2005年4月5日火曜日

Satie : The Early Piano Works, played by Reinbert de Leeuw

  ジムノペディやグノシェンヌで知られるフランスの作曲家エリック・サティは、おしゃれな響きと聴きやすく美しい曲調からも人気があって、もちろん私の好きな作曲家のひとりです。以前、お菓子を作っているとき、エリック・サティをステレオで流しっぱなしにして、それにしても美しい曲があったものです。複雑さや重さから解き放たれた精神は実に自由。サティの音楽の魅力はこうした自由さと、ちょっと気取ってみせる才気のたまものであると思うのです。

さて、サティを弾くピアニストといえばパスカル・ロジェなんかが有名ですね。ええ、確かにこの人の弾くサティはガラス工芸の美しさがあります。ですが、私にはもうロジェは物足りない。デ・レーウのサティを聴いてからは、ロジェでは満足できなくなってしまったのです。

私がラインベルト・デ・レーウの弾くサティを聴いたときの印象は、一生忘れられないようなものでした。遅い! もしこれがレコードだったら、回転数を見直しただろうと思うほど遅い『ジムノペディ』に私は驚いてしまい、なにしろ、途中でとまってしまうんじゃないの? と思うくらいに遅いんです。友人のピアニストに、ものすごくゆっくりのサティを買っちゃったよと、わざわざ報告してしまったくらいに印象的なサティだったのでありました。

しかし、この聴き手の忍耐力を試すかのように遅い演奏が、この上もなく美しいんですよ。これまで私が考えていたサティとはまったく違って、手頃な工芸細工なんてものじゃなくて、風景がすべて霧の中に融けて、世界の色が、光がゆっくりと混ざり合いながらなめらかに輝くような美しさがあるのです。

私は驚いてしまって、それは最初は確かに演奏の遅さのせいであったのですが、次第にその美しさに飲み込まれるようにのめり込んで、なぜこれほど美しいのかと、聴くたびに嘆息するようになったのです。

私のCD棚には、複数持っている演奏というのがあります。それは例えば、ピノックの『管弦楽組曲』でありました。実は、デ・レーウのサティも複数持っているのです。最初に私を驚かせた国内盤と、その後見付けて矢も楯もたまらず手にした二枚組の輸入盤。私は、その二枚組の半分をすでに聴いているというのに、残りを聴きたいばかりにこれを買ったのです。そして、それを後悔したりもったいないと思ったりなどは、これまで一度たりともありませんでした。

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