2006年7月5日水曜日

ICO(イコ)

  私が『ICO』をやろうと思ったのは夢がきっかけでしたっけね。事故に遭って病院にいった女の子が、帰りの足がないものだから途方に暮れていて、それを私が送っていったというような夢なのですが、静かにただ黙々と手を引いて歩いて……、というような夢だったものだから、妙に印象に残ってしまったのでした。でもって『ICO』。『ICO』は主人公の角の生えた少年イコが女の子の手を引いて、謎の城から脱出しようというゲームです。宮部みゆきがノベライズしたことでも話題になりましたね。けど、私には『ICO』はゲームだけで完結してたから本には手を出しませんでした。きっと私の中にある印象と宮部みゆきのそれとは違っているはずだから、その差異が食い違う違和感を見たくなかったのかも知れません。

『ICO』のよさというのは、徹底的に情報が排除されたところであるのではないかと思っています。主人公イコが何者であるかも語られず、目的はただ城からの脱出のみ。条件は謎の女の子とともに逃げるということだけ。基本的にはアドベンチャーゲーム。各所に存在するギミックを作動させ、扉を開き次の場面へと進むのですが、説明らしい説明がないから、その状況を見て自分で考えなければならない。このあたりは一昔前のアドベンチャーゲームを彷彿とさせますが、謎掛け、ギミックの類いは比較的素直にできているから、たまにつまることがあってもほどなく進めるようになるのではないかと思います。どうしても駄目なら、その時は攻略本を買うということで。

与えられたのは主人公とヒロイン、そして舞台となる巨大な城です。3Dで表現された城をウォークスルーするみたいにして歩き回ることができる。その空間の表現力が豊かなものだから、ゲーム関係なしに歩いて、景色を見ているだけでも楽しい。そうですね。昔『MYST』というゲームがありましたが、雰囲気は似てるかも知れない。アクションでもってクリアしていく『MYST』。両者に共通するのは、世界観を極力説明せず、プレイヤーに感じさせようというところなのだと思います。世界はただただ美しく繊細に表現されていて、その世界の中にもうひとつの私がいるのだと思うだけでわくわくする。『ICO』もそういうゲームなのですね。

けど、あの緻密に描かれた世界だけでは『ICO』は語れないですよね。そう、少女の存在がすごく重要なんですね。『ICO』のゲームオーバー条件はふたつ。一つ目はイコの転落死。二つ目は少女が影に奪還されてしまうこと。後者が秀逸です。少女は基本的に無力で、だからイコが少女をサポートし、群がる(というほどでもないけど)影を倒し、手を差し伸べ、外の世界へと向かうのですが、この手を差し伸べるという感覚がとにかく鮮烈で、すごい。手を繋いでいるといっても、しょせんはゲームのキャラクターが、というだけの話なのです。なのにさ、その手を繋ぐということの重みがコントローラー越しに伝わってくるのですよ。すごい。これはすごい。

人間は存在しないものにさえ心を移してしまいます。結局は映像に過ぎない少女をいつしかいとおしく思うまでになって、手を引いて、その手がずっと離れなければいいだなんて思って……。すごいゲームだと思います。

ところで、昨年末に出て、日本のみならずアメリカでも話題になったゲーム『ワンダと巨像』、これは『ICO』のチームが制作したのですが、これのBestが出たのですね。

買おうと思います。

ゲーム

CD

0 件のコメント: