2007年7月15日日曜日

かっちぇる♪

  続き読みたさにたまらず追加オーダーを入れた『かっちぇる♪』第3第4巻が早速届きました。って、すごいね。なんと中一日ですよ。夜十時過ぎに注文、翌朝一番に発送処理、今日昼前に到着って、恐ろしいですジュンク堂書店。在庫のあることを確認して注文してるから当然といえば当然かも知れないけど、それにしてもこのレスポンスはすごすぎる。かくして、想像以上の早さで全巻が揃って、ああなんかすごくたまらない感じ。うずうずとしている。やっとかんといかんことはたくさんあったと思うのに、座り込んで、ざくざく音立てるようにして読み進めてしまいました。そして、そして、やっぱりこの手の漫画はいいわね。青春の光の影とでもいおうか、輝かしく素晴らしい時間が確かに流れていると実感できる。けれど、彼女らはこんなにも楽しげだというのに、私の心の奥にぽつりと黒い染みみたいなのがあると感じられるのはなんででしょう。本当になんでなんでしょう。

もし時間が戻るのなら…… もっといっぱい色んなことすればよかったと後悔しています

私にも人並みに高校時代というのがあって、それはそれなりに部活やったりして、弱小ながらもコンクールに出て、銅賞もらって(吹奏楽コンクールで銅賞は参加賞と同義です)、毎年恒例の大イベント、定期演奏会に向けて頑張ったりした。誰も信じないかも知れないけれど、そんな頃があったのです。土日もなく毎日練習、練習後には演奏会に向けての会議やらなんやら、ときには険悪になったりもしたけれどそれなりに充実していた二年とちょっとだった。だから、私はこうした漫画を見て、ああ私もそうだったって、追いかけたもの、目指したなにかは違うけれど、私も昔は同じだったんだよって、思えばいいのに、胸には空白ばかりが広がっているのはどういうことなのでしょう。私は自分の高校時代に負い目がある。毎年、定演の季節がくれば空白にとらわれて、気をおかしくさせて、いらいらとして、いつしかその空白は感じなくなったけれど、けれど本当をいうと、うっすらと年間をとおして身の回りに立ちこめているって知ってる。気付いているから、私はそんな空虚を払いたくて、こうした漫画を見てはその真っ直中に思いを放つのです。青春の頃よ今一度と、帰らない時間を追想しては、得られなかったなにかを自分の中に探そうとするかのようです。

でも、『かっちぇる♪』はちょっと違う感触を自分の中に残しました。読み終えて、いや、読んでいる最中からもずっと感じていたのだけれど、この漫画に出てくる女の子たちは、私にどこか似ている。自分を持て余している。自分の立つ位置に戸惑っている。特に杉山がそう。杉山というのは、この漫画のヒロインで、バレー部のキャプテンです。なのに、こんなにも自信がなくて、ほんと大丈夫かと心配になるような娘で、けどそんな娘だけど、ちゃんと成長してさ、自分にも譲れないものがあるんだって、自分の居場所はここなんだって、そうはっきりといえるようになったのです。

でも、これは杉山だけではなかったと思います。だって、この漫画の主要六人は、皆それなりに自分を持て余していて戸惑っていたから。そもそも思春期っていうのがそういう時期だっていうんだろうけど、私もそうだったように、きっと誰もがそうだったんだろうと思うんだけど、だからこそ、まちまちだった彼女らがだんだんと近づいていって、馬鹿なことも、楽しいことも、そして不安も苦しさもしんどさも分け合うようにして、チームになっていく過程が見えるようなこの漫画、読んでいてすごく幸いな気分でした。

それだからこそ、最終話は辛かった。身につまされて辛かったのです。杉山はやっぱり私に似ています。杉山のその後は私よりもおそらくは緩やかに進行したのだろうけれど、私は、それこそ絶縁状叩きつけるみたいにして終えたから。それこそ卒業アルバム、クラブ活動の写真に私は写っていない。私ははじめからどこにもいなかったかのようにいなくなって、それはやっぱり見付けてくれる誰かを待っていたのかも知れません。

実をいいますと、全話読み終えて、私はかっちぇるって言葉の意味をわかっていません。どっかで説明があったんじゃないかと思って探したりもしたんですが、やっぱりどこにも触れられていなくて、けれどもしかしたら、関西弁でいう寄せるなのかなって思っています。遊びの仲間に加えて欲しいときに、よーせーてーっ、っていうんです。よーせーてーっ。そういうのが苦手な子らがひょんなことをきっかけに集まって、自分たちの場所を築いていく、『かっちぇる♪』とはそうした漫画で、そしてその場所は変わることなく自分を待っていてくれる — 、そこに私はたまらないうらやましさを感じてしまうのです。

  • かわくぼ香織『かっちぇる♪』第1巻 (講談社コミックス(月マ)) 東京:講談社,2002年。
  • かわくぼ香織『かっちぇる♪』第2巻 (講談社コミックス(月マ)) 東京:講談社,2002年。
  • かわくぼ香織『かっちぇる♪』第3巻 (講談社コミックス(月マ)) 東京:講談社,2003年。
  • かわくぼ香織『かっちぇる♪』第4巻 (講談社コミックス(月マ)) 東京:講談社,2004年。
  • かわくぼ香織『かっちぇる♪』第5巻 (講談社コミックス(月マ)) 東京:講談社,2005年。
  • かわくぼ香織『かっちぇる♪』第6巻 (講談社コミックス(月マ)) 東京:講談社,2005年。

引用

  • かわくぼ香織『かっちぇる♪』第6巻 (東京:講談社,2005年),167頁。

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