2007年3月24日土曜日

ナツノクモ

 今日は『IKKI』5月号の発売日。先月にも案内しましたように、私の一押しの漫画『ナツノクモ』の最終話が載せられている記念号で、いや、さすがにしんみりとしましたね。これにて終わり。タランテラボードの皆ともお別れ。不器用で、どことなく他人事とは思えなかったトルクのおっさんともこれが最後となって、ただ一言、残念。別れというのはいつだって寂しく、しんみりさせるものではあるけれど、ここ数年の漫画ではこれが一等格別だったと思います。最後まで、一気に駆け抜けたようなラスト。これからの展開を内にはらみつつ、余韻とともに幕の降ろされたその瞬間、ふうと息ついて、空見上げる思いでした。

長かったのか短かったのか。私がはじめて『ナツノクモ』を読んだのは、2005年の10月であったようですね。朝の電車で体調を崩したんだったっけか。職場にたどり着くことができず、途中乗換駅で連絡入れて折り返したんだと思う。その帰り道に寄った書店で買って、それからずっと変わらず『ナツノクモ』のファンを続けてきて、もう一年半が経つのか。『IKKI』の購読をはじめたのは同年12月。単行本のみの時間は随分長かったと思っていたのに、こうして時系列で眺めてみれば、たった二ヶ月ほどしか経っていない。実時間で見ればそれほど長いとは思えない『ナツノクモ』と過ごした期間ですが、けれどこうして振り返る私にはすごく長い時間のように感じられて、それは多分、私がこの漫画を読むときに感じた濃密さのせいなのではないかと思います。

私は『IKKI』を買うときには、まず『ナツノクモ』から読みはじめます。書店の段階でもう待ちきれず、『ナツノクモ』を軽く一読してから購入。帰ってからまた読むという、真っ当な大人ならやらないような読み方をしているのですが、この一読するのにかかる時間が十分とか十五分とか、下手したらそれ以上でしょうね。長いのです。漫画なんていうのは、それこそ軽く読みはじめて、軽く読み終えるもんだと思うのですが、私にとって『ナツノクモ』は軽くはありえない漫画でした。そこには凝縮された時間がぎゅうぎゅうに詰め込まれているかのようで、交錯する人の思い、わだかまる感情も相まって、私はもう上下左右に激しく揺さぶられるようにして読んでいました。登場人物の言葉に揺れ、一挙手一投足にうろたえ、感極まったことも一度や二度ではなく、いい漫画でした。その漫画が今日終わって、ああ終わったと感じながらも、まだどこかしら来月にも続きがあるような、そんな感じもして、それは物語としての『ナツノクモ』は終わったけれど、あのタランテラボードに接続していた人たちの物語はこれから始まるのだろうなという、いうならば開かれた終わり方をしているせいなのでしょう。

特報! 『ナツノクモ』「完結第8集」は7月末頃発売予定とのことです。私はきっとこの発売の日を楽しみに待って、そして買えば待ちきれずにすぐ読みはじめて、いや、それはよしておこう。例えどんなに読みたくてもぐっと我慢して、1巻から一続きに読んでみたいと思います。いっぺんに全8巻を読破するには一日では厳しいかもね。だから、そのためには休みをとってもいいなあと、それくらいに思うまで私は『ナツノクモ』が好きです。

図らずも最終巻は夏に出るんですね。夏の、暑く気だるい空気の中で一夏の物語を読むというのは、なかなかに悪くないことかも知れないと思います。夏の暑さ、息苦しさに物語の熱さ息詰まる興奮を交えて一日を送る。今年の私の夏には楽しみができました。その日の来るのが、今から待ち遠しくてなりません。

  • 篠房六郎『ナツノクモ』第1巻 (IKKI COMICS) 東京:小学館,2004年。
  • 篠房六郎『ナツノクモ』第2巻 (IKKI COMICS) 東京:小学館,2004年。
  • 篠房六郎『ナツノクモ』第3巻 (IKKI COMICS) 東京:小学館,2004年。
  • 篠房六郎『ナツノクモ』第4巻 (IKKI COMICS) 東京:小学館,2005年。
  • 篠房六郎『ナツノクモ』第5巻 (IKKI COMICS) 東京:小学館,2005年。
  • 篠房六郎『ナツノクモ』第6巻 (IKKI COMICS) 東京:小学館,2006年。
  • 篠房六郎『ナツノクモ』第7巻 (IKKI COMICS) 東京:小学館,2006年。
  • 篠房六郎『ナツノクモ』第8巻 (IKKI COMICS) 東京:小学館,2007年。

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