2013年9月4日水曜日

ぷらいまりィずむ!

 『ぷらいまりィずむ!』、このタイトルはプライマリースクール、小学校に通う女の子たちのお話だからでしょうか。登校班班長のニコちゃんと愉快な仲間たちのワイワイにぎやかなやりとり、それが楽しくて、大変に微笑ましい。主に描かれるのは皆の登下校の風景なんですが、なんか普通に学校にいきつけることの方が少なくて、班長ニコちゃんも大変だなあ、そう思わされるところもあるんですが、ニコちゃんもわりとみんなに流されちゃったりしてますよね。しっかりしてても小学生、ってことなのかも知れません。

ニコちゃん。水橋ニコ、小学5年生なんだけど、一番の年長だからということで班長をまかされてるんですね。妹がいて、新1年生、ココちゃん。まだまだ小さいから手がかかって大変、なんですけど、他の小3や小5も同じくらい、いや場合によってはそれ以上、手がかかるっていうのはどういうことなんでしょう。小3ふたり、亀池姉妹。さゆらは馬鹿でやんちゃで、めいふはというと頭はいいんだけど変に中二を先取りしてて、ふたり揃って困ったことばかりやってくれちゃう。そしてしずのん。この子が極めつけ。いい子なんだけどなあ。天乃川しずの、ニコちゃんのことが大好きで、大好きで、大好きで、なんかヤバい……。ニコのことを、ニコとのことを妄想すると、現実忘れちゃうタイプ。過去のデータと統計駆使して、ニコの行動を予測し待ち伏せる、まさしくできる女であるんですね。こうした個性的というか、いろいろアレな女の子たちが可愛らしくて、ほのぼのというのとはちょっと違うかな? けど、なんだか不思議と見守る気持ちになれる、そんな漫画なんです。

しかし、普段は忘れがちなんですけれど、ニコちゃん、2年前にお母さんを亡くしてるんですよ。それで家事もやって、班長もやって、学校の勉強もやってと、大変な頑張りよう。ところが、いつもいつも明るくて、そうした健気さやら大変やらを前面に押し出すようなことはないんです。それは、不幸に耐える女の子を描こうとした漫画じゃないからなのでしょう。けれど、それだけに、まれに描かれるニコちゃんのそうした側面、それが生きていると感じられて、ご近所の大人たちはニコちゃんのこと、本当によくしてくれるし、めいふさゆらのお母さんもよく見守ってくれている。ああ、この子は愛されてるなあって思うんですね。

自分も子供の時分、友達のお母さんによくしてもらったなあ、そんなことを思い出したりしたのでした。友達の家に遊びにいったら肝心の友達はいなくって、それでお母さんとお話だけして帰ったりとか、そうしたことあったなあって。今から考えたら、よくよその子の相手をしてくださってたなあ、なんて思うわけですが、あれって、思えば、本当の母以外にも、母の役割をしてくれていた人がいたってことなのかも知れない。そんなことを考えたのは、ニコちゃんとめいふさゆらのお母さんを見て、ニコちゃんのそばにはもう本当のお母さんはいなくなってしまったけれど、また別の母として、めいふさゆらのお母さんがいてくれている。もしかしたら、他にももっとそういう人がいるのかも知れない。子供というのは、こういう風に、ひとりの親だけでなく、地域や友達関係が結び付ける、多くの父や母がいたりするのかもなあ。自分の昔を思いながら、そんなことを考えたのですね。

とはいえ、この漫画はそうした社会の教育力、みたいなものをテーマにしたり、ましてや湿っぽさを売りにしたりするんじゃなくて、思い付きで行動してみたりする子供たちによるコメディ。しっかりしてるのニコちゃんだけ! みたいな中、それでも皆で一緒に行動していく面白さ、楽しさであるんですね。いやもう、みんな可愛くてですね、めいふとか、もうもったいないくらい! ほんと、この子ら大丈夫かな? そう思いながらも、その子のありたいようにあろうとする、そうした姿を見守りたくなる、そんな漫画であるんですね。

  • パルプピロシ『ぷらいまりィずむ!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2013年。
  • 以下続刊

0 件のコメント: