2007年2月24日土曜日

ナツノクモ

 ナツノクモ』、来月最終回。ええーっ、なんだってー。いや、本当。実は、この流れはすでに先月に予告されていて、前回の次回予告が次回、衝撃のエンディングへ……!! ええーっ、ちょっと待って、プレイバックプレイバック、いやほんと、今の言葉プレイバックやっちゅうねんとばかりに取り乱してみたりしたんですが、確かに今月号を見てみれば来月で最終回であるようです。次号、最終回!! ううー、来月で終わっちゃうのかあ。正直、今の流れになった当初には、いよいよこれからがクライマックス、種明かしだというように感じて期待をどんどんと膨らませていたものだから、このあまりに突然と感じられる最終回の告知には戸惑いが隠せないというのが正直なところです。

でも、ここ数回はすごく緊張感に満ちていて、読んでいてわくわくしたりはらはらしたり、息詰まるという表現が実にしっくりくるというような展開が続いていたのですが、実はこれが最終回に向かってなだれ込もうとする怒濤のラッシュであったのかと思うと、ほんと、後一回で充分に語りきれるのだろうか、そんな不安も感じないではないのです。第2巻の後書きなんかを思い出してみればですよ、第1話は実にガウルとミカオを助けるところまで描く予定だったらしいところが、第2巻に収録されている第9話時点ではまだガウルとミカオ編は終わっていないというのですから素晴らしい。こういう、情熱に突き動かされるままに広がる物語世界みたいなのが見たいと思っていたものだから、その広がりが期待できそうな状況を前にして終わるということが無性に残念と思われてなりません。いや、本当、無理に冗長にするのでなく、自然な感じで、後半年くらいは膨らませられたと思うのですが、けどあえてそういう手段をとらなかったのには理由があるのでしょう。今は、静かに最終回になにが語られるかを待ちたいと思います。

しかし、実際にここ数回は怒濤の流れであったと思います。これまで丁寧に、むしろ余裕を持って語られてきたと感じられるボード上の物語であったというのに、最後の最後、これでどうなるという詰めまできたところで、一気に流れが変えられてしまった。その転換の鮮やかさに私はうなって、こうきたか、じゃあこれからどうなる、どうもっていくと、終わりを予感しながら楽しみに毎月を読んできて、毎回の揺さぶりっぷりにもうめろめろ、もっともっと揺さぶって呉れい、とばかりに飢餓感を募らせるその展開の妙は、改めて『ナツノクモ』の良さというのを再確認させてくれたと感じています。

けれど、正直なところをいうと、私はまだもう少し振り回して欲しかったと、そういう風に思っています。だから、来月号の『IKKI』は、丸ごと『ナツノクモ』でもいいと、いや、丸ごと『ナツノクモ』がいいと、そんなわけのわからん無茶を思ったりして、けど、本当に最後の一回、どういう風に運ぶのか、私のこれまで心を重ねて、その一挙手一投足、心の揺れ動くたびたびに一喜一憂してきた、漫画の中のネットの向こうの愛すべき人たちが、仕合せな未来を手にすることができるのか。さまよっていた彼らの思いの行方の描かれることを、心から楽しみに来月を待ちたく思います。

  • 篠房六郎『ナツノクモ』第1巻 (IKKI COMICS) 東京:小学館,2004年。
  • 篠房六郎『ナツノクモ』第2巻 (IKKI COMICS) 東京:小学館,2004年。
  • 篠房六郎『ナツノクモ』第3巻 (IKKI COMICS) 東京:小学館,2004年。
  • 篠房六郎『ナツノクモ』第4巻 (IKKI COMICS) 東京:小学館,2005年。
  • 篠房六郎『ナツノクモ』第5巻 (IKKI COMICS) 東京:小学館,2005年。
  • 篠房六郎『ナツノクモ』第6巻 (IKKI COMICS) 東京:小学館,2006年。
  • 篠房六郎『ナツノクモ』第7巻 (IKKI COMICS) 東京:小学館,2006年。
  • 以下続刊

引用

  • IKKI』2007年3月号 小学館,484頁。
  • IKKI』2007年4月号 小学館,492頁。
  • 篠房六郎『ナツノクモ』第2巻 (東京:小学館,2004年),217頁。

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