2007年5月16日水曜日

ヘブンズゲイト

  Amazonのおすすめというのは実に馬鹿にできなくて、それはあるいは言い換えれば、人の読書傾向というのが似通っているということの証拠でもあると思うのです。だから私はたまにはおすすめをざっと眺めて、本から本、CDからCDへ興味の派生する様を見て楽しんでいます。それはあるいは視野を広げるためのきっかけになってくれて、いや、広がるよりもむしろよりディープになるといったほうが正しいかも知れません。さてさて、ずいぶん前のことであるのですが、門井亜矢の『ヘブンズゲイト』がお勧めされていたことがありまして、実をいいますと、私この人、わりと好きです。とはいっても、漫画家としてのこの人を知ったのは『まんがタイムきらら』に連載されていた『天然女子高物語』が最初で、しかも最初はほぼスルーしてた。でもね、結局は単行本を探して買っちゃってるんですから、なんのかんのいって好きなんです。

 門井亜矢は18歳未満はできないゲームの原画を描かれた人だったと記憶しています。いや、こういういい方はよくないよね。以前、知人からPC98を貰ったときに一緒に『下級生』も貰えまして、だからもちろんプレイ済み。ええと、クリアはできませんでした。正直、あのゲームなにをどうしたらいいのか、全然わからんのです。だから未クリア。なにより一年は長すぎるよね。だいたい夏あたりでへこたれて投げ出すんですよ。とかなんとか、泣き言ばっかりいってるのもあんまりに情けないから、新しいハードでプレイできたりはしないかなと思ったら、Mac版しか買えないみたいですね。微妙だなあ。プレイできる環境はあるけど、このために貝殻iBookを引っ張り出すのも億劫に感じます。いや、Pantherからクラシック環境を持ってくればいいのか。

ともあれ、門井亜矢の描く絵はすごく魅力的であると思うのです。というように思っていたから、私はあえて抵抗して『天然女子高物語』の単行本を買わなかったんです。買ったら負けだと思ってた。けどさあ、読んでたらわかるんですが、絵だけじゃなくてキャラクターも魅力的なんですよね。別にこびてるとかそういうわけではないんですが、けれどすごくチャーミングと感じます。この魅力というのは、一種舞台裏の魅力ではないかと思うのですが、人は他人の前で多かれ少なかれ演じて見せて、よりよい自分、魅力的な自分を演出して見せる。門井亜矢の漫画は片方でこの演出された側を見せ、他方では裏側、地を見せる、こういったところが私には強く働き掛けるのだと思います。

『ヘブンズゲイト』の魅力もやっぱりこれだと思う。舞台裏をかいま見ることのできる面白さ。私ら男ではちょいと思わないようなことが描かれていて、はー、女の子の側ではそうなってるのかー、と思わせるようなネタが多くて、面白かったり、勉強になったり、例えばPINKの「ケティちゃんの怪」なんてのはそんな感じ。他にも、女の子同士の和気あいあいとしたおしゃべりなどなど、そのへんはまあえげつない部分はうまく処理されて見えないようになってるんですが、本音っぽく見せて、共感させたり、可愛さ、身近さを感じさせたり、あるいは私ら男からしたら違和感を感じるような部分をぽろっと出してみたり、そういう塩梅が実にうまいと思います。

けど、女の子ばっかりがメインじゃないぞ。そりゃ出てくるのは女の子メインなんだけど、ネタはというとそうしたカテゴリーからはずれていくものもあって、日常雑感ものっぽいのがあれば、ギャグ色の強いものがあり、さらにファンタジー傾向に向かうものもあって、多種多様にして多彩です。この色とりどりは、毎回登場人物も設定も違える読み切り型連載であるがゆえのことかも知れませんが、けれどその次々と表情を変える趣向装いは悪くないですよ。なにげなく手に取って、どこからで読みはじめて、気付いたら最後まで読んで、頭からまた読み直して、気ままにつきあって楽しめる、いい漫画であると思います。

ところで、巻末にまとめられてるエッセイ。あれも面白いね。エッセイだけがっつり読めたりするとすごく面白いんじゃないかと思ったり思わなかったり、というかこの人の漫画、もっと読みたいんですが、『ヘブンズゲイト』と『天然女子高物語』しか出てないの? だとしたらすごく残念です。

旧版

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