2006年3月16日木曜日

J. S. Bach : Sechs Choräle von Verschiedener Art (Schübler-Choräle), BWV 645-650 played by Marie-Claire Alain

  今回は演奏者であるマリ=クレール・アランにはあんまり関係のない記事です。前もってあしからず。

大学生であった頃、突然雨に降られたことがありまして、仲のよかったオルガン科のお嬢さんに傘を借りたのでした。ロッカーに置き傘があったのですね。マリ・クレールの花柄だけどいい? ええ、傘全面に美しい花柄が見事に咲き誇っていて、けど私は気にしやしません。ありがたくお借りしたのでした。で、家に帰ったら、干してあるこの傘をマイ・シスターが見つけまして、これ誰のん!? って借り物ですがな。私のやったら取るつもりやったんやろうという話で、私はオルガンでマリ・クレールというと、必ずこのエピソードを思いだします。

私はオルガンには詳しくなかったから、このお嬢さんにいろいろと教えてもらって、オルガンもちょっと弾かせてもらって、聞き覚えのシュープラー・コラール『目覚めよ、とわれらに呼ばわる物見らの声』を単音でちょろちょろ弾いてみたら、オルガンをやっているっていうといっつもこの曲を弾いてくれっていわれるの、席を代わるようにいわれると、その場でざっと通して弾いてくれたのでした。ちょっと嬉しかった。いや、かなり、すごく嬉しかった。

私は確かこの時点では『シュープラー・コラール』のCDを持っていなくって、だからやっぱりこのお嬢さんに教えてもらって、誰がいいの? その時私が知ってたオルガン奏者といったら、ヴァルヒャ、コープマン、マリ=クレール・アランくらい? その時にお嬢さんのいったのは、マリちゃんの演奏はあんまり私の好みじゃないの。浮世離れしたお嬢さんで、そういうところがちょっと好きだったかも知れない。変わった人だったけど、いろいろと魅力的だったなあ。と、そういうことをいいたいのではなくて、けど私が最初に買ったのはそのマリ=クレール・アランの演奏で、でもその人のいうお気に召さないところというのはついにわからず仕舞いでした。思えば、最初にマリ=クレール・アランを選んだのは、その人の嗜好や傾向いろいろを知りたかったのかもわからないですね。

『シュープラー・コラール』は教育実習でも教材に使って、だからちょっと思い出深い曲であったりします。有名な話ですが、この曲はもともとはカンタータの中のコラール(カンタータ『目覚めよ、とわれらに呼ばわる物見らの声』BWV 140の「シオンは物見らの歌を聞き」)で、それが抜き出され、オルガンで演奏される作品となって、こういう曲は『シュープラー・コラール』以外にもたくさんあります。有名どころでは『主よ人の望みの喜びよ』なんかもそうですね。

そして最近では『ときめきメモリアルONLINE』でこの曲に出会って、まさに私が聞き覚えて、オルガン科のあのこに弾いてもらって嬉しかったという『目覚めよ、とわれらに呼ばわる物見らの声』。教会に入ると流れていたこの曲に、これまでこの曲を仲立ちとして出会ってきたことごとがわあっと押し寄せるように思い出されて、はたしてあの人はお元気でいらっしゃるのだろうか。もう何年も音信やりとりは途絶えてしまっていて、お元気ならばよいのにと思った。一曲の裏表に思い出される人はたくさんあって、なかにはこうして懐かしみつつ、再びお会いしたいと思う人もあります。

でも、過去ばっかり振り返っててもいけないね。前向きにいきませんとな。でもあの人のことは、美しい思い出としてこれから先も忘れられることは決してないと思います。

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