2009年4月22日水曜日

『まんがタイムスペシャル』2009年6月号

毎月22日は『まんがタイムスペシャル』の発売日。こうやって買っている雑誌の感想を書いてみると、思いがけず各雑誌のカラーなんていうのも見えるようになってきて、というか、それまではあまりにも酷すぎたというべきなのでしょうが、なんていったらいいんでしょうね、把握できる限界を超えたのか、一体どの雑誌になにが載っているかとか、わかんなくなってましてね、けれど、アンケートを書くようになってから、そしてこうして感想を書くようになってから、それぞれの雑誌の違いというのが、それまで以上に意識されるようになったと思えます。あと、発売日を手帳に書くようになったというのもあるかも知れません。いつなにが出て、それはどんな表紙で、なにが載っていて、それが意識されるだけでも、ずいぶん頭は整理されるみたいです。

『スペシャル』の表紙は、『スーパーメイドちるみさん』。破壊メイドちるみさんをめぐる騒動を見て楽しむ漫画だったと思うのですが、その周辺の人たちの個性もなみなみならぬものがあって、今回は隣のうちのお嬢様、紅林がメインになって、私はこの人が大好きときたものだから、ちょっとしあわせです。大学は演劇部での紅林の役立たずっぷりが、もう言葉に尽くせないほどに魅力を増大させて、自分のなにもできないことに焦り自信をなくしかけているというのに、尊大さを失わないところ。すばらしいお嬢様であります。しかし、自販機にカードですが、ピタパ(関東ではイコカ?)で買える自販機も出てきてるから、将来的には麗子さまのような方も困らなくなるかも知れません。

けど、ちょっと話はそれるんだけど、本当にやんごとないお嬢様っていうのは、想像を絶するほどにすごいらしいですね。朝丘雪路だったと思うんだけど、買い物のしかた知らなかったり、電車に乗るのに切符を買うという概念を持たなかったり、とにかくすごかったらしい。そう思うと、麗子さまはがんばってらっしゃいますよ。缶に入ってるのがジュースであると、ちゃんとわかっておいでなのですから。と、私はとにかくお嬢様を甘やかすのが好きです。ああ、どこかで下僕の募集はしてないものか。

『幼稚園ぼうえい組』は2本立て。押されてるんだなあ。テンヤは好きな作家なので、ありがたいなあと思ったり。話は、鶏最強生物という定番をベースに、子供たちと先生のかかわり方を描いて、しかし新任ながらがんばっている、その様がよいな、そう思える漫画です。しかし、園長先生ってどれほどに怖いのだろう。鶏をおとなしくさせ、初対面を気絶させる。鶏編の一番最後、大落ちはなかなかによかったです。定番といえばそうかも知れないけれど、私には意外と思われて、そしてキャラクターの味付けにもなって、よかったと思います。

はっぴぃママレード。』はお兄ちゃんがむくわれる話。みんなでスパにいく話なんだけれど、眼鏡組はそのままでサウナに入って大丈夫なのかいな。岩盤浴サウナだから? ミストサウナだから? 私は温泉にいってもサウナは使わないのでよくわかりません。『あいどく!』は社長が登場して、あやしい男。行き当たりばったりの行動派だそうですが、けれど社長という人は、特に創業社長は、そういった傾向を持っているような気がします。逆にいえば、そういう人でなければ、会社なんか起こせないものなのかも知れません。『えんれんCafe』は、やさしいから誤解するんですよ? なんていってるけれど、それは結局は相手次第なんですよね。例えば私のようなのだったら、通報されるコースだなあなんて思ったり。やさしさが親切になるかありがた迷惑になるかは、ほんと、セクハラと一緒、紙一重の差のように思います。

ふたご最前線』はすべり台が怖いなんてところからスタートして、たしかに、大人になるとすべり台は怖いです。ぶらんこが下手になるのは、鎖の長さと背の高さのバランスのせいだと思うんだけど、すべり台が怖くなるのはほんとなんででしょうね。昔、子供のころは普通にできていたことも、知らないあいだにできなくなって、それも怖いやらなにやらでできなくなって、そうしたことはたくさんあります。しょっちゅうです。しかし、お母さんの魅力全開でした。

『ゆたんぽのとなり』は吉谷やしよの漫画で一番面白いと思っています。カツオが、すごくシンプルにしか描かれてないのだけど、確かにカツオとわかる、それがなんかいいなあと思っていたら、その話がちゃんと伏線として後に生きてきて、また驚きでした。派手なアクションとかはない漫画だけど、個別の四コマはテンポいいしよくまとまっているし、そして全体を通して描かれる大きな流れもしっかりしているしで、本当に面白いと思います。

えすぴー都見参!』は雪さん中心に動いて、むくわれないふたつの恋ですね。並木が実にいい感じ。そう思うのは、表情が伝える感情の起伏の大きさと、そしてそれを押し止めてしまうという、そのいじらしさのためであろうかと思います。『たまのこしかけ』は、たしか作者の夫がサーバとか沢山自宅に置いちゃう人なんですよね。十条さんのアパートの惨状は、そうした日常から発想されたんだろうな、なんて思ったり。しかし係長の頼りになって、またうるわしいこと。首と胴の繋りがおかしいことなんて気にならないくらいに魅力的です。『なないろレシピ』はベーグルの作り方。あれって、最初に茹でるんだ。知りませんでした。というか、食べたことさえなかったり。以前、ピザを作っていたころにイーストを買ってたんだけど、あれはまだ生きているんだろうか。生きているなら、ベーグルを焼いてみようかな。なんて思ったり。

『4コマの星』が面白かった。抱きまくらって実際に抱いて寝るもんなんだ。カバーだけを飾るものだと思っていました。私は幸い抱きまくらの趣味もフィギュアの趣味もなかったのですが、けれどこうした話を聞く、見るのは面白くて大好きで、そのためもあるのかも知れません。俺の嫁といった定番のネタをうまくあしらった、そうしたところなど見事でした。ところで、初音コスプレのからす丸は、ふたコマぶち抜きにすべきだったと思うんだ。

『ハニーtheバンドガール』は、最近シリアスな話が続いているような気もするけど、そうしたシリアスさというのが、またなんていうんでしょう、青春のころの悩みといった雰囲気を持っていましてね、見ていてなんかよいんですね。でも、危機感から焦ってみたり、それで思いをぶちまけてみたり、そうしたことはいくつになってもありえることなんじゃないかと思う。でも焦ることはたびたびあっても、思いをぶちまけたりはだんだんしなくなるんですよね。本音をぶちまけて、それでも壊れない結束がある、そうしたところがいいんだろうなあ。

『レイさんのお局日和』は連載になったようで、私は結構好きだったので、嬉しいです。ステレオタイプばりばりのお局(っていうけど、まだまだ若い)レイさんがヒロインですが、徹底的に可愛くなったりしないように描かれるレイさんですが、そのからまわりっぷりが楽しいのだと思います。実際、からまわりしている人っているし、それは満たされない自意識やなんかのため、レイさんはその戯画であるのだと思いますけど、ぎすぎすして、嫌味で、しかしどこかに憎めないところを残しているから、本当の嫌な人にはならないのかと思います。いや、それって私がただレイさんのこと好きだからなんじゃないか? その可能性は非常に高いように思います。

『もう一歩恋よ!』は宮部香乃さんを巡る三角関係を描いた漫画で、香乃さんの店に出入りする営業の富本さんと小学生の渡辺純也君。ああ、渡辺君は今回初登場です。っていうか、レギュラー化するのかしないのかはわかりません。はっきりとしない富本さんに、まっすぐに迫る渡辺君、その勢いにたじたじっていう、力関係の微妙さは面白かった。子供の素直さは、いろんな漫画に見ることができますが、その漫画漫画で素直さの描かれかたが違う。そういうバリエーションがよい、つまり渡辺君もまたよかった、そう思います。

『ベツ×バラ』は、年下の先輩別所と新人原田の異性間の友情ものみたいに育っていったらいいなあ、そんな風に思っている漫画です。もしかしたら恋愛的状況がふたりの間に勃発するのかも知れないけれど、実際多少のほのめかしのようなものもあったりするんだけど、けれど異性として意識しながらも、先輩後輩であり、そして友だち、そんな関係がいいなと思っています。

『ポンチョ。』は、実にいい漫画。自分の恋人に会いにいっても、いつもバイトやらなんやらで会えず、かわりに妹のポンちゃんと、猫トメ吉と一緒に遊ぶっていうね、そのわいわいとしたところが実によいのです。ポンちゃんの、むやみやたらと元気なところがいい。カレシのなんかすごくいい人っていうところがいい。しかし、カレシはトメ吉にカメラのシャッター切らせようとしてたけど、それって可能なのか? といいながら、トメ吉なら大丈夫なような気もします。

白衣の男子』は、時にちょっと微妙なところもある、そんな看護師ものですが、けれど私は好き。いつもは粗雑そのものの花形がどたばたとがんばっているんですが、今回はスーパーでスペシャルな伊達、彼がメインになって、ちょっとシリアス、そして解決を見ずに次号に続くのでしょうか。ベタ、王道、紋切り型、どういってもいいけれど、自分の位置を迷う、気付いていなかったことに気付かされて、不安を覚える、こうした気持ちはきっと誰にもあることで、だから気にかかるのだと思います。

『おおつぶこつぶ』は、175cmのおおつぶ、大野原つぐみが可愛い漫画。あるいは142cmのこつぶ、小塚ふみおが可愛い漫画といいかえてもいいかも知れない。背丈、性格が対照的なふたりを中心に据えて、その違いっぷり、かきまわすこつぶ、翻弄されつつもどっしりとおおらかなおおつぶ、その性格の際立つところがとてもいい、気にいっている漫画です。しかし、こつぶの…いやに得意気な顔してる奴が居る、その得意気な表情、あれはとてもよかった。子供っぽいと思わせて、結構シブ目の趣味嗜好。こつぶのこうしたキャラクターが、おおつぶのキャラクターと相乗する。ふたりとも実にいいキャラクターであります。

『瞬け!シャイン』、齢800歳の不老不死OLビクニさんの見掛け倒しネタはいつもながら面白く、定番の攻め、これで開き、ゴノレフで閉じる。それはもう黄金であります。というか、ゴノレフはすごいことになってるな。新聞に社名載っちゃってんだけどねェ…の台詞がもうおかしくておかしくて。確かに社員たるもの、社名を新聞に載せちまうのはまずいわなあ。面白いのはこれら定番ネタだけでなく、単発のネタ、そのシンプルにして切れ味たしかなところ、実に素晴しく、面白い。あの、パヤパヤパパッパで始まる社歌とか、もうどうしようもねえなあ。メロディがあったら、歌っちゃいたいくらいですよ。

『カンヅメコーポのチリー』は、思いもしなかった展開でした。そうかあ、こうすれば八方まるくおさまるじゃんかと思って、しかしいじらしい漫画。いつかまとめて読みたい漫画です。『なでしこ3on3』は、こだわりない、そんな風に見せて、実はそうでばかりでもないのだよとまとめる、よいですね。この人の漫画は、ことこういう傾向で見せようという漫画は、あっさりとした、さっぱりとした味を持ちつつ、心情のしっとりとしている、そんな表情をときに見せる、その塩梅が実によいと思います。『千秋ツーフェイス』は、イメチェンした千秋にもなれました。しかし、この人はどんどんすごくなっていきます。湯気の壁を作る技をマスターするとか、どこからこんなの発想するんだろう。座ぶとんの『田』はありえないというよりも、いい得て妙といった感がありました。『そこに愛がある限り』は、目次横、松山花子のらしさの感じられる、おそらくこれがそのままこの人の別の連載に紛れ込んでいても、そのまま読んでしまいそうな、そうした味のある漫画で、当然私は好きです。人間の自意識、自分を知ってもらいたい、理解してもらいたい、そういう心情っていうのは、時に重荷でうっとうしいものであるけれど、けれど基本的にはいじらしいものなんだな、なんて思ったりしたのでした。

  • 『まんがタイムスペシャル』第18巻第6号(2009年6月号)

引用

  • 吉田美紀子「えんれんCafe」,『まんがタイムスペシャル』第18巻第6号(2009年6月号),42頁。
  • ワカマツアツト「おおつぶこつぶ」,同前,153頁。
  • 安堂友子「瞬け!シャイン」,同前,162頁。
  • 同前,158頁。
  • 柳田直和「千秋ツーフェイス,前掲,180頁。

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