2006年3月29日水曜日

兄妹はじめました!

 まさか妹もので書く日がくるとは、自分自身のこととはいえ、ついぞ予想だにしないことでありました。そう、『兄妹はじめました!』はそのタイトルの示すように兄と妹ものでありまして、けれど妹萌えというのとは一線を画しているところが私にはよかったのだと思います。作者は『1年777組』の愁一樹で、どうも私はこの人の漫画が好きなようです。ぱあっと目を引くような華やかさはなくて、内容的にも派手さはない、どちらかというと淡々と進んでいくようなそういう感じの漫画なのであるのですが、けれどいつのまにか毎回を楽しみにしている、ないとなんだか物足りない。こんな感想を持つのですね。私にしても、単行本を読み返してきっちり最初から読んでいたことを確認して、けれどはっきりと好きになったのはいったいいつだったのでしょう。そのへんをきちんと把握できていなかったりするのですね。

どのあたりが好きなんでしょうね。漫画としては、既刊の『1年777組』よりも地味という印象で、けれど現実味の点でいえば『777組』よりもずっと現実性のある話だから、私には読みやすいかと思います。設定は、幼なじみの二人が両親の再婚により兄妹になってという、有名どころでいえば『みゆき』パターン。ただこれが『みゆき』と違うのは、『みゆき』では兄貴のみが血の繋がっていないという事実を知っていて妹は知らない(ことにしている)、『兄妹はじめました!』は兄妹ともにちゃんと理解している。あと、『みゆき』では兄貴には同級生の彼女がいるけど、『兄妹はじめました!』ではそういう複雑な関係にならない。

よくも悪くも、さらっとして、ドラマとしての盛り上がりよりもふたりそしてクラスメイトたちを取り巻くシチュエーションを楽しむための漫画であると思います。

読んでると、なんだかにやにやしてしまいますな。だから、これは誰もいないところでひとりで読むのが正しいのではないかと思うのですが、血の繋がっていない妹に恋愛感情をくすぶらせている純情少年と、その気持ちを知ってか知らずか、あるいは知っているからこそなのか、うまく自分のペースに兄を巻き込んでしまう妹。この構図はよいなあと思ってしまうのですよ。妹ものに見られる盲目的お兄ちゃん大好きシチュエーションとは逆といってもいいのかな。でも、兄は妹に対しては盲目的でありつつも自分を失うようなところもなく、このへんは、好きだといってしまったら今の関係を壊してしまうかもしれないと怖れる、友達以上恋人未満の合間で揺れ動く少女漫画的シチュエーションに似てますね。恋人未満で兄妹であるというのがこの漫画の肝であるのです。

掲載誌である『まんがタイムきららMAX』の五月号で、妹のクラスメイト傍若無人系の萌葱(この人も妹)のスペシャル版があって、なんとその月は萌葱が主人公! ということで萌葱好きの私としては楽しみに読んだのですが、それでもなんだかちょっと物足らなくって、というのはやっぱり私がこの漫画に求めているのは、主人公兄茜と主人公妹葵を取り巻くいろいろなのであろうなあと再認識したのでした。そんなわけで恒例の蛇足:

蛇足

高坂葵、妹です。ぎゃーっ、新しい扉が開いてしまったような気がします!

  • 愁一樹『兄妹はじめました!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2006年。
  • 以下続刊

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