2007年4月27日金曜日

イチロー!

 『まんがタイムきらら』を筆頭に『キャラット』、『MAX』と拡大してきた、マニア層を対象とした四コマ誌ですが、私はこれらを読んで、時々よくわからなくなることがあります。いったいなにがわからないのかというと、その対象とする読者層でして、多分若い人が読むんだろうと思うんですけど、高校生とか大学生とか? いや、けどそれはどうだろう。一説には女子中学生あたりが読んでいるなんて話もあるんだけど、にわかには信じられません。だって、これ読んでいる人を具体的に見たことがないんですよ、私。それに、この雑誌に現れる小ネタやなんかは微妙に二十代後半から三十代くらいを狙っている。まあこれはそれくらいの世代の作家が多いということだと思うんですが、けどそれにしても多すぎやしないか? メインターゲットが十代から二十代前半だとしたらですよ、ああいう小ネタ群、ほとんどわからんだろう。と、そんな風に思っているから私には、この『イチロー!』が妙に新鮮に感じられて、主人公は高校を卒業したところの女の子。ああ、多分雑誌が狙っている年齢層というのはこのくらいなんだろうなと感じられて、なんかほっとしたのでした。

さて、漫画のタイトルは『イチロー!』。けど野球は関係ありません。ええと、一浪なんですね。大学に入ろうとして入れなかった人が主人公。一緒に落ちた友達と、おいてけぼりっぽく一足先に大学に受かった友達と、なんかバタバタしながらも楽しく、けど微妙に落ち込むことも多い浪人生活。予備校に通い、友達を作り、そして道を誤っていく……。なんかそんな感じ。本当に『イチロー!』で終わるんだろうかと思うような展開を見せているのですが、そうしたら作者自身がおんなじようなことをいっていて、ああ終わらない浪人生活というのは実に辛そうだなと思うんですが、まあいつか終わるでしょう。何浪までいくかはわかりませんが、てのは漫画が結構面白くて長く続きそうな予感がするからなんですが、けどいつかは大学には入れる日がくるはずだと。ええと、一年経ったら時間がループするのかな? とにかく一年こっきりで終わるには惜しい漫画だと思っています。

基本的には予備校通いつつ受験勉強というそういう漫画なのですが、けどそればかりじゃ花がないというか、ええと、やっぱマニアックな方向に向かいますよね、なんたって掲載誌が『きららMAX』だから。ええと……、表紙をどん(クリックすると大きくなるよ!)。

勘弁してください。買いにくくって仕方ないじゃないですか。いつも買ってる四コマ誌が、突然エロ漫画みたいな表紙になったよ! って、職場でも家族にも結構いいネタになってくれてそれはそれでよかったんですが、けどこれは参った。参りながらも躊躇なく購入したんですが、けどほんとお願いしますよ。

閑話休題。『イチロー!』が面白いのは、常識人で苦労人のヒロインななこが非常識な人たちに囲まれて翻弄されるというその様の面白さもありつつも、けれどベースにはきたるべき受験に向けての勉強生活があるから、異常な逸脱はしにくいというそこなんじゃないかと思っています。戻ってくる本筋があって、そのラインをたどりながら右に振れ、左に振れる、その振れ幅に面白さがあるんです。振れ幅小さなときには受験生ネタとその周辺が語られるのに、大きく振れてくれば、もう受験どころじゃないという感じになって、けど戻らねばという焦りみたいなのがちゃんと描かれていて、そのままならぬ様がらしくっていいなあと思うんです。

だって、自分だけかも知れないけど、実際の生活っていうのもそんな感じでしょう。やらないといけないことはやっぱりあって、ちゃんとしなきゃちゃんとしなきゃって思っているんだけど、ついついなんかいろいろ些事に流されて、できないことの方が多かったりして、後でへこむんだ。ああ、なにやってるんだろーって。けど、振り返ったりしたら、この行きつ戻りつ揺れ動きが楽しい思い出だったりするのかも知れないなあって、少なくとも浪人生活についてはそんなこと思います。むしろ私は、浪人したときも学生やってたときも、あまり振れ幅大きくない進み方をしたもんだから(っていうか受験ばっかりだったよ)、逆にななこたちのような友達とどたどたしている時間にちょっと憧れみたいなものがあって、そう、こういう時間が後から振り返ると楽しかったなあって思えるんでしょうね。

なので、私はななこみたいな人には、今はいらいらすることも多くても、年取ればそれが青春だったってわかるもんなんだよといってあげたい。そしてこの彼女らのどたばたの浪人生活を見ながら、自分の人生にはついぞ感じられなかったことごとを追体験する思いなのではないかと思います。

蛇足

これといって、このキャラクターが好きだ! っていうのはないんです。強いていうなら詩乃かなあ。というわけで、どうやら私はちょっと変態じみた人が好きなようですほんとです。

  • 未影『イチロー!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社.2007年。
  • 以下続刊

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