2009年2月8日日曜日

そこぬけRPG

収録されてるかなどうかなと思っていたバレンタイン決戦は、3巻に持ち越しみたいですね。いやあ、あれが大変に素晴らしかったので、こりゃもう3巻今から心待ちです。

心待ちにしていた『そこぬけRPG』の第3巻が発売されました。もしかしたら、昨年中に出るのではないかという期待もありましたが、残念ながら今年に持ち越されて、けれど、いつ出ようとも面白いものは面白いからいいんです。そして期待のバレンタイン回は、冒頭二話目に登場して、いや、もう素晴しかったです。藤崎さんが可愛いったら可愛くないったら、もう乙女ですよ、乙女ですね。素直なんだか素直じゃないんだか、微妙によくわからない藤崎55cmさんですが、第3巻では彼女はじめとして、カナさん、ええとヒトミちゃんも含めていいのか? 女性陣の乙女っぷりが次々あらわにされて、ああ、もう、読んでいてブルブルと震えそうなくらいに素晴しい。もちろん私の一押しは藤崎さんで、ああもう、寅屋ばかりがなぜもてる。というか、藤崎さんのドリームアイやヒトミちゃんのドリームフィルターごしに見るせいか、寅屋までもが可愛く見えてきてしまうというのは、ちょっと問題なのではないかと思っています。

しかし、この第3巻、藤崎さんの可愛さやヒトミちゃんの暴走、社長の傍若無人、そのへんも大変に面白いのでありますが、それに加えて働くということ、社会に出て、仕事をするということの厳しさも語られていた巻であった、そのように思います。普段、この漫画に出てくるフィクションのゲーム会社においては、よっぽどまともではあり得ないような無茶がばんばん描かれて、そのあるんだかあるんだかないんだかわからない、そうしたところを楽しむ、そんなつもりでいたというのに、ほら、あの新人研修を発端とするくだりですよ。あれは、身に沁みました。

真面目に働かなきゃクビよん♥

それは確かに冗談めかした台詞ではあるのだけれども、けれど仕事というのは決して楽なものではあり得ないよな、そのように感じさせたのも事実で、技術が何より自分を守る…。なら、一体私は私自身をどのようにして守っていくというのだろう。そのように思わせる、意外に重い、シビアな言葉でありました。

でも結局は、誰もが代替可能なのです。自分がいなければまわらないなんていっているのは、結局その当人が思い込んでるだけっていうのが相場。いなくなったらいなくなったで、仕事でもなんでもまわるんです。そうした経験はこれまでも散々してきて、自分っていったいなんなんだろうって思ったこともあったのですが、だからこそ自分の場、ポジションを確立させる、そのための努力を怠ってはならんのでしょう。残るには残るだけの努力も必要やっちゅー事ね。それはパワーバランスのゲームに参加するということではなく、ましてや情報や技術を抱え込むということでもなく、他の誰でもないあの人がした仕事だ、なら大丈夫だろうという信頼を獲得するということに他ならない。そして、そうした努力の果てに認められる、その喜びが、仕事という、時に辛くしんどい営為に身を投じさせ、心身を支える原動力になるのだ。そうした、まさしく仕事をするということを描く漫画でもあるんですね。

仕事とは、単に金を得るための手段ではないのだ。そうした、時に忘れがちなことを思い出させてくれる、いい漫画であると思います。それも、説教くささなんてまるでなしに、面白さを第一にして、その上に仕事の厳しさとやりがいを伝えてくる。その実感を手渡ししてくれる、そのことが、この漫画自体がよい仕事であることの、この作者がよい仕事とはどのようなものであるかを知っているということの証左となっている、そのように感じています。

  • 佐藤両々『そこぬけRPG』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 佐藤両々『そこぬけRPG』第2巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2008年。
  • 佐藤両々『そこぬけRPG』第3巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2009年。
  • 以下続刊

引用

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