2006年3月23日木曜日

Sweet Memories

  いつぞやはまってしまったMMO(多人数参加型オンライン)型ゲーム『ときめきメモリアルONLINE』。正式サービスが今日の14時に開始されて、けれど私はもうあの場に戻ることはできないのではないかと思っていたのです。レジストレーションコードは残っているし、30日間の無料プレイも可能だし、じゃあなにが問題なのか。時間? いや、時間も自由ではないとはいえ、そういう経済的ないしは物理的ななにかが問題になっているわけではないのです。

問題は、一度覚めた夢を再び見ることができるのかという、心情に根ざすものであります。私は、一度でも場を離れると戻れないという厄介な性質を持っておりまして、これをもって帰巣本能が低い、帰属意識が極めて低いといってもいい。再び参加して、戻りました、戻ったは戻ったのだけれど、心はここにはいないというようなことになることを怖れていたのです。

松田聖子のヒット曲『Sweet Memories』に次のような歌詞があるのです:友達ならいるけどあんなには燃えあがれなくて。……そうなんですね。まわりには確かに以前と同じように友人たちがあって、しかし私は変わってしまって、もうあの日のようではない。ああ、でもこれは『Sweet Memories』のテーマじゃないや。むしろ『あの素晴らしい愛をもう一度』にこそふさわしい:あの時風が流れても変わらないと言った二人の心と心が今はもう通わない。ええ、私の心は変わってしまった。そういう現実に直面するのではないかと私はひたすら怖れたのでした。

『Sweet Memories』が流行った頃、私はまだ子供で、サントリーのペンギンのキャラクターがコマーシャルでこの歌を歌っていて、その情景がすごく心に残っています。サントリーのビール工場見学、開始時刻を過去のCM上映を見ながら待っていたときに、このCMを見て、一度に心は子供時分に戻って見せて、なんかすごく懐かしく、涙が出そうな気にさえなって、失った夢だけが美しく見えるのはなぜかしら、どんなにいやなこと、つらかったことがあったとしても、過去は振り返ればいつも美しく輝いて、過ぎた悲しみだけがきれいに見えるのはきっと涙のせいでキラキラ光るから

けど、そういうややこしいことを考えているのは結局自分ひとりであって、他の誰もそんなことは考えてなんてなくて、だから私はこれまでも、なにも考えることなくどーんと飛び込んでいったらよかったのかも知れないと、そんな風に思います。考えすぎて駄目にしたものはたくさんあっただろう、もっと気楽にいけば、今失っている(今失ったと思っている)ものも手もとに残っていたかも知れない。

そのように思えるできごとがあったのでした。

引用

  • 松本隆『Sweet Memories
  • 北山修『あの素晴らしい愛をもう一度
  • 松本隆,前掲
  • 武田鉄矢『思い出が手を振る

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