2009年4月27日月曜日

超級龍虎娘

 ちょっと、なんだこれ、むちゃくちゃ面白いな。いや、面白いってのはわかってたんです。雑誌で読んでますから。けど、正直こんなに強烈に面白いだなんて思っていなかった。主人公、春希、彼のうちにやってきた龍と虎の女の子ふたり。個性の違う女の子との同居もの、しかもそのうちひとりは、どう見ても主人公に気があって、しかもかいがいしく家事なんかにいそしんでくれちゃったりして、清楚、可憐、家庭的、おとなしそうで、もう大好き、しかしなんという夢の生活!? みたいにいうと、よくある系統の漫画でありますけれど、この女の子たちのキャラクターが秀逸で、龍楼さん、鞠虎さん、そして従妹の朔美、春希のまわりにいる女の子、みんななんだか一癖も二癖もあって、結構酷いぞ。それこそ、ページに一度は春希の叫んでいる、へこんでいるシーンがあるんじゃないか、っていうようなペースで酷い目にあわされてるっていうね。いったいこれなんだろうと思うくらいなんだけど、それがもう面白くて面白くて、笑ってしまわないようにこらえる顔面がたいへんなことになってしまいました(明日は筋肉痛かも。顔面が筋肉痛なんて生まれてはじめてだ)。いや、もう本当。掛け値なしに面白い。決してわあわあ騒いでるだけの漫画じゃないのに、しっかりとテンションの持続している、それはもう途中で休みをいれたくなるくらいで、しかしそれはどっしり重くてしんどいからとかではなくて、重くもなく軽すぎもしない画面、適度なテンポでぽんぽんと投げ込まれるネタ、台詞、そのバランスのよさが、前のネタにどんどん面白さを重ねていって、もうたまらん、ちょっと休ませてください、でないと笑いをこらえられない、そんななんですね。って、こうして書く手がとまらないくらい。それくらいに面白く、前から好きだったけど、単行本でより以上に、もっともっと、三段階アップくらいで好きになった。いや、とりあえず、いくらなんでももう長いから、ここで改行いれます。

龍楼が可愛いんです。この人が小柄というのは、単行本で第1回読み返すまで忘れてたんですが、それ以外をひとくちに表わすとなると、清楚、可憐、家庭的、おとなしそうで、真面目で、ロマンティストで、性質穏かで、嫉妬深くて、独占欲強めで、怒ると口きいてくれなくなりそうで、一途なのはいいけど、相手にもそれを求める、そんなところがありそうで、気が弱そうで、そのぶん日頃うっぷんを溜め込んで、どうしようもなくなってから吐き出して大荒れに荒れそうなタイプ。それでわりと世間体大事? 自分のイメージ大切にするあまりに、自分も相手もちょっと不自由にしてしまいかねない。しかも最初はあなたにおまかせします、なんて風だったのに、気付いたら有無をいわせない押しの強さで、あらゆる方面を自分のコントロール下におこうとするような、そんな女の子。なんて可愛いんだろう。もう最高だと思います。

この漫画に出てくる女性って、多かれ少なかれこんな感じに、表に打ち出される可愛さがあれば、そのぶん裏にもちゃんと人格が穿たれていて、もうみんな一筋縄ではいかないって感じがひしひしとしましてね、その綱の引き合い。ライバル蹴落としてとまではいかないけれど、春希を中央に置いて、そこで繰り広げられる駆け引きのシビアであることったら、もう実に素敵で、こりゃ勝てねえ。そんな風に思わせるところなど並ではないといったところです。もちろん、ほどほどにやわらげてあるから、痛い、つらい、厳しいばかりではなくて、ほのかに甘い夢なんてのも見させてくれたりなんかもしましてね、本当にバランスがとれていて、うまいなあ、そんな風に思うんです。

女の子のシビアな感情、そういってしまえばなんだか酷いばっかりにも思えるけれど、それはリアル — 、確からしいといってもいいものなのかも知れない。龍楼が、春希にホレてるのかと聞かれた時の答なんかは、すごく納得のいくものでした。漫画のキャラクターであるけれど、そこで動く感情は、現実に私たちが経験するような気持ちを反映しているかのようで、きっと作者はこうした感情の動くところ、機微ってやつを、大切に描こうとしているのだろうなって。その大切に描かれる感情の機微ってやつが、時にはシビアな笑いを生んで、そして時にすごく心に沁みる、そんな人の心のいじらしさを表現して、なんだか泣きそうになる。その涙ってのも、ただお涙頂戴の、泣かせるツボを押さえましたってようなのじゃなくって、なんだか嬉しくて泣いちゃうようなさ、しあわせな感じがあったりするんですよ。

ところで、龍楼というとどうしてもよしだたくろうを思い出してしまうんですけど、それだからこそなおさら好きなのかも、ってこんなこと思ってたら、iTunesが『結婚しようよ』かけてくれたよ! なんだ、もう、気がきいてるなあ!

  • 加藤夕清『超級龍虎娘』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2009年。
  • 以下続刊

蛇足

でも普通龍楼ったら、山下達郎だよな……。

0 件のコメント: