『ばーどすとらいく!』、世間一般にはどう呼ばれてるか知らないし気にもしてないんだけど、私個人的にはばすとと呼んでおります。バストだなんていったら、胸のどうのという、そっち方面を想像しがちだけど、別にそういう漫画じゃあないんですよね。というつもりだったのに、カバー下のネタがまさしくそいつだったというので、あれれ、予定がくるってしまいましたよ。本編改めて読んでみて改めて気付く、ああ、胸のどうのというネタ、ちょくちょく出てきてるわ。なんでだろう、忘却のかなただった。本漫画の主人公、クル=ッポー・デーデポッポーは鳥から進化した宇宙人、なんせ鳥ベースなわけで、胸のなんのといっても、せいぜいが鳩胸みたいなもんで、すらっとフラット、胸の大小とかまったく気にするところがない。ええ、それは美点であると思っています。
と、そうしたところを美点だなんて思っていたものだから、胸のどうのという話を、忘れさる方面に押しやってしまっていたのかも知れませんね。
けれど、この漫画、胸のどうの、そういうネタはちょっとしたスパイス、薬味みたいなもので、主となるのは異文化交流なんですね。打ち解けるはずもなかろう、そう思われていたものたちが、次第に近しくなっていく、かけがえのない存在として互いを認識するにいたる、そうした友情ものである、といってもいいと思うのですが、地球侵略を目論む宇宙人の尖兵、だったはずのクルが、すっかり地球の、というか現代日本の暮らしに馴染んでしまって、最初はあんなに抵抗あったはずのプリンも大好きになってしまってるわ、ほかにももろもろ。クルを送り込んだ総統にしても、クルのもたらす日本の風俗にすっかりはまっちゃって、いや、ほんと、すごく面白い。当初の目的だった侵略、なんだかすっかり忘れちゃったみたいになってて、むしろ地球でクルがうまくやっていけてるか、友達できたか、寂しかないか、心配する様子などまさしく親心、といったところでありまして、ええ、いい上司じゃないですか。それだけに、今後不穏な展開などあるのではないか、そうした予感させる引きに、今のほのぼのを愛してる自分としては不安など感じたりもするのですね。
いや、おそらくはやっぱりほのぼのに着地するんだろうなあ、とも思ってるんですけどね。
キャラクター、いいですよね。クルももちろんそうなんだけど、あとりにひたき、ひたきがね、非常識寄りのキャラクターかと思いきや、意外やそうではなかったり、すごく友達思いのふたりね、実にいい。委員長の鳳ウートカも、表に出そうとしてるキャラと実際のキャラに生ずるギャップ、そのおかしさ実によく、なにより可愛らしい。うん、ウートカはもっと 自信を持って胸を張るべきだと思うよ。そして刈茅せっか。この子の来し方、なんだかちょっと切なくて、その切なさはクルの生い立ちとも重なったりするのかな。あるいはそして、クルのこれから、それに影響も与えて、うん、けど、せっかだけじゃないですね。皆がクルと友達になって、そして友達同士、一緒に遊んだり、思いやったり、そうした交流を通して、互いに唯一無二となる。そうなってくれたらいいなあって思うんですよ。だもんだから、あのクリスマスのエピソードとかね、本当に見事で、もしかしたらいつかくるかも知れないクライマックス、あるいは試練、その際にも決して揺らぐことのない友情を築いていってくれればと思うのでありますよ。
- もず『ばーどすとらいく!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2015年。
- 以下続刊
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