購読している四コマ誌『まんがタイムジャンボ』にあろひろしの漫画が掲載されて、私はびっくりしてしまいました。あろひろしってったら、私が高校に通ってたころに(マニア筋に)人気だった漫画家で、いやあ読みましたよ。当時私は貧乏でね、クラブのいっこ上の先輩が漫画をたくさん持ってる人だったので、たくさん貸してもらったものでして、その中に『優&魅衣』があったのでした。
『優&魅衣』はどういう漫画かといいますと、頼りない眼鏡主人公が美少女幽霊や美少女大家の娘に取り巻かれてうはうはという、エロまじりのラブコメでありました(今でいえば『ラブひな』あたり?)。でも、面白かったですよ。なんかはちゃめちゃで、主人公は眼鏡がなくなると獣化するし、大家の娘は鎧(西洋のフルプレート)着込んでるし(いつもじゃないけど)、とにかくめちゃくちゃな設定を振り回して、けどそれが時代だったんですね。面白かったですよ。いきつけの医院になぜか『優&魅衣』が全巻揃ってるんですが、いけば必ず読んじゃいますもんね。
そのあろひろしが送る四コマ漫画が『ボクの社長サマ』。小学生の女の子が社長になりました。主人公の小森青年は社長秘書としてもう大変、といった漫画なのですが、正直、はじまった当初、私は悲しかった。1巻を読んでみればわかると思います。掲載当時はまだ妹ブームが継続中だったのですが、そうしたはやりのネタがそこかしこに採用されていて、それがどう見ても無理しているという感じなのです。今の萌えブームに対し迎合している、そんな感じが充ち満ちていて、かつてのあろひろしの勢いを知っている身としては、悲しくてしかたがなかったのです。
あと、全体にセンスが古いなという感じがしまして、それは絵からも感じるし、キャラクターやギャグにも感じるし、今風の四コマが並ぶ中に浮いているのではないかという気がして、そうしたところも悲しかったのだと思います。これは、もしかしたら、私があろひろしという漫画家を知っているゆえのことなのかも知れません。けど、多分、それは違うと思う。この漫画から感じられる違和感は、特に若い読者には受け入れがたいのではないだろうか、そんな風にも思ったりするのです。
最初の印象というのは後を引くものです。毎月の連載を欠かさず読んでいる私でありますが、果たしてこれを単行本で買ったものかどうか。迷いました。どれを買ってどれを落としたものか、今月は本当に迷って、悩んだすえに『ボクの社長サマ』、購入しました。そしてBlogの記事にせんがために読んでみて、私は自分の不明に気付いたのです。
私はこの漫画を読むときに、漫画自体に向き合うのではなく、過去のあろひろしという印象ばかりに向かっていたのですね。読んでるようで読んでなかったのです。
単行本になって、はじめて私はこの漫画を真っ正面から読んだのかも知れません。面白いのですよ。確かにちょっと昔風かもは知れないけれど、悪くないと思ったのです。繰り返されるギャグも、端々に見られるさまざまな試みも、なかなかに面白かったりするじゃないですか。四コマという不慣れなカテゴリーにおいて、新しいらしさを打ち出そうとするチャレンジに、連載を追っていたころの私は気付いていなかったのでした。
最後にちょっと余談。あろひろしは『シェリフ』という漫画も描いているのですが、結構シリアスだったこの漫画が私は好きだったのですよ。残念ながら人気がなく、早々に終了したらしいのですが、面白かったと思うのですよね。
『シェリフ』が支持されなかったのは、ギャグコメディであった『優&魅衣』との違いが大きすぎたためだったんじゃないかと思ったことを思い出しました。そうですね。この見違いを、今度は私が自らやってしまうところでした。人間、ものを見ようとする目の中に余計な偏見を入れていると、本当に見誤るものだと反省しきりです。
- あろひろし『ボクの社長サマ』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社.2006年。
- 以下続刊
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