2008年7月18日金曜日

逆転裁判 蘇る逆転

 開始しました、『逆転裁判』。面白いとは聞いていました。異議あり!待った!はちょっとした流行語にもなったし、それになんだか漫画にもなってるみたいで、人気あるんだなあ、機会があったら是非遊んでみたいと思っていたんです。そうしたら、当たりました。しかも四本まとめて。わあ、なんだこの幸運。人生の残り、今この瞬間に全部振り絞った!? もしそうだとしたら、この先がやばい。けど、もし運悪く事件に巻き込まれることがあっても、成歩堂龍一のような正義の弁護士が助けてくれるから大丈夫さ。そう、法廷アドベンチャーゲームを謳う『逆転裁判』において、プレイヤーは正義の弁護士成歩堂龍一となり、数々の事件を解決に導くのであります。

けど、実際彼がやってるのは探偵、それも実際の探偵じゃなくて、推理小説の主人公としての探偵だったりして、実際の法廷の審理とは大きくかけ離れているんですね。けれど、それでも楽しいからいいじゃないか。成歩堂の背には無実の罪に問われた被告人の人生が重くかかっていて、だから負けるわけにはいかない。成歩堂は真実を明らかにすべく、足で集めた証拠を手に裁判に挑む。ああ、もうかっこいいじゃないか。それこそ、冤罪一歩手前という状況、崖っぷちを背負ったような位置から一歩一歩前進し、そして悪意に打ち勝つという快感がありますね。揚げ足を取り、突っ込む。基本その繰り返しであるのに、ドラマティックで、そして爽快感がすごい。あの大げさなつっこみ、強烈なキャラクターの魅力もありますが、このゲームの構造がもうプレイヤーを引きつけてやまない。人気が出るのもわかります。

プレイしていると、成歩堂、それお前の仕事じゃない、とか、つうかそれ不法行為なんじゃないのとか、思うところ、つっこみどころはいろいろあるのですが、けれど最大のつっこみどころは、弁護士の仕事というのは冤罪を晴らすことでなく、それが実際に犯罪を犯したものであっても、裁判においては最善の弁護をするという、そこなんじゃないのか、なんて思ったりするんです。なにしろまだすべて遊んだわけではないので、これからどうなるかはわからないのですが、けどもし以降に、犯罪は犯してしまったけれど、故意ではなかった、やむにやまれぬ事情があったんだ、など、そういうのがあったら私の心によりいっそう触れるものになるかも知れない。けど、多分ないですよね。気楽に、爽快に楽しめるゲームであるのですから、そうしたもやもやを胸に残すようなのはないんだろうなあと、けどあったらすごいな。ちょっと期待してみよう。

思った以上にハードな犯罪を扱うゲームで、その点は正直驚きました。もっとライトかなと思ってたんです。それが、まさか、いきなり、この人が殺されるの!? う、嘘だといってよ! そんな気分で開始された第二話、本当、驚きでしたね。この思い切った展開、驚いた人多かったんじゃないかなあ。実際、私も最初信じられませんでした。でも、反則ぎりぎりの捜査や証拠提出、ありとあらゆる手段でもって真実にたどり着こうとする、その強引さ、貪欲さはいいねと思って、そしてやっぱりこのゲームは夢なんだと思いました。夢、それはあやふやにして薄弱というのではなく、世の中とはこうであって欲しいという、理想だと思うんです。実際、社会においては白黒はっきりしないことっていっぱいあります。真実に迫れないなんてことはむしろ普通で、犯人も捕まらなければ、被害者も救済されたとは思えない。そんな、やりきれない現実を前にして打ちひしがれる、世の中ってやつは理不尽だなあ、そんなことばっかりです。自分に力があればいいのに、正義を体現できる人間であったらどんなにかよいだろう、そんなことを思ったことがないっていう人の方がむしろ少ないと思うんです。

しょせんゲーム、解かれることを前提に用意された謎に過ぎない。それはわかっているんです。けれど、このゲームをプレイしている間は、世の理不尽、正直者が馬鹿を見たり、悪人がのうのうとしていたりといった現実を忘れることができる。憂さ晴らしかもしれません、あまりにもささやかすぎるけど — 。けれど、こういう正義があったらば、強者のための正義ではなく、弱者のための、真実のための正義があったら、世の中とはどれほどによくなるだろう。そうした夢想を、かりそめとはいえ体現できるんです。そりゃ悲劇なんてないほうがいいに決まってる。けれど、起きた悲劇に関しては、真実が明らかになって欲しいし、あがなわれないといけない。現実では、物事が複雑に過ぎるから、それが簡単ではありません。けれどゲームなら、そのささやかな理想を夢見ることもできるんです。

真実だ、正義だなんていうのは、結局は子供っぽい、単純な理想に過ぎないんだと思います。けど、シンプルだからこそ、その理想は心のどこかにあって欲しい。そんな風にも思うんです。普通の人が、仕合わせな日常を、邪魔されず送ることができる。悪意や理不尽から守られて欲しい、そうした思いをちょっと取り戻すことができる、そんなゲームであったと思います。けど、それは成歩堂というキャラクターの力も大きいんだろうなあと思えて、迷って、汗をだらだら流して、そしてびしっと異議を唱える。おかしなことに対して、異議あり! 物申す。それは大事だなあ。そんなこと思うゲームでもありました。

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