2008年7月6日日曜日

兄妹はじめました!

  2008年6月は『1年777組』が完結し、また『兄妹はじめました!』新刊の発売された月でもありました。ひとつの漫画が終わり、そしてまだ続くものがある。そうした状態は健全な新陳代謝を思わせて、悪くないと思います。『1年777組』が円満な終わりを見せたから、なおさらそう思うのかも知れませんね。さて、『兄妹はじめました!』です。血の繋がらない兄妹の恋模様だかなんなのか、幼なじみでもある二人、兄は妹に妹ではなく幼なじみの顔を見て、そして妹はというと — 、これがとんとわからない。妹葵は、兄茜をどう思っているのか。幼なじみかあるいは兄か。その気持ちのわからないというところが、とにもかくにもこの漫画の面白さのベースになっているように思います。

しかし、これが策略だとすれば、この妹も意地が悪い。きっと兄が自分を、妹としてではなく好いていることは知ってるんだ。けど、それでも妹の位置を確保して、その好意を真っ向からは受け入れず、けれどその好意のあるということをうまく使って、兄をコントロールしてる。でも、その意地の悪さを人の悪さとは感じさせないというところがうまいんですね。ちょっといけずというか、いたずらっぽいというか、それはさながら猫の目のようで、くるくると変わって見せて、それはそれはチャーミングです。一途で不器用な兄、そんな男心をもてあそぶかのような葵の振舞い、それを小悪魔的と見るか、悪女と見るか。けれど、ああした魅力的な女性には、男を振り回しても許されるものがあると思うんですね。などといってしまう私は、結局は葵が好みと白状しているに同じです。

さて、この漫画には茜、葵の兄妹の他にも、緑葉、萌葱の兄妹もあって、そして第2巻からの参加である真黒、真白の兄妹もまた個性的で魅力的。愁一樹においては、キャラクターのかわいさが漫画の魅力を支える大きな要素であると感じているのですが、それは『兄妹はじめました!』でも同様で、葵に対して好きだという気持ちを隠さず迫る萌葱の天真爛漫さもかわいければ、好きなのかどうなのか、よくわからないながらもつんつんとからんでいく真白もまたなんだかかわいさが感じられて、ツンデレなんですか? 好意がないわけではないけれど、素直にそれを表さない不器用さがいいよなあと思えてしまって、そうしたかわいい娘さんたちに取り巻かれている茜さんは、本当に果報者でありますよ。けど、茜にとっては葵が唯一の思い人で、たとえ他の誰が言い寄ったとしても、ぶれることがないんだろうなあ。その一途さは『777組』のねことくんにも通ずるものがあって、そしてそうした性質は、読者である私にしても好感を得るところでありますね。

『兄妹はじめました!』は『1年777組』同様、かわいく個性的なキャラクターがどたばたとして楽しい漫画でありながら、恋に揺れる男心が描かれる、そんな漫画であると思います。けれど『兄妹』は『777組』に比べても一層、恋に揺れる心の景色、切なかったりどぎまぎさせられたり、そうした色が強めです。そして私は、そうした描写、要素にひかれて、振り回されつつも、実は、本当は、という可能性に心を揺らしているのです。

0 件のコメント: