2008年5月5日月曜日

けいおん!

 去年でしたかおととしでしたか、『のだめカンタービレ』が大ヒットしたせいか、やにわに音楽系漫画が増えました。といっても、私の読んでいる雑誌は主に四コマ誌なので、他のジャンルに関してはよくわからないのですが、ともあれ増えたんです。吹奏楽ものがみっつだっけ? それでバンドものがふたつ? もしかしたら忘れてるだけでもっとあったのかも知れないけど、面白いものもあれば微妙と思うものもあって、けど今残っているものはそれぞれによさを持っていて、面白い。最初は微妙と思っていたものも、だんだんに生き生きとして、売りになる部分を打ち出してきたといいますか、あるいは私がなじんだのか、いずれにせよ、これら音楽系漫画、皆がんばって欲しいものです。

そんな音楽漫画花盛りの中、他に先んじて単行本化された『けいおん!』。正直、私びっくりしました。いや、面白くないなんて思ってない。好きで読んでるし、面白いと思った時には、素直にその旨表明してきて、しかしこんなに早く単行本になるとは思ってませんでした。ということは、よっぽど人気があるのか、よほど反響が大きかったのか。大したものだと思います。

この漫画の主人公は、なんだか妙にうかつな平沢唯。といいたいところですが、彼女が前面に出ることが多いだけで、軽音楽部の面々、皆が主人公という感じであります。タイトルの示すとおり、軽音楽部での活動が描かれる漫画で、ですが、だからといってごりごりの部活漫画ではありません。音楽を追求し、更なる高みを目指す! なんていうような雰囲気は皆無にして、日頃は皆で楽しく茶話会、文化祭などイベントが近くなれば慌てて練習に入るというような、そんなのりが学生時分の日常の緩やかさを思い出させてくれるようなのですね。それこそテスト目前になるまで予習も復習もしたことないぜ、ってタイプの人にはなんだか共感できるところも多そうな、そんな漫画であるんです。

なので、音楽に没頭して、ギター弾きまくり、バンドは練習しまくりといったような漫画を求めている人には向かないんじゃないかなと、そんな風に思うんです。いや、だってね、私にしても、お前らもっと弾け! もっと音楽に打ち込もうよ、なんて思うことが多くてですね、漫画のはじまった当初こそはギターネタやなんかも多かったのに、だんだんと出なくなって、最近ではちょっと物足りなさも感じるほど。これはもしかしたら、高校時分吹奏楽なんてやってたからかなあとも思うんですが、なんと申しましても、あの世界、ちょっとおかしいですから。走り込みやらせたり、腹筋だとかトレーニングやらせて、楽器持ったら基礎練習、パート練習、合奏と追い回されて、そいでもってうまくいかんかったりしたら、総括、反省会だよ。あの異様な雰囲気、全体主義臭さとでもいおうか、私はもう大嫌いで、その割に十年くらい吹奏楽に関わっていたんですが、今はもう駄目、近寄れない。とかいいながら、それでもそうした体質気質が残ってるのかも知れないですね。『けいおん!』ののほほんとした楽しい部活見ていると、お願いだからもっとギターネタ増やしてくださいという気になってしまう。おお、いやだ。そういう小うるさいOBが嫌で仕方なかったというのに、気付けば自分がそうなってるのか!

閑話休題。でも、もうちょっと音楽ネタが多かったら嬉しいんだけどな、などと思いながら連載を追っていた『けいおん!』。ところが単行本で読むと、連載で読んでいた時のようなフラストレーションはなくてですね、むしろこれくらいがいい塩梅と感じたのですね。ページ数が限られているところにネタを詰め込めば、どうしてもぎゅうぎゅうの余裕のない展開になってしまいがちですが、もしそうしたテンションで単行本一冊が構成されてたら、読んでしんどい漫画になっていたかも知れません。ある程度の緩さを売りにするこうしたスタイルであればなおさらで、だから連載時に少し薄いかなと思うくらいで単行本は丁度よいみたいです。単行本なら、数ヶ月のスパンで進行する流れにうまく乗って、読み進めていけるわけですから、本当、この漫画に関しては断然単行本で読んだほうが面白さをつかみやすいと、そんなように感じます。

ところで、ヒロインのうち、ギターの唯はレス・ポールのオーナーで、ベースの澪はレフティであるのですが、どうもこれは作者がレス・ポール弾きでかつレフティであるからだそうです。そしてあとがきには、そのうち左利きの苦悩みたいなのを漫画にできたらいいなあとの発言が。ああ、そうそう、そういう美味しいネタをバンバン出してもらえるとすごく嬉しい、特にレフティの苦悩は私にはわからない世界でありますから、がぜん期待は高まりますね。なので、本当によろしくお願いします。

  • かきふらい『けいおん!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
  • 以下続刊

引用

  • かきふらい『けいおん!』第1巻 (東京:芳文社,2008年),118頁。

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