2005年12月30日金曜日

小さく弱い人たちへ

  松山花子は、ここ最近私のお気に入りに加わった漫画家で、この人を知ることになったのは四コマ誌連載の漫画がきっかけですね。松山花子の漫画は、うまい具合に毒が配合されている漫画、そういう風にいうとうまくらしさを表現できるのではないかと思います。基本的に辛辣で皮肉が利いていてトゲがあるんだけど、嫌みや悪意になるぎりぎりのところを見極めているから楽しく読める。劇毒物も微量なら非常に効果的な薬になるのだ。ええ、松山花子を笑って読めない人は、ちょっと病が膏肓には入りつつあるのかも知れません。読んで気分を害してしまうようなら、本当に気をつけたほうがいいかも知れません。

私が松山花子を知ったのはここ数年のことなので、残念ながら『小さく弱い人たちへ』は読んだことがないのです。先日書店で『診療再開! 小さく弱い人たちへ』を見つけて読んで、診療再開というからには一度診療を中断する前のもあるのだろうと思って探したのですが見つからない。なんてことはない。絶版しているみたいですね。

ですが、とりあえず『診療再開!』だけでも充分面白く、松山花子らしさを楽しむことができました。この漫画には、一部を除き、どこにでもいるような人が患者として取り上げられるのですが、ある特定の性格的特徴を極端に強調しているから、本当に人格障害に見える(すまん、これ偏見かな)。けれど、私たちが普段の生活の中で出会う人には、実際この漫画に出てくるような感じの人はいるもので、面倒な人だったり、厄介でやりにくい人だったり、そして弱ったことに、私もそうしたうちの一人なんだろうなと思ってしまったりして。

松山花子は類型化がうまいんでしょうね。迷惑だったり厄介だったりする人(というのも身も蓋もない表現だけど)の類型をうまく抽出して、それをネタにするのが本当にうまい。で、そうした類型に自分を発見することもあって、うまくしてやられたなあなんて思って苦笑する。

こういう客観的視点をぽいと投げ掛けてくれるところに、松山花子の真骨頂があるのだと思います。

引用

  • ナントカ『影ムチャ姫』第1巻 (東京:芳文社,2005年),103頁。

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