2004年11月6日土曜日

川端康成・三島由紀夫往復書簡

 私がこの本を読んだきっかけというのは、フランスの友人が川端と三島の往復書簡集を読んでいるといっていたからでありまして、欧米におけるこの二人の知名度はすごいのだなと感心しました。いうまでもなく川端はノーベル賞作家でありますし、三島も、ノーベル賞こそはとっていませんがかなり知られています。作品も数多く翻訳され広く読まれているのは周知の通り、さらには金閣寺などはオペラにもなりました。こうした背景があるからこそ、往復書簡が翻訳出版されることにもなったのでしょう。

往復書簡を読んで、私は三島が意外に身近な人なのかも知れないと思ったのでした。三島由紀夫といえば、どうしても楯の会や自衛隊駐屯地での事件を思ってしまい、どうにも近寄りがたい雰囲気を感じていたのですが、書簡に見る若い三島は、なんかいろいろ悩んでみたり迷ってみたり、さらには愚痴めいた弱気もみせたりする。また自分の著作に対する自信や謙遜や喜びやいろいろの感情がないまぜになって、生き生きと表現されている。上気して一生懸命敬愛する川端先生に話す姿が目に浮かぶような文章の数々です。

手紙はもちろん若いときだけでなく晩年のものも所収されており、そこに見る三島は、変わらず情熱的でありながら、どこか切迫しているようです。いや、これはこの人のその後を知っているから、そのように感じるというだけかも知れません。けどおそらくそうではなく、三島は実際追いつめられていたのでしょう。意志や意識を先鋭化しようと努め、ついではその自ら築き上げた精神に追いつけなくあえいだのではないかと感じたのです。いや、もちろんこんなものは私の感想で、実際のところはわかりません。ですが、少なくとも私はこうした三島の側面を知ったつもりになったことで、今までより以上に三島を近しく読めるようになったと思います。

0 件のコメント: