2006年7月26日水曜日

J. S. Bach : The Cello Suites, BWV 1007-1012 played by Yo-Yo Ma

 このアルバムが出たのは私が学生だったころのことでした。ヨーヨー・マの演奏するバッハ『無伴奏チェロ組曲』それぞれが映像作品としてリリースされて、ちょっとばかり話題になったことを覚えています。『無伴奏チェロ組曲』は私にとっても好きな曲でしたから、この映像作品というのに興味津々で、でもその頃はまだまだ高くておいそれと手を出せるようなものではありませんでした。私はLDプレイヤー保有者だったから、できればLDで欲しいよね。でも高いよね。買えないよね。堂島ワルツ堂でLDを見ながら指をくわえていたものでしたよ。

LDは買えないけど、まあそれはよかったのですよ。映像がつくならつくで、一体どんなものになってるか見てみたい気持ちはは強かったのですが、けれど一番に興味のあったものはなにをおいてもまず演奏です。ヨーヨー・マの演奏する『無伴奏チェロ組曲』。このアルバムが学校近くの店で安く売られているのを見たとき、私は躊躇も迷いもなく買ってしまっていました。

聴いてみれば鮮烈、でした。それもそのはず、私が持っていた『無伴奏チェロ組曲』のアルバムといえばカザルスの盤で、これをスタンダードみたいにして聴いていたものですから、そりゃ違いますよ。時代をえいやっと乗り越えて、ロマンティックの時代から古典主義を飛ばし再びロマンティックに帰ってきたみたいな、そんな時代を一回りしたみたいな話だったのです。

でも、一度古典主義的時代を経験したわけですから、ロマンティックでもそれはもう全然違っていて、カザルスがうなりうめく人間の苦悩と喜びであるとすれば、マの演奏は軽やかに空をかけわたっていくような極めて自由な表現であり、そしてそのうちに情熱を隠している。『無伴奏チェロ組曲』をこれから聴くというような人には、カザルスよりもマだと思います。端正で癖がなく聴きやすい。入門には最適です。

けど、癖がないからといって、薄味というわけではないのです。充分に情熱的だし、ぐうっと訴えてくる力もある。このあたりのバランスはうまくとれていて、やっぱりヨーヨー・マは聴かせ上手だなあとそんな感想を持ったのを覚えています。

さて、実はヨーヨー・マの『無伴奏チェロ組曲』にはもうひとつありまして、1983年録音の盤というのもあるのですね。実は私はこちらは聴いたことがありません。だから、いつか旧録音も入手して新録音と聴き比べたいなあと思ったりしています。とはいえ、私はあっちにふらふらこっちにふらふらしている人間だから、聴き比べの日が一体くるんだかどうだかわからないときています。そしてできれば、映像作品になったバッハも見てみたいものです。こちらは少なくとも日本向けのDVDがリリースされなければ無理でしょうね。いつか日本向けにリリースされる日はくるのかなあ。期待しないで待ちたいと思います。

CD

VHS

DVD (リージョン1 : アメリカ合衆国およびカナダ)

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