2007年6月19日火曜日

Real Clothes

 書店にいったら『眠れる惑星』の3巻が出てましてね、それで今日はこれで書くことになるんだろうなと思ったんですが、てのはね、私の記事をきっかけにして読んでくださった人がいらっしゃるもので、いやもうありがたい話、だから新刊案内は紹介したものの義務かなと思ったんです。けど、そういえば19日は集英社クイーンズコミックスの発売日だったっけと思い出して、そうなんですよ。『Real Clothes』の新刊が出る日なんです。もちろん両方買って、たまらず『Real Clothes』から読んでしまいました。ということで、今日は『Real Clothes』であります。

『Real Clothes』、これはいいですよ。面白い。1巻の時点でも面白いと思いましたが、2巻はそれ以上に面白くて、いやもうそれは予想していた以上。以前私がけれん味みたいにいっていた絢爛豪華カリスマ群にしても、2巻に入ったらもう動く動く。いや、まったくもって予想外。あり得ない孤高の人間、いうことなすことごもっとも、けど嫌みだよねー、みたいなんじゃないんです。なんといっても、田渕優作。やり手バイヤー。つんつんヘアにあごひげ、眼鏡の精悍な男で、最初、うっわー鼻持ちならねーっ、て思ってたら、これがめちゃくちゃチャーミングなんですよ。仕事に対して全力投球、けれどその必死ささえも華麗に、魅力的と見せるのは、間違いなく槙村さとるの技で力なんでしょうね。それに女性たちもかっこいい。神保美姫がかっこいいのはもう当然。婦人服の統括部長。かりかりに研ぎ澄まされたキャラクター。必要なことを必要なときになし、いうべきことを告げる。けれど、ただの完成品とは描かれないんです。これまでに乗り越えてきたものがあったということを感じさせて、そしてそれがこの漫画の鍵になっている。この二人、そして個性を違えつつも自分のなすべきことを理解している同僚たち、みな引き締まってる。無駄なく、表現のためにすべてが機能している。神保美樹の名台詞、「引きしまっている」ということが「カッコイイ」こと、これをこの漫画自体が体現しています。

けれどこれらはあくまでも舞台です。こうした舞台を背負い中央に立つヒロイン。これがまた魅力的と感じます。新たな部署、慣れない環境に放り込まれて一旦戸惑いは見せたものの、上司、同僚の意気込みに刺戟され、ともに走り出そうというヒロイン。まだ迷いがある。問題も山積みだけれど、ヒロインはそれらに真っ向から向き合ってしまった。これまでずっと目をそらしてきたものに、向き直る覚悟をした — 。なんという正統的なドラマを見せてくれることかと思います。すべての仕事をする人間、そして結婚や家庭というものを(男性とはまた違う意味で)考えなくてはならない女性という性に生きるすべてのものに繋がる線が見えるようです。それらの線はきりきりと引き絞られながらよりあわされ、すごく強い導線となって、ヒロインを、そして物語を牽引するのですが、それを読む私自身も引きずられるようにして前に進みたくなってしまう。読むだけで元気になれそうな漫画、問題を意識しながらも目をそらしてきた自分を叱咤したくなる漫画、そしてフレッシュで強靱でしなやかなただただ面白い漫画。

今読むなら、人に薦めるなら、これだと思います。漫画の登場人物が、生きて動いている。物語が息づいて、うずうずと放たれる時を心待ちにしている。いつか来る、物語が放たれるその日を心待ちにせずにはいられない、『Real Clothes』とはそんな漫画であります。

  • 槙村さとる『Real Clothes』第1巻 (クイーンズコミックス) 東京:集英社.2007年。
  • 槙村さとる『Real Clothes』第2巻 (クイーンズコミックス) 東京:集英社.2007年。
  • 以下続刊

引用

  • 槙村さとる『Real Clothes』第2巻 (東京:集英社.2007年),49頁。

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