2015年6月15日月曜日

チャッピー

 先日、映画の鑑賞券もらいまして、期限は今月中、さあなにを見にいったらよいものかなあ。上映スケジュール見ながら、あれにしようか、これにしようか。最初は『幕が上がる』にしようと思ったのだけど、残念、もう幕は下りてしまっていまして、じゃあと選んだのが『チャッピー』。これ、封切前にケチがついた映画で、PG12にするために日本版のみ一部カットした、いや厳密にはカットじゃなく、アングルを変えたとかいう話なんですが、その変更について監督が聞かされていない云々。オリジナルと違うだなんて、こんなの見にいくもんか! という声も次々あがった、そんな映画でした。けど、今上映中の映画だとこれが一番興味をひいて、そして見終えての感想はといいますと、いや、よかったですよ。この映画、とてもよかったですよ。

監督は『第9地区』のニール・ブロムカンプ。『第9地区』はテレビで見たことがあって、結構面白かった。南アフリカ出身の監督、ということで、どうしてもアパルトヘイトに重ねて映画を見ちゃうんですけど、ラストでは爽快というか豪快というか、そんな勢いがあって、じゃあだからハッピーエンドかと思えば、なんだか救いの見えない、そんな不思議な映画でもあったんですね。

『チャッピー』、事前情報なしでの鑑賞となりました。犯罪都市ヨハネスブルグに導入された警察ロボット。人工知能で動く彼らは目覚しい成果をあげて、けれどよかったのはここまで。なんかね、人間の弱さというか駄目さというか、いろいろと見せられた映画でしたよ。自分の成果をかたちにしたいと、社の規定を破ってしまう開発者がいれば、自分のプロジェクトがうまくいかない、それでうまくいってる警察ロボットに嫉妬し、さらには妨害するにいたるなどなど。皆が極めて利己的に動いて、そのたびに最新の人工知能を搭載されたロボット、チャッピーが振り回される。いわば赤ん坊である彼は、急速に多くの知識や技能を身につけていくんですが、開発者がいった犯罪はいけない、そのいいつけを守りながらも、犯罪者のグループに身を置いて、騙されながら、悪事を働いていく。そのジレンマに苦しめられて、また自分の運命にも苦しめられるんですね。

多くのテーマが読み取れる、そんな映画でありました。育つ環境が人の善悪を決めてしまうのか。属する階層があまりに違いすぎるゆえに互いに憎み合う、かと思えば、共通の目標を持つことで意気投合してみたり、そうした状況状況での人の気持ちの揺れ動くさまなど、かなりの現実味もって受け止められるものあって、かと思えば、人を傷つける、人を騙す、そうしたことを理解できないチャッピーの葛藤や憤り。人工知能のロボットよりも、むしろ人の方が問題を多く抱えているのではないか。犯罪や残虐に対する歯止めのなさ、それはむしろ人の抱える問題なのではないか。純粋で無邪気なロボットを人に対比させることで、人の性質をこそ問おう、そうした感触を持ったのでした。

つっこみどころも多いんですよ。成功しなかった方の警察ロボ。もっとコストダウンしろっていわれてたんですが、確かにあれ、性能過剰でしょうよ。どんだけ盛ってんねん! 警察向けというより軍用といった装備、大量に盛り込まれていて、あれはあかんよ。誰もがつっこむのではないかと思います。他にも大量のPS4とかVAIOとか、見どころはいっぱいあって、そしてテンション。あれはいかしました。もう、なんというか、すごいインパクトだったなあ。いや、そうしたところ、つっこみながらも、最後までばっちり見せてくれるところなど、メッセージ性とか抜きにして楽しめる、そんな映画だったと思います。

そして最後に、エンドロール見てはじめて気付いたんですが、主人公、はチャッピーか。チャッピーを取り巻くギャングスタのふたり、ニンジャとヨーランディ。彼らはDIE ANTWOORDというラップグループのラッパーだったのか。もう、ふたりともすごくいい雰囲気、見事な演技を見せてくれて、いかしてましたよ。DIE ANTWOORDの曲は、映画の途中途中に挿入させて、またそれがかっこいい。サウンドトラック欲しいな、と思ったんですが、サントラにはこれらの曲は入っていないのかな? だとしたら、どのアルバムに買えば聞けるのだろう、なんて思わされる魅力あるサウンドでしたよ。

CD

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