2007年3月16日金曜日

Newsweek日本版 2007-3.21号 (3/14発売)

なんだよー。Amazon.co.jpは雑誌も扱ってるから、Newsweekくらいあって当然と思ってたのに、扱ってないんだ。ちょっと残念。というのは、今書店に並んでいる『Newsweek日本版』2007-3.21号の表紙がですね、実に振るっているのですよ。ぜひこのBlogにこの表紙を並べたいもんだと思ったのですが、Amazonが扱っていない以上画像を引っ張ってこれないわけで、それがひたすらに残念です。一体どういう表紙かはNewsweek日本版オフィシャルサイトでご覧いただくとして、問題は今週号の特集です。題して萌える世界。世界に広がる萌え文化、マンガ、アニメのブームを超えたアキバ文化の国際化、なのだそうです。

あまりに表紙がインパクト強かったので、いや、これが普段『テックジャイアン』とかが並んでるような場所にあったのならきっと気にも留めなかったろうとは思うのですが、なにしろ『Newsweek』ですからね。結構お堅い系の雑誌が並ぶ中に、金髪メイドさんでしかもきらきらときたもんですから、目を引く目を引く。ものすごい異化作用があって、正直なところ一瞬引きましたよ。少々躊躇したものの結局中身あらためまして、400円かあ、買ってもいいかなと、そんな感じで買いました。とはいえ、『Newsweek』ですから、そんなにがっつりとページを割いて総力特集です、みたいなもんではありません。ゆうても8ページくらいなものです。

書かれていた内容は、さして真新しいものではなく、この手の情報に聡いものならまあ知ってるといったようなことばかりです。ヨーロッパ、アメリカでもマンガ、アニメは大人気。台北にはメイド喫茶ができるし、パリではマンガカフェが人気とか。子供時分に、それと知らないままに日本アニメに触れてきて、それまで見たこともない世界、物語の力にすっかりやられてしまいました。それからは日本マンガ、アニメが大好きです。というような善男善女へのインタビューをもとに構成された誌面ですから、まあ特に最新状況云々いうものじゃありませんわね。だってさ、海外におけるファンサブ、ファンフィクションの盛り上がりはもう何年も前からいわれてることですし、ヤオイ、少年愛も大人気。私もベルギーの女子高生(おそらく知りあった当時は中学生だったと思われる)に頼まれて、十冊を超えるやおい系同人誌を送りましたともさ。

けど、さすがにイスラム世界にまで涼宮ハルヒが進出しているとは思わなかった。はっきりいって、私がこの雑誌を買ったのはこの事実のためだといってもいいと思います。デモ集会の現場、ハルヒをあしらったプラカードを持った女の子を写した写真が掲載されていて、私はその書かれていた言葉を読むことができず、しかしこの答えは記事の最後に明かされます。

 萌えキャラクターはイスラム社会にも登場するようになった。パレスチナ自治区のガザで昨年12月、『涼宮ハルヒの憂鬱』の主人公ハルヒのイラストを掲げる少女の姿があった。幼い兄弟が犠牲となった銃撃事件への抗議集会で、「子供を殺さないで」と訴えたのだ。

絵の雰囲気を見ると、アニメじゃないのかな。しかし、これがまさかそうしたシリアスなシーンに登場するとは、私にとっては少しカルチャーショックだったのかも知れません。政治的な問題が原因となって人が、それも子供が殺されるという現実がある世界から見れば、こうしたキャラクターはどのように映るんだろうかなと思ったんです。それまでの、マンガやアニメというサブカルチャーに没頭する社会のレポートが凡庸で呑気であまりに平和であっただけに、落差がすごかった。ちょっとした異化作用をもたらしたと、それくらいに思った。プラカードに張り込まれたハルヒの絵は、最初こそは違和感を持って、それこそメッセージとの関連なんかは薄いんじゃないかと思っていた、その認識が誤っていたと悟って、この子にとってはここにあえてハルヒを貼ろうと思った理由があったのだろうと、その切実さがなんか痛ましさをくっきりと強調させたのです。

と、変に真面目くさったことばっかりいっててもなんだ。ええと、突っ込みどころ。

 もともと「萌え」には、ロリコン趣味の意味が含まれていたとされる。マンガやアニメを通じて発信される日本のロリコン描写は海外でも人気があり、さらに新たなニーズを生み出している。

「こうやってかわいい女の子を見ていたら、彼女はいらないかなと思う」と、ネットで購入できる日本のロリコン系アダルトゲームにはまっている中国の20代の男性は言う。ゲームでは、アニメ系キャラクターの少女たちときわどい疑似恋愛を楽しむことができる。

 この男性はアニメの影響もあって、8歳くらいの女の子に興味を持つようになった。[後略]

[強調は引用者による]

正直、これは言いがかりかと思う。まったくアニメが影響を及ぼさなかったろうとまではいわないけれど、関わりがあるとすればそれは引き金を引いたというような類いかと思うんです。そうした傾向はもともとこの人の中に潜在していて、たまたまアニメが顕在化させるきっかけになったってわけです。だから、この人がアニメやロリコン系アダルトゲームに触れなかったとしても、違うきっかけで発現したかも知れない。もちろん、一生隠れたままで、自分自身も気付かないでままで過ごしたかも知れない。

ゲームタイトルがわからないからなんともいえないけれども、たくさんあるアダルトゲームの中で、特にロリコン系に特化されたジャンルをこの人が好んでプレイしているのだとしたら、これは十中八九ゲームのせいではないと言い切っていいと思います。だって、全般にロリコン傾向が強いといわれる日本人の性癖ですが(ほしのあきはイギリス人から見たらチャイルドポルノです)、それでもいくらなんでも8歳はない。アダルトゲームにおける主流のキャラクターにしても、欧米人からすれば十歳前後に見えるのかも知れないけれど、日本人と外観の点で違いの少ない中国です、せいぜい十代後半から二十歳前後でしょう。趣味が高じて8歳に発展するというのはいきすぎです。これはやはり最初からそういう傾向のゲームを嗜好していたと考えるのが自然で、ならやっぱりアニメ、ゲームは関係ないんじゃないか。彼は、アニメ、ゲームのためにロリコンを目覚めさせたのではなく、アニメ、ゲームを前に自分の欲望に素直になっただけだと思います。このあたりをはっきりさせるためにも、具体的に彼が嗜好しているゲームタイトルやブランドを押さえて欲しかった。

あと、もうひとつ。見た目に美しいし、男女の恋愛物のように嫉妬心が起こらないので純粋に楽しめるというヤオイ系に萌え女子学生さん(北京在住)。この意見は正しいと思いました。

  • Newsweek日本版 2007-3.21号 (3/14発売)

引用

  • 「ニッポン発萌えパワーに世界も(^O^)」,『Newsweek日本版』2007-3.21号 (3/14発売) ,41頁。
  • 同前,37-38頁。
  • 同前,38頁。

0 件のコメント: