2006年7月6日木曜日

MYST

 懐かしいタイトルを持って参りました。昨日、『ICO』において、『MYST』を思わせるといっていましたが、その『MYST』というのはなにかというと、昔Macintosh用にリリースされたアドベンチャーゲームでありました。CGにて描画された美しいMYST島の風景。マウス操作で持ってこの島を歩き回り、また違った世界へと旅立っては戻ってくるの繰り返しで謎の核心に迫るという、まさしくアドベンチャーゲームっぽいアドベンチャーゲームでありました。

流行ったんですよね。『MYST』発売の頃というのは、マルチメディアがブームでありまして、美しいCGに美しい音楽、そして申し訳程度のムービーがついて、それがインタラクティブに操作できる! すごい! コンピュータはここまできたのか! と誰もが興奮した、のですが、時代の進歩というのはすごいですよね。今では誰も『MYST』を見て驚いたりはしないと思います。

しかし、その『MYST』ですが、ただきれいで動くというだけのゲームではありませんで、このゲームの核というのは、主人公が落ち込むこととなったMYSTの書をめぐる謎なのです。ネタバレだけど、古いゲームだからいいよね。失われたページ、幽閉された謎の人物、そして異なる世界……。オープニングからわくわくするのですよ。落下していく男のシルエット。ナレーションは実に渋くて、そしてその落ち行く先はMYST島。自然の中に点々と建造物が配置され、港、プラネタリウム、図書館、塔。そうした仕掛けのそれぞれがすごく神秘的でわくわくした。そうですね。昨日『ICO』においてもいっていました、その舞台が非常に魅力的で神秘を湛えているために、ただその世界に関わっているのだということだけでわくわくできる。ええ、まさしく『MYST』もそうしたわくわく系のゲームであったのです。

とはいっても、『MYST』は洋ゲーであります。謎ははっきりいって難解で、なにが難解といっても、まあノーヒントなんです。しかも、なんでその謎を解かなければならないのかわからない。まったく因果関係もなく配置されたパズルを解かされて、あまりの理不尽さに投げ出した人も少なくなかったといいます。けど、まあ攻略本を見ればいいよね。それに、私の持っていたMacintosh版には、親切にも『禁断のヒントブック』とうのが同梱されていて、しかもこれ封印されているんです。

『ヒントブック』ですが、一体これのどこが禁断なのかといいますと、中に書かれてるの、ヒントじゃないんですよ。ええと、『アンサーブック』っていうべきだと思います。まんま答えが書いてあって、だから一旦封印があばかれると、神秘の島であったはずのMYST島はただ美しいだけのつまらないウォークスルーに化ける……。いや、実はこれ受け売りです。というのもですね、私、未だに封印をといていないのです。つまりノーヒントでクリアしたのですよ。私がこれを買った当時はまだネットには繋いでおらず、ああ、この場合のネットっていうのはインターネットじゃなくてパソコン通信ね、今の人にはきっとわかんないよ、インターネットなんて一般のユーザーが簡単に接続できるようなものじゃなかったんです。だから我々はテキストベースのパソコン通信にて情報をやり取りして、けど私が『MYST』を買ったときは、そのパソコン通信さえまだ一般的とはいえなかった。時代は変わったのだと実感させます。

そもそも、『MYST』の対応するプラットフォームってのがふるってますよね。セガサターンてのはまだしも3DOですよ。すごいよね。本当にマルチメディア黎明期だったのです。Windowsでいえば3.1、Macintoshは漢字Talk7でした。画面は256色、640*480が主流で、それに2倍速CD-ROMドライブがついていれば上等の部類でした。ハードディスクなんて大容量160MB、メモリも8MB程度でしたからね。と、このような決して潤沢とはいえないリソースしか持たなかった計算機上にMYST島は構築されて、しかしその魅惑はどれほどのものだったか。それはきっと、当時の数十倍のディスク容量、百倍のメモリ容量を持った今の計算機上に生まれるもの以上だったと思う。時代が、時代がそれを待ち望んでいたんだ。夢があったんです。その夢をともに、私たちはMYST島をさまよって、今まで見たこともない世界に感動をしたのです。

いいゲームでした。たまにはやりたいかも知れない。出てくるといえばおっさんばっかりという、色気もへったくれもないゲームですが、いや、色気はゲーム自体にあったんですよね。本当にいいゲームでした。

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