2015年8月11日火曜日

ダンジョン飯

 『ダンジョン飯』、話題になったから買ったのでした。金ない、戦力もない、装備もぎりぎり。そんな冒険者が、迷宮奥地にて生き別れた、いや、死に別れか、妹を助けるために、突貫で下層へと潜ろうとする。というと、なにかシリアスなもの感じさせようものですが、いや、どうもこれ、シリアスな感じ、ぜんぜんしないな……。なんせタイトルが『ダンジョン飯』。ダンジョンはいいとして、飯。飯か……。はたしてダンジョンにてなにを食べようというのか。なんと、ダンジョンに棲息するモンスターたちなんですね。歩き茸やスライム、バジリスクといったモンスターを捕え、狩り、調理し、食べる。そのサバイバルは、なんとしてもこの迷宮を生き抜かんという決意を感じさせる、ようなものではなくって、なんだろう、これ、好奇心よね? こういうの、前から食ってみたかったんだ! そんな興味が最前面に押し出された、ファンタジーフィールドキッチンストーリー。もうね、おかしくってね、おかしくってね、そりゃあ話題にもなろうってもんだし人気も出るわ。私もすっかり引き込まれてしまったのでありました。

ひとことでいうと、主人公がやばいですよね。妹のピンチ。ドラゴンに飲まれてしまった妹が消化されるより前に、ドラゴンを倒し、その身柄を取り戻さなければならない。わりとね、シリアスというか、タイムリミット付きのピンチっていう、ほんと、急いで、慌てて、必死でダンジョンに潜らないといけない、そんなシチュエーションだというのにね、ライオスですよ、ライオス、こいつ、どうも妹のピンチをこれさいわいと、前々から興味のあったモンスター食、こいつを実行するための好奇ととらえてるんじゃないか? そんなヤバさ感じさせるところあって、仲間からサイコパス呼ばわりされるくらい。けど、このおっさんの好奇心、あるいは生存への意欲とでもいったらいいのか、それはもう抜群で、異様で異常かもは知れないけどもさ、でもこの漫画の抜群の魅力の根源であることは間違いないんですね。

パーティは、罠の解除が得意なハーフフットのチルチャック。そしてエルフの魔術師、マルシル。マルシルが可愛いんだ。魔物食にどうしてもなじめなくってね、いっつもいっつも文句ばっかりいってるんだけど、それでも結局は食べるんですけど、その感情のあらわにされるところ、すごくこの人のチャーミングさ押し出されておりまして、あ、そうそう、明日、この漫画の2巻が出るんですけど、だからこうしてBlogに書く気になったんだけど、なんと、マルシルが表紙なんですよ。わーい、やったー! めちゃくちゃ喜んでいます。

このパーティに、魔物食のエキスパート、ドワーフのセンシが加わるんですね。魔物食の経験および知識を持った人物で、ライオスの興味とばっちり指向性が揃ってしまったことで、もうね、これはとまらんね。魔物をおいしく調理するのは、まずこの人の仕事。見た目もバランスもよい、そんな料理に仕立て上げる、その料理の腕は抜群っていっていいんじゃないでしょうか。というか、できあがった料理の絵にその解説。どういう癖があって、どういう風に調理するとおいしくて、みたいな解説読めば、あたかもこういう魔物食が普通にこの世に存在するかのように感じられるほど。これはリアリティってやつなんだろうなあ。「本物」ではなくって、「本物らしさ」、「もっともらしさ」、「ありそう感」、それがリアリティと私は理解しておりまして、その、もっともらしさ、を演出する技術が実に優れていると感じております。ええ、いつかこの料理食べてみたいなあ。決してかなわないと思いながらも、夢見てしまう。なんとかしたら食べられそう、そう胃袋が感じちゃってるんですね。ああ、腹がへった……。

この漫画、見事に話題になって、人気も上々で、それは大変いいことなんですけど、ということは話数も膨らむ、モンスターも、もちろん料理も、どんどん出てくる、世界が広がっていくんだ! というのは嬉しいんですけど、もしかしたらそれって、妹の救出、遅れる? 消化されちまわない? いや、たぶんほどほどで妹も救出されて、その上で魔物食を極めよう、妹も魔物食の世界に引き込もう、みたいな動きになるんじゃないのかな、なんて思ってるんですが、いや、もう、この漫画、これからどういう展開、どういう料理が出てくるのか、まったく予想もつかない、そのびっくり箱みたいな楽しさが素晴しいと思うんですね。ええ、はやく2巻が読みたい! もう、めちゃくちゃ心待ちなんですよ。

  • 九井諒子『ダンジョン飯』第1巻 (ビームコミックス) 東京:KADOKAWA/エンターブレイン,2015年。
  • 九井諒子『ダンジョン飯』第2巻 (ビームコミックス) 東京:KADOKAWA/エンターブレイン,2015年。
  • 以下続刊

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