2007年3月7日水曜日

そこぬけRPG

 以前、私は身も蓋もない女の子中心漫画が大好きだといったことがありましたが、その身も蓋もない『天使のお仕事』の作家、佐藤両々の新しい漫画が出ましたよ。その名は『そこぬけRPG』。ゲーム業界に憧れを抱いて飛び込んできた京橋久太郎が女王様に仕えるゲボキューとなって、ええと、なにと戦ってるんだろう。やっぱり女王様? いや、そうじゃないですよね。タイトルや装幀にこそはRPG、ゲームっぽさというのをちりばめて、それはちょっと一昔風で恥ずかしかったりもするくらいなんだけど、中身はというと実にシビアな業界漫画であったりします。ゲーム業界の現実を面白おかしく描いて、こういうところは産婦人科業界を面白く描いた『天使のお仕事』に通ずるところがあると思います。

でも、多分『そこぬけRPG』の方が赤裸々というか自爆系というか、というのは、この作者は昔ゲーム会社に勤めていらしたそうでして、だから出てくるネタの数々、とりわけなんかやばそうなのってあの会社の実話なんじゃないのかー、って感じがして、だから普通の漫画だったら非常識ギャグとして受け取って笑うような場面も、いやもしや実話か……??? みたいな、そんな不思議な転倒感が素敵です。

けど、ゲーム業界を赤裸々に! ってな具合の漫画なら今までにもいろいろあるわけで、そうした厳しさを自虐的ギャグで表現するだけだったら、私はそれほどこの漫画を好きにはなっていなかったんじゃないかと思います。ということはですよ、ということは! そう、身も蓋もない女の子ですよ。え? カナさんは女の子じゃない? そうですね、違いますね。じゃあ、お姉さま。身も蓋もないお姉さま(もしくは女王様)が我が物顔で、新人京橋を下僕としておもちゃにするという、そういう面もこの漫画における重要な軸として機能しています。理不尽な命令、公私混同としかいえない言動の数々が下僕の久太郎どころか他部署までをも巻き込んで、けれどきっちり結果は出してみせます、新人のお守りだってちゃんとしてますという、実力のある姉御肌! ああ、素敵やね。という私は、カナさんではなく人妻Cカップがお気に入りです。

だって、かわいいじゃんか。クールで淡々としているところとか、で、その人が忘年会ではあんなことになってる! あ、58ページのゲーマー主婦もいい感じです。

馬鹿なこといっていますが、でもこの漫画の肝というのは女王カナさんの愛ある乱暴狼藉かと思います。ちょっと自分はこの人の下僕にはなりたくないけど、仕事に対してはむしろ熱血、やるときはやるという先輩のもとで成長する新人ストーリー(いや、四コマだけどさ)。そういう風に見るとなんか普通の漫画みたいだけど、けどやっぱり普通じゃないよね。一歩引いて見てみれば普通なのに、読んでみれば一歩普通という領域から踏み出してるように感じる、こういう普通と普通じゃなさが同居して渾然一体としている、独特の感覚が佐藤両々らしさなんだと思います。けど、ベースはあくまでも普通だから、身も蓋もないっていうだけで普通の域を保っているから、安定感は抜群。安心して読めるいい漫画だと思います。

  • 佐藤両々『そこぬけRPG』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 以下続刊

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