2006年4月4日火曜日

サクラ町さいず

  四コマ漫画にはもうつかれちゃいました。次から次に創刊される系列誌。漫画はそのほとんどが単行本化されることなく消えるため、おちおち雑誌を捨てるわけにもいかず、かといってため込むにはあまりに多すぎる量にあっぷあっぷして、こうした状況を見て、私は四コマというジャンルが爛熟に向かっているのだろうなと実感しています。爛熟。熟しきれば後は落ちるだけ。その落ちた後に残る漫画はいったいどれだけあるのかと思うと、そうですね、多分『サクラ町さいず』は残る漫画なのではないかと思います。

なんでこんな不吉な書き出しではじまるのかといいますとね、私がはじめて買った四コマ専門誌『まんがタイムラブリー』における最大の楽しみが『サクラ町さいず』であった時期があったからなのです。時が経れば誌面も変わり、そして読む私自身も変わります。かつてはあんなに好きだったはずの雑誌が今ではそれほどでもないと思う。ああ、なんという心変わりよ。読んで楽しい漫画ももちろんあったのですが、徐々に新鮮味が失われ、今ではすっかり古なじみといった感じさえして、そして雑誌も終わりにさしかかれば、読み疲れ、それほど好きではない漫画の数々、乗り切るべきかここでいっそ閉じてしまうか、けれど最後の最後に『サクラ町さいず』があることを私は知っている。ニューフェイスの新鮮さ、みずみずしさを保ちつつ内容は充実して、『サクラ町』を読みたいという思いが歩きにくい道を歩かせたのです。

四コマ誌にかぎらず、雑誌の最後を飾る漫画というのは大切でして、いうまでもないですよね、読後感を決定するのは大抵こうした漫画なのですよ。だから私にとって『ラブリー』の読後感は『サクラ町さいず』の感触そのものでした。少年少女だった季節にさらさらと吹く風のような軽やかなおかしみ、私は大好きでした。特に初期の雰囲気、あの感覚は、今思い出してもなお格別でした。

『サクラ町さいず』も第3巻まで巻を重ねて、でも面白さは相変わらずですね。ちょっと質は変わってしまったとは思います。けど面白さはなお引き続いて、定期的に四コマなんて読むのやめちまおうかと思う私を引きとどめるのは、こうした漫画なのだと思います。派手じゃない。ギャグにしても小さく細やかなおかしみに収まって、けれどそれでも面白い。私の裾を後ろから引くのは、こうしたささやかな声なのだと思うのです。

『サクラ町さいず』。私がこの漫画を好きなのは、悲しみをうちにはらみながら、決して悲しさを表立たせない明るさで、描かれる人の暖かさで、可愛さで、気持ちよさで、だから私はこの漫画の舞台サクラ町と登場するすべての人が大好きです。この漫画に触れているだけで、なんだか嬉しくなるほどです。

蛇足

KRじゃないのに!?

ひろえちゃん、そして麻子おばさんです。だから、3巻82ページの扉絵なぞは、まさしくこの世の春といえましょう。ああ、もう、可愛いぞ。

  • 松田円『サクラ町さいず』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2004年。
  • 松田円『サクラ町さいず』第2巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2005年。
  • 松田円『サクラ町さいず』第3巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2006年。
  • 以下続刊

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