2008年3月29日土曜日

雅さんちの戦闘事情

  この人は設定を作るのが好きな人なのかなあ、きっと作らないでは気が済まないんだろうなあ、みたいなことは『魔法の呪文を唱えたら』で書いた時にもいっていましたけど、どうやら設定を作るのではなく見るのも好きでいらっしゃるようです。後書きにて曰く、僕は単行本の巻末にオマケとかたくさんのってるのが好きなのでとのこと。掲載されたのは設定資料集的なものだったのですが、ああ、確かにこういうの好きです。設定資料というか、こぼれ話というか、こういうの読むのって確かに楽しい。制服のラインが地味にきついとか、そういう話、大好きです。

『雅さんちの戦闘事情』も第2巻に入り、内容も第二部に移りました。第一部では巨人と呼ばれる謎の敵を相手に戦う、ちょっとエヴァンゲリオン的な匂いも強い展開でありましたが、第二部に入ってからは戦いという要素は薄くなり、ともない雅さんちの影も薄くなり、すっかり女巨人のほのぼの生活ものになってしまいましたとさ。一部のころの雰囲気、戦いの中にどたばたとしたコメディをやり、最後に必殺技で締めるというのが好きだった人には、ぬるすぎる、こんなん駄目だという人もあるかも知れませんね。けど私は今の状況、結構気に入っています。主人公が出ないこともネタにしつつ、むしろそういった設定、枠組み無視するように、楽しんでキャラクター動かしてますといったようなのりがいいなと、そんな風に思っています。

でも『キャラット』本誌では、いよいよ話が動きそうな気配を見せているから、今のほのぼの状況は押し流されてしまうのかもなあ。これはストーリーを持つ漫画の宿命なんでしょうが、物語というものは終わりに向かおうとする力を内部に抱えているから、いずれ動かないでは済まないわけで、それに読者も動くことを期待しますからね。ほのぼのは停滞を好むみたいだけど、物語はそうはいかない。だとすると、作者はこの漫画にどういう落ち、決着をつけようと思っているんだろう、それが気になります。

敵方があんまりに描かれすぎちゃったかなって思うんですね。敵は敵として悪辣なまま、あるいは不明なものとしてあれば、いなして、しばいて終わりなんでしょうが、ああまでほのぼのに、いいやつに、愛すべきキャラクターとして描かれてしまうと、情も移るわけですよ。それで戦いに移行するというのはつらいなと。これがコメディではなく、強烈にシリアスなものならよかった。けどなあ、つらかないかね。なにしろ作者が漫画の中で、みんななかよし完結をネタにしてしまっているから、いくらなんでもこれは使わないだろうなあと思うんですが。といったわけで、この先に関してはちょっと期待です。

でも、正直私はこの作者にストーリーの展開うんぬんという要素は求めていなかったりします。これまでも、今も、これからも多分そうだと思うのですが、だとしたらなにを求めているのかというと、まさしく今が楽しければいいという超ショートレンジのノリの面白さです。私は、この人の漫画は、描かれるものの中に楽しみの軸がきていないと感じていて、じゃあどこに軸があるのかというと、描かれる枠組みを少しそれた外側、取り巻く周辺、です。キャラクターやストーリーといった本来の内部に対して向けられる視点、本来なら外部にあるべき主張が非常に強くてですね、ある意味内輪受けなんです。外部的なものを積極的に取り込みながら、その時ならではのボケ、突っ込み、かき回しをやっている、それがなにより面白いと感じるのです。だから、この漫画の外部的視点と一体化することをいとわないなら、きっと楽しめる。そういった読み方が気持ち悪いという人にはきっと耐えられない、そういう漫画なんではないかと私は思っていて、だから私がこの漫画のはじまった当初、どうにも受け付けなかったのは、その取り込まれることを嫌がったからなのだろうと思っています。

この漫画は、内に外部を導入することで面白さを生み出していると私は思っているから、本来の内部に対してはそれほどの期待をしていないのです。さらにいえば、この漫画を取り巻いている本当の意味での外部、他の漫画との交流なんかも面白さを生み出す要素になっていると思うから、雑誌で読んでいない人は面白さを幾分減じられた状態で読むのだろうなって思って、そうだとしたらちょっと残念ね。けどこれに関しては、『きららキャラット』を読んでいない私の感想はわからないわけだから、本当に面白さが変わるかどうかは不明。いや、きっと私は内輪に入れないという気持ちのために、忌避したんじゃないかなあ。そんな気がします。

なお、白状しますと、私がこの漫画を気にしはじめたのは、『火星ロボ大決戦!』にて突然現れた鬼八頭ガッカリ!なるフレーズがきっかけでありました。さらに加えて白状すれば、その頃私は、鬼八頭と書いてキハットウと読んでおりました。キハットウガッカリ。正しくはオニヤズガッカリです。

  • 鬼八頭かかし『雅さんちの戦闘事情』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 鬼八頭かかし『雅さんちの戦闘事情』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
  • 以下続刊

引用

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