2010年10月15日金曜日

はなたま

 『はなたま』、好きな漫画でした。御形屋はるか初遭遇となった漫画で、面白いなあ、絵もきれいでととのって可愛いなあ、そう思いながら楽しみに読んでいました。ちょっとどんくさい大学生春日乃空と結びの神さまはなたまの交流が楽しくて、それからはなたまについているふたりの男、太郎丸と次郎丸、狛犬らしいんですが、このふたりも面白くて、いい漫画でした。あんまりにいい漫画なので、はなたまさまとひそかに呼んでおりましたくらいです。

そのはなたまさまが単行本になるって聞いた時には、それはそれは嬉しかったです。掲載されている雑誌はすべて手元に残してあるとはいえ、あまりにも大量にすぎて、探し出して、一から読み直してとか、正直な話、無理です。それこそ、最初のころってどうだったのだろうと思った最終回。読み返したいなあと思っていたから、また頭から読めたこと、思った以上に幼なかったはなたまさまにちょっと驚きながらも、最終話のあの場面まできっちり繋がるもの感じられたこと、とても嬉しかったのですね。

はなたまさま、決定的に好きになったのはあのクリスマスの回でしたっけ。クリームシチューを作る話。家族との繋がり、身近だからこそなおざりにしてしまう? けれど、心配してくれている母の気持ちが伝わって、そしてうまくできたシチュー。その仕掛け、すごくよくできてた。自信のなかったはなたまさまも、うまく母と娘を結ぶことができて、そして繋がる気持ち、それがやわらかに、けれどしっかりと表現されて、ひしひしと感じとれたのでした。いい話だなあって思った。なんだか胸の奥がつんとしてあたたかくなった。この話ははなたまさまという漫画のエッセンス、あふれかえっているなあ、久しぶりに触れて実にそう感じました。

はなたまさまは、うまくいかないこともあるけれど、くじけず頑張りなさいよ、可能性は開かれているよ、そうしたメッセージを押し出すようになって、こういうところもよかったです。繋がることで見えてくること、わかることがある。得られるなにかがあるという前半。後半には、自分自身の望む未来に繋がろうという気持ち、そちらに傾きを持ったという感じなのですね。決して優秀ではない自分、自信なんてかけらもないし。けれど、そんな私は将来なにになるのだろう。なにになろうというのだろう。悩んだり迷ったりしながら、自分の未来を掴みとろうとする。そうした空の様子、それはおそらく人間みなが暮らしの中で感じている不安でもあるのでしょうね。だからこそ、あのラストはよかった。空にははなたまがいる、そしてこれまでに関わってきた人たちみんなもいる。

自分ひとりじゃない、だから大丈夫。

とても素敵なラストでした。

  • 御形屋はるか『はなたま』(まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2010年。

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