2009年3月26日木曜日

ゆゆ式

 今日、『ゆゆ式』の発売日。うん、とってもいい表紙。しあわせです。向かって左から、唯、ゆずこ、縁。つっこみ、ぼけ、ぼけ。全員、名前が「ゆ」で始まるから『ゆゆ式』なんかな? わかりませんけど、でもこの漫画が面白いんです。どこがといわれると、どこなんだろう。めりはりは弱いです。キレとか深みとかは、多分最初から求められていません。でも、ゆるやかに進行する、そこに思いがけない面白さが感じられることがあって、それは意外性かも知れないし、あるいはありそう感かも知れません。起承転結を意に介さない、そんな意識の流れかたは大変に心地良くて、けれどそれが不条理に向かうことはありません。とはいっても、時にぽんぽんと飛ぶ彼女らの話に、落ち着かないと思うこともあるでしょう。でも、その落ち着きのなさが魅力であるのも確か。興味がうずうずとしている。次へ次へと、小鳥が枝から枝に渡るみたいにして、ちょこまかちょこまか、話の焦点を動かしては、楽しそうにさえずって、その様が愛らしかったり、そして楽しそうだったり。なんだかいいなあと思わせてくれるのです。

しかし第一回から読み返してみて、女の子同士でチューだの揉むだの愛してるだの、そういう方面が意外と強かったってことを思い出して、なんだかびっくりしましたよ。中盤以降でも好きとか嫌いとか、確かにそんなこといってじゃれあうみたいなところもあるんだけど、友情の確認行動とでもいうか、ちょっと無理いってみて甘えてみせるみたいな、そんな風であるんだけど、当初のはなんだかすごく本気っぽい。それは、ある種の気張りみたいなものが感じられた、そのためなんだと思うのですが、そうした気張りや力みみたいなのは回を重ねるごとにだんだんと薄れていって、次第漫画から感じられる雰囲気の穏やかさ加減も加速していって、気がついたらぼけふたり、ゆずこと縁の場にすっかり引き込まれてしまっているんですね。クイッククイック、小鳥のさえずり、ゆずこ。スロースロー、ふんわりとつかみどころのなく気紛れ、縁。まるで春のようです。春夏秋冬、オールシーズンが浮き立つ春のようで、それは彼女らの人生における季節、それがまさしく春、であるからなのかも知れませんね。

彼女たちの笑う姿、喜怒哀楽、感情の揺れ動きにこうも引き付けられるのは、彼女らを通してあの箸が転んでもおかしい年頃ってやつを追体験するような気持ちになれるからなのかな。彼女たちは、本当によく笑う。それは、いずれ去る今を惜しんでのことなのか。友だちとすごすこの時間を、確かなものとしてとどめたいと願うからなのか。いやいや、わかってるんです。こんなこと思うのは、私がすでにそうした季節を過去に置き去りにしてしまったものだから。感傷を胸に、こうした季節のあったことを懐かしんでしまうからなんです。しかし、だからこそ、彼女らの明るさ、仲のよさが救いのように感じられて、ああ、いい漫画だなあ。私は、彼女らの楽しげな日常の風景に、かつて私の身には起こらなかった過去をまざまざと思い出しては、懐かしみ、微笑んで、束の間の安らぎを覚えるのです。

なんか、辛気臭い話になっちゃったな。でも、そうしたメランコリーは作中にかすかに感じとれる、そんな気もして、まあそれは私が勝手にそう感じてるだけなんだけれど、でもそうしたメランコリーの感じられることが、なおさら彼女らの幸いそのものといった笑顔の関係を大切なものとさせるようで、けれど私はどこにそんな影を感じるっていうのでしょう。具体的なものというと、黄色い花のくだりとか、今月のきららとか、それくらいしかないのに — 。もしかしたら私は、彼女らの、特にゆずこの、かまってほしいという欲求に、そしてこの三人ともに持っている、友だちを思うその気持ちの細やかさに、あてられてしまっているのだと思います。それで、なんか受信しちゃってるのね、きっと。彼女らの友人を思う気持ちに、ことさらに今を慈しむ、そんな思いを読み取りたいと願っているのでしょう。

『ゆゆ式』については、このあいだいったこと:

基本的に仲よい漫画です。ドラマチックな盛り上げとかには無縁で、ゆるやかにゆるやかに進行する、そこで語られるのはただただ仲のいい友達同士のつながりである — 。

これです。ああ、この娘らはなんて仲がいいんだろうな。その、友人の輪に、ちょっとだけ参加を許された、そんな気持ちになれるのがすごく嬉しい。気のあう友だちと過す時間。ただ一緒にいるだけで楽しい、そんな時間をすこしわけてもらったように感じられる、それが本当に嬉しくさせてくれるのですね。

さて、今日の部活、テーマ・ギター。あーゆー弾きかたは、あります。スライドバーを使うのが一般的です。ドブロのスクエアネックみたいに特化された楽器もあります。それが発展すると、ラップスチールとかスチールギターになるのかな? まとめ。ギター持ってるゆずこは可愛い。

実際、私はゆずこが好きです。め、眼鏡だからじゃないぞ。

  • 三上小又『ゆゆ式』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2009年。
  • 以下続刊

引用

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