としていく若者たちの姿が、凄惨なんだけれど、同時に笑ってしまうという、気持ちの置きどころが微妙な映画。おかしいって、面白いって、そういうtweetsをいくつか見たものだから、こいつはちょっと見てみたい。調べてみればHuluにもNetflixにも入ってるみたいだから、ようし、いっちょう見てやるか。見たのであります。

確かに面白い映画でした。

バカンスに訪れた大学生たちが殺人の因縁のある土地で怪しげなふたり組と出会うという、いかにもスプラッタムービーによくある導入が語られて、けれど絶対的に違うのが、その怪しげなふたり組、見場がちょっと悪いだけで中身は決して悪くない、というか、すごいいいヤツらだってことなんですよね。念願の別荘を手に入れてウキウキしていた彼ら。なのに、あんなことに巻き込まれてしまって……。という、ほんと、殺人鬼に間違えられた彼らが気の毒でならない。基本、この映画は大学生視点ではなく、殺人鬼に間違えられるふたり組視点で語られていくものだから、その気の毒さは一層際だって、ほんと、なんでこんな目に……。苦笑と気の毒さが交互におとずれる、そんな独特な感触を持った映画になっていました。

しかし、この設定はあんま好きじゃないなあ、そう思うところもあったんですよ。ちょっとネタバレになりますが、結構核心に触れる、いやこの映画に核心とかあるのか? という疑問もないではないのですが、ともあれネタバレです。できれば、まっさらな状態で映画を見て欲しいから、未見の人はここでユーターンだ!

ここまで問題をこじらせる原因となった彼ですよ。大学生たちの中でも一番のタカ派だった彼。チャド。彼がこの土地にまつわる殺人事件の逸話を語ったことで、皆に疑心暗鬼の種を植え付けることになった。これはいいんですよ。問題は、その殺人事件の犯人がチャドの父でしたという設定。興醒めとまではいかなかったけど、ちょっと残念だったかなあ。この映画は、スプラッタムービーの定型を引いてきて、定番展開を裏切って見せる、そうしたところに面白さがあるはずなのに、結局問題の根幹にはかつての殺人鬼の末裔が! みたいな、定番に落ち着いてしまっているように思えたんですね。どうせやるなら、もしやこいつはあの殺人鬼の息子なんじゃないか? そう思わせておいて、まったくの無関係でした。すべては疑心暗鬼、コミュニケーションの不全、恐怖にかられてパニック起こした末の悲劇でありました、みたいな方がすっきりとしたエンディングになったんじゃないかなあ。いや、あんだけ人死にが出てるんですから、すっきりなんてもんはないかも知れませんけどさ。

チャドの問題は、田舎者に対する差別心とかね、ヒロインに対する恋慕と嫉妬をこじらせたとかね、それだけでよかったと思うんだ。犯罪者の子は犯罪者、そういう偏見を強化しそうなのもちょっとノリにくかったところでした。

他にひっかかるところといえば、とにかく酷い目にあうタッカーですよね。デイルを呼び出すために、切り取られたタッカーの指が送り付けられてくるところとか、あー、本当に気の毒。さすがに面白さよりも気の毒さが優ってしまって、さらにこの人、死ぬような目にあわされますからね。ほんと、可哀そうでならなかったのですけど、いやね、これはまあ許せたんですよ。最後にね、ほんとこれネタバレですからね、最後に、俺の指をちゃんと見つけてくれて繋げてくれたんだ、そういって見せてくれた指がマニュキュア塗られた女の指で、それ他人のやん! つっこみどころで、笑ってしまって、そうだよな、これ、そういうバカ映画だよなあ、それでもう許せてしまった。

ええ、B級映画といったらいいのでしょうか、基本はおバカな映画なんです。ちょっと悪趣味、それが面白い、そんな映画。あんまりいろいろ気にしたりせず、面白がってやるくらいでちょうどいいのだと思います。

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