2009年9月29日火曜日

ねこにゆーり

 最初に覚えたのはタイトルでした。『ねこにゆーり』。猫に有利? 響きが印象的で、ちょっと意味深。それで、どんな漫画だったっけと誌面で確認するように読んで、だんだんに親しんでいったのでした。榊さんというちょっと人が苦手の女の子が猫と仲よくなっていく様を描いた漫画、なんて書くと昔はやった漫画を思い出してしまいそうになりますが、あんまりそんな感じじゃありません。で、この榊さんというのが、ゆーりなんですね。優理と書いて、ゆーり。彼女と猫の交流を描いた漫画、そして彼女と友人たちとの交流を描いた漫画であります。

友人、その筆頭は八重樫世良なのでしょうか。ちょっと発言がいかがわしい女の子。そして水木歩。眼鏡、男子、あんまりがっついていない、ちょっと主人公っぽい? このふたりがゆーりの幼馴染み。ここに歩、あっくんのことが好きな女の子、桜沢あさひが加わって、これくらいわかれば充分読んでいけるかなって感じです。キャラクターは、よくもわるくも典型的だから、わかりやすい、理解しやすい。反面、どこかで見たような気がするっていうね。セラに関しては、ずっと誰かに似てる似てるって思ってて、今ようやく気がつきました。麻倉南だ。ほら、『メガミのカゴ』の。ずっと気になってたことが解消して、なんだかちょっとすっきりしていい気分です。

この漫画は、恋愛の要素が少しあって、友情も少しあって、青春があって、そしてペット愛があってと、いろんな要素がからみあって成り立っているのですが、そのどれかに傾きすぎるということがなく、それぞれが適度に主張して、譲りあって、支えあっているという感じ。ほどよいバランス感があるんですね。キャラクターは、主役に近い人はやはりしっかりと出番もあって、当然その個性が発揮される機会も多くなって、けれどほとんどモブのような人でも、テーマによっては前に出てきたりします。こうしたところが、全員で盛り上げようというような雰囲気を感じさせて、和気藹藹とした仲よさ、いいなと思わせるのではないかと思っています。みな、人との関わりに前向きで、みな、人懐こくやさしい。そんな空気がとてもいい。特にペット自慢の回なんかね、すごくいきいきとしていて、読んでいるこちらも嬉しさがこみあげてくるようなところがあって、この漫画のよさが発揮されてるな、なんて思ったものでした。

この漫画は、ちょっとマニアックなネタとか、そういうのも散見されて、それは残念ながら私にはあんまりよく笑いどころや楽しみようがわからないのだけれど、『デス・クリムゾン』のくだりとかね、なんか伝わってこない。そんな気持ちになることもあるのだけれど、けれど全体を通しての流れ、そうしたものにはひかれるものがあります。ひとつのできごとを、ゆーりの視点、セラの視点で描いたことがありました。ゆーりとセラ、それぞれ思うところ、悩むところがあって、けれどこのひとつのできごとが、三人をあらためて引き結ぶこととなって、素敵な風景、流れさる胸のつかえ、そうした叙情性あふれる感性はすごくいい。楽しさや叙情性、そして共感など、そうしたものに触れるごとに、『ねことゆーり』にて描かれる世界の表現に、ゆーりたち登場人物に、親しみを感じて、そしてそのたびごとに、少しずつこの漫画を好きになっていったのでした。

最初に覚えたのはタイトルでした。今は、ゆーりもスカイさんも、この漫画に出てくるみなが大好きです。

  • kodomo兎『ねこにゆーり』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2009年。
  • 以下続刊

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