2006年3月10日金曜日

カレーの王子さま

今、私の職場にはとにかくカレーが好きだという男がひとりあって、朝昼晩三食カレーでも飽きないみたいなことをいっているものですから、そんなことじゃいつかキレンジャーになるぞなんていってたりする。ともあれ、カレーが伝来し日本洋食化し、私たちの食卓に乗れば子供たちは喜んで、まあ、私も喜びますよ。でも、きっと姉の方が喜ぶだろうな。思い返せば、姉は本当にカレーが好きでした。

で、なんでカレーについて延々書いているのかというと、今日、大阪は南港ATCにいってきまして、そこでカレーを食べまして、そのカレーというのは日本カレーよりもオリジナルに近い。昼食のバイキング、バイキングとなればどうにも食べ過ぎてしまう傾向にありまして、案の定食べ過ぎました。ええ、夜になってもお腹がこなれず、まさに午後はカレーにどっぷりと浸ったかのようであったのです。

なので今日はカレーにどっぷり浸った男の話。川原泉の『カレーの王子さま』です。ひとつの食べ物に執着してしまうという吉川弘文(これってどう見ても吉川弘文館! ちなみに妻はみすずだ)が物語であり、彼が今まさに執心するのはカレー。日本カレーなのでありますね。

けどこの漫画はカレーという食べ物をモチーフにしながら、いわゆる料理漫画食通漫画におちいらず、若い(?)新婚夫婦の仲むつまじい(?)日常を描いて、ほのぼのと明るく暖かい小品に仕上がっています。私がこの漫画にはじめて出会ったのは高校生の頃、部活の同期が貸してくれたのがきっかけで、しかし少女漫画にこういう独特の世界があるとはこのときまで知らなかったのです。

川原泉は紛れもなく固有の価値です。よく男にもファンの多いなんていわれる川原ですが、それは男とか女とかのカテゴリをまたぎ越しているからで、どことなくドライで、けれど人情は深くしみじみと、この背反の性質がひとつところに調和してすごく素敵。そう、きっと私が川原にひかれてやまないのは、こうしたところにあるのでしょう。

『カレーの王子さま』は、惚れた腫れた好きだ愛してるということなしに、妻へ夫への愛をほのかに感じさせて、私はこういうところになんだかじんとしてしまいます。泣きはしないさ。楽しく読めるコメディだもの。けれど、なんだか心の奥底にほっとしてゆったりとした時間が生まれるような感じがします。

ええ、間違いなく私は、川原のこういうところにひかれています。私にとって川原とは、疑いもなく固有の価値であるのです。

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