一般に流布される自閉症のイメージというのは明らかに偏っていて、というほどに私は自閉症について知っているわけではないのですが、けれどそれでも自閉について語られるときには、ある一定の傾向の認められることが多いように感じています。そこには多分に誤解が含まれており、内向きにこもる傾向を自閉症と例えるなど、明らかに知られていない、自閉という言葉に引きずられるままに誤って捉えられている。そんな風に感じています。けど、仮に名前を変えたとしても、精神分裂病が統合失調症に、痴呆症が認知症となったように、自閉という語を避けて違う名前を使うようにしたとしても、おそらくは大きな成果は得られないのではないかと思います。結局はその病気について知られていないことに根ざす問題なのですから、また違う誤解やなにかが生まれるのではないかと、そんな風に思うのです。
私は特に自閉症について深く調べたりしたことがあるわけではなく、主に大学在学時に受けた心理学の授業で得た知識がベースとなっており、そこにいくつかの本やなにかで得られたものが加わった程度の、一般レベルにとどまる知識しか持っていません。ですが、そんな私に大きな意識の変化を迫ったのが、パソコン通信での自閉症者との出会いであした。彼もしくは彼女は自身をサヴァンあるいはアスペルガーと説明し、非常に高い数学の能力やプログラミングの技術を持っていることを説明しました。そして、自身の障碍についても。私たちは他人の心、気持ちの動きがわからないので、自分が見、知り、思ったことをストレートに発言することが往々であること、相手の欠点や落ち度であってもずけずけと、なにしろ事実を事実に即しそのまま話すわけですからずけずけととられても仕方がない、話すことで怒らせることもままあるのだが、私にはその相手の怒る理由がわからないのだと、そうしたいろいろを教えてもらえました。私の自閉症に対する理解は、彼彼女との文字越しでの交流で、著しく進んだと思っています。
けど、私はたまたまラッキーだっただけで、自閉症者との出会いを持たない人も多いわけで、そうした人が自閉症についての理解を深めるには、やはり本であるなど、そうしたメディアの力を借りるのがよいのではないかと思います。私がはじめて読んだ自閉症関連の本はドナ・ウィリアムズの『自閉症だったわたしへ』で、この本には続編も出てるんですが、残念ながらそこまではまだ踏み入れていません。気付いたときには、もう何冊も出ていたんですね。二冊くらい読めよ、って感じもするんですが、そうかたった二冊か、読めますね。余裕ができたら、揃えて、一から読み直してみようかと思います。
本よりも漫画が優れていると感じるところは、なによりも読みやすいところ、イメージが絵によってもたらされるため、読者がより具体的に状況を把握することができるところ、そして文字によって論理的に説明することもできるというところだと思うのですが、『この星のぬくもり』においてはそうしたメリットが十全に活用されていると感じます。状況は主に絵という漫画的手法によって、内面は淡々と語られるモノローグによって伝えられることで、その時起こっているできごと(目に見えること)と自閉症者の内面で起こっていること(目に見えないこと)が、どれほどにかけ離れているか諒解することができます。彼らがパニックに陥っているとき、彼らは極度の怯えや圧迫感に支配されていることがわかる。興味を持ったものにまっすぐに向かう行動があるために、どういう状況が引き起こされたか。こうした状況はこれまで多くの自閉症者が説明を続けてくれたおかげで広く理解されるようになってきたものの、過去においてはまったくの無理解による悲劇的な決着がなされることがあまりに多かったように思います。多かったという根拠は、私の出会った彼彼女も結局は場から排斥されてしまったからという、そういう事例に立ち会っているからで、そしてそうした例はこの地上のいたるところで生じているに違いないと感じたことに起因しています。そして、この漫画にも、他の自閉症に関する事例の紹介においても、無理解に発する悲劇的な状況が語られることがあまりに多いのです。
『この星のぬくもり』が文庫で出ていたので、買って、読んで、取材協力に名前のあがっている森口奈緒美という人がモな〜Qという名義で活動されているミュージシャンであると知って、驚きました。というのは、私は以前テレビでモな〜Qの活動を見たことがあったからで、気になっていたものですから、思いがけないところに繋がりを見つけてちょっと喜びを感じました。
- 曽根富美子『この星のぬくもり — 自閉症児のみつめる世界』東京:ぶんか社,2007年。
- 曽根富美子『この星のぬくもり — 自閉症児のみつめる世界』東京:ぶんか社,2004年。
- 曽根富美子『この星のぬくもり — 自閉症児のみつめる世界』東京:ベネッセコーポレーション,1997年。
参考
関係ないけど、私も36点でした。
自己診断テスト得点計算結果
あなたの得点は36点です。
- 社会的スキル
- 10点
- 注意の切り替え
- 9点
- 細部への注意
- 7点
- コミュニケーション
- 5点
- 想像力
- 5点
閾値を越えています。
その傾向はあると思ってたから、なるほどねって感じです。
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